① 結論(現行制度)
建設業許可において、自宅を営業所として使用することは認められています。ただし、単に自宅の住所を営業所として登録するだけでは足りず、実際に営業活動を行う拠点としての「実体性」が求められます。東京都手引(令和7年度版)においても、自宅兼営業所は否定されていませんが、居住スペースと業務スペースが明確に区分されていることが前提とされています。具体的には、事務作業や契約行為を行う専用の場所が確保されていることが必要であり、生活空間と一体となっている場合には、営業所として認められない可能性があります。
また、営業所として認められるためには、常勤役員等および営業所技術者等が当該場所に配置されていることも必要となります。
② 旧制度との違い
建設業許可における自宅兼営業所の取扱いについては、旧制度から大きな考え方の変更はありませんが、現行制度では「実体性」の確認がより重視される運用となっています。旧制度においても、自宅を営業所として使用すること自体は認められていましたが、実務上は人的要件の充足に重点が置かれる傾向があり、営業所の物理的な状況については形式的な確認にとどまるケースも見られました。
しかし現在では、営業所としての実態があるかどうかがより厳格に審査されるようになっており、自宅兼営業所の場合でも、居住スペースと業務スペースの区分が明確であるか、事務作業が継続的に行える環境が整っているかといった点が具体的に確認されます。
また、制度改正により、専任技術者は営業所技術者等へ、経営業務管理責任者は常勤役員等へと名称が変更されており、これらの者が実際に当該営業所に常勤していることも重要な判断要素となっています。単なる名義上の配置ではなく、実態として当該場所で業務に従事しているかが問われる点も、現行制度の特徴といえます。
③ 現在の要件
自宅兼営業所として建設業許可を取得するためには、通常の営業所と同様に、物理的要件・使用権限・外形的要素・人的要件を満たす必要がありますが、特に重要となるのが居住スペースと業務スペースの区分です。
まず物理的要件として、自宅の一部を営業所として使用する場合でも、業務専用のスペースが確保されている必要があります。リビングや寝室と兼用されている場合には、営業所としての独立性が認められない可能性があります。机や椅子、パソコンなどの事務設備が設置され、契約書の作成や書類の保管などが継続的に行える環境であることが求められます。
次に使用権限については、その場所を営業所として使用できる権限があることを証明する必要があります。法人の場合は履歴事項全部証明書に記載された本店所在地と営業所の住所が一致している場合、個人事業主の場合は住民票上の住所と営業所の住所が一致している場合には、原則として建物の登記事項証明書や賃貸借契約書の提出は不要とされています。
一方で、これらの住所が一致していない場合には、当該営業所の使用権限を確認するため、建物の登記事項証明書や賃貸借契約書、使用承諾書などの提出が必要となります。特に賃貸物件を営業所として使用する場合には、契約内容において事業用途での使用が認められているかも重要な確認ポイントとなります。
さらに外形的要素として、商号や屋号の掲示、郵便物の受領が可能であることなど、第三者から見て営業所として認識できる状態であることが求められます。自宅であっても外形的な表示が全くない場合には、営業所としての実体性に疑義が生じる可能性があります。
人的要件としては、当該場所に常勤役員等および営業所技術者等が配置され、実際にその場所で業務に従事していることが必要です。形式的な登録では足りず、実態としての勤務状況が確認される点に注意が必要です。
東京都手引においても、営業所は建設業に係る営業の拠点として実体性・継続性・独立性が求められるとされており、自宅兼営業所の場合もこれらの要件を満たしているかが重要な判断基準となります。
これらの要件は個別に判断されるのではなく、「その場所で継続的に営業活動が行われているか」という観点から総合的に判断されます。
営業所全体の要件については、
建設業許可における営業所の要件について詳しくはこちらもあわせてご確認ください。
④ 実務上の判断ポイント
建設業許可における自宅兼営業所の判断では、「実体性」があるかどうかが最も重要なポイントとなります。形式的に要件を満たしているように見えても、実際に営業活動が行われていないと判断されれば、営業所としては認められません。
まず重要となるのが、居住スペースと業務スペースの区分です。自宅の一室を営業所として使用する場合でも、生活空間と明確に分かれていることが必要であり、リビングや寝室の一部をそのまま業務スペースとして使用しているだけでは、独立性が不十分と判断される可能性があります。
特に実務では、提出する写真によって営業所の実体性が判断されるケースが多く、業務スペースとしての状態が視覚的に確認できるかが重要となります。机や椅子、パソコンなどの事務設備が整っているか、業務用書類が適切に保管されているか、私物と混在していないかといった点が確認されます。
また、生活感が強く出ている場合には、営業所としての実体性に疑義が生じることがあります。例えば、ベッドや食卓と同一空間で業務を行っている場合や、明確な区分が確認できない場合には、補正を求められる可能性があります。
さらに、業者票の掲示状況も重要な確認ポイントとなります。営業所としての外形的要件を満たしているかどうかは、写真によって判断されるため、適切な位置に掲示されているかを事前に確認しておく必要があります。
このように、自宅兼営業所の判断は書面だけでなく、写真や実態を含めて総合的に行われるため、申請前の段階で実務基準を踏まえた準備を行うことが重要です。
間取り図の提出と確認ポイント
自宅兼営業所の場合、写真だけで判断が難しい場合には、間取り図の提出を求められることがあります。間取り図は、居住スペースと業務スペースの区分が明確であるかを確認するための重要な資料となります。
具体的には、営業所として使用する部屋やスペースの位置、動線、他の居住部分との関係が分かるように記載する必要があります。単に部屋の名称を記載するだけでなく、「営業所」として使用する範囲がどこであるかを明示することが重要です。
また、写真と間取り図の内容に整合性がない場合には、実体性に疑義が生じる可能性があります。そのため、提出する写真と対応関係が分かるように整理しておくことが望ましいです。
⑤ よくある誤解
自宅兼営業所については、「自宅だから自由に使える」といった誤解が多く見られますが、実際には通常の営業所と同様に厳格な基準で判断されます。
まず多いのが、「自宅ならどこでも営業所にできる」という誤解です。しかし、実際には居住スペースと業務スペースの明確な区分が求められており、生活空間と一体となっている場合には、営業所として認められない可能性があります。
また、「机とパソコンがあれば十分」という理解も誤りです。事務設備の有無だけでなく、業務専用スペースとしての独立性や継続性が確保されているかが重要であり、生活感が強く残る状態では実体性に疑義が生じることがあります。
さらに、「住所が一致していれば問題ない」という認識も不十分です。確かに使用権限の証明書類が省略できるケースはありますが、それだけで営業所として認められるわけではなく、あくまで実体性が前提となります。
加えて、「写真を出せば通る」という誤解もありますが、写真と間取り図の整合性や、実際の使用状況が伴っていない場合には、補正を求められる可能性があります。
このような誤解を前提に準備を進めてしまうと、申請時に手戻りが発生するリスクが高まるため、制度と実務の両面から正確に理解しておくことが重要です。
営業所要件で問題となるケースについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください
⑥ まとめ
自宅兼営業所は建設業許可において認められていますが、単に自宅の住所を登録するだけでは足りず、営業所としての実体性が厳しく求められます。特に東京都では、居住スペースと業務スペースの区分、事務設備の整備、人的要件の充足などが総合的に判断されるため、形式的な要件を整えるだけでは不十分です。
また、写真や間取り図による確認が行われることも多く、視覚的に営業所としての実態を説明できる状態にしておくことが重要です。事前に実務基準を踏まえて準備を行うことで、補正や不受理のリスクを回避することができます。
許可取得後の管理体制について詳しく知りたい方は、
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