建設業許可を取得した後、事業の拡大や取引先からの要請によって、新たな建設工事の業種を追加したいと考える会社も少なくありません。
例えば、内装仕上工事業の許可を持つ会社が建築一式工事業の許可を追加したい場合や、電気工事業の許可を持つ会社が電気通信工事業の許可を追加したい場合などです。
すでに建設業許可を取得している会社が、別の建設工事の業種について新たに許可を受ける手続きを「業種追加申請」といいます。
ただし、既存の建設業許可があるからといって、希望する業種を無条件に追加できるわけではありません。
特に重要なのは、追加したい業種について、必要な資格や実務経験を有する営業所技術者等を配置できるかどうかです。
また、現在の許可が一般建設業なのか特定建設業なのかによって、必要となる申請手続きが異なる場合があります。
さらに、東京都で業種追加を申請する際には、必要書類の準備だけでなく、決算変更届や過去の変更届が適切に提出されているかも確認する必要があります。
この記事では、東京都知事許可を中心に、建設業許可の業種追加に必要な要件、営業所技術者等の資格・実務経験、必要書類、申請手続き、許可の一本化について、建設業許可を専門とする行政書士が解説します。
第1章 建設業許可の業種追加とは?
1-1 すでに取得している建設業許可に別の業種を追加する手続き
建設業許可の業種追加とは、すでに建設業許可を受けている事業者が、新たに別の建設工事の業種について許可を取得する手続きです。
建設業許可は29業種に区分されており、許可を受けた業種について、原則として請負金額500万円以上(税込・材料費を含む)の建設工事を請け負うことができます。
例えば、次のようなケースが業種追加に該当します。
- 内装仕上工事業の一般建設業許可を持つ会社が、塗装工事業の一般建設業許可を追加する
- 電気工事業の一般建設業許可を持つ会社が、電気通信工事業の一般建設業許可を追加する
- 管工事業の特定建設業許可を持つ会社が、機械器具設置工事業の特定建設業許可を追加する
ただし、希望する業種を追加するためには、その業種について建設業法で定められた許可要件を満たす必要があります。
特に重要なのは、追加する業種に対応した営業所技術者等を配置できるかどうかです。
1-2 業種追加と般・特新規の違い
建設業許可には「一般建設業」と「特定建設業」の2つの区分があります。
業種追加申請は、原則として、現在取得している許可と同じ区分で別の業種を追加する場合の手続きです。
一方、現在は一般建設業許可しか持っていない会社が初めて特定建設業許可を取得する場合や、その逆の場合には、「般・特新規申請」となります。
具体的には、次のように区別します。
| 現在の許可 | 新たに取得したい許可 | 申請区分 |
|---|---|---|
| 一般・内装仕上工事業 | 一般・塗装工事業 | 業種追加 |
| 特定・管工事業 | 特定・機械器具設置工事業 | 業種追加 |
| 一般・内装仕上工事業のみ | 特定・内装仕上工事業 | 般・特新規 |
| 一般・内装仕上工事業のみ | 特定・電気工事業 | 般・特新規 |
なお、すでに一般建設業と特定建設業の両方の許可を持っている会社が、それぞれの区分で別の業種を追加する場合は、業種追加申請として取り扱われます。
また、同じ建設工事の業種について、一般建設業と特定建設業の許可を同時に保有することはできません。
業種を追加するのか、一般・特定の許可区分を新たに取得するのかによって、申請区分や必要となる許可要件が異なるため、事前の確認が重要です。
一般建設業から特定建設業への変更や、般・特新規に該当するケース、申請要件・必要書類については、【東京都】建設業許可の般・特新規申請で詳しく解説しています。
1-3 業種追加は変更届ではなく許可申請
業種追加は、建設業許可を取得した後に行う手続きですが、役員変更や営業所移転などの変更届とは異なります。
例えば、取締役の就任・退任や営業所の所在地変更などは、変更内容に応じて所定の変更届を提出する手続きです。
これに対して業種追加は、新たな建設工事の業種について許可を受けるための申請であり、追加する業種の営業所技術者等の要件などについて審査が行われます。
また、業種追加申請では、現在保有している建設業許可の状況も確認されます。
過去の決算変更届や役員変更届などが未提出の場合には、業種追加申請の前に対応が必要です。
したがって、業種追加を予定している場合は、追加する業種の許可要件だけでなく、既存許可に関する届出状況も確認しておくことが重要です。
許可取得後の各種変更届については、東京都の建設業許可の変更届|提出期限・必要書類で解説しています。
1-4 業種追加申請の手数料はいくら?
東京都知事許可の業種追加申請では、東京都に納める申請手数料が必要です。
業種追加の申請手数料は、一般建設業または特定建設業のそれぞれの区分につき5万円です。
例えば、一般建設業で新たに1業種を追加する場合も、同時に3業種を追加する場合も、同じ申請区分であれば手数料は5万円です。
一方、一般建設業と特定建設業の両方について業種追加申請を行う場合は、それぞれ5万円となり、合計10万円です。
なお、行政書士に申請手続きを依頼する場合の報酬は、東京都へ納める申請手数料とは別に必要となります。
業種追加では、追加する業種の数だけでなく、一般・特定の区分や営業所技術者等の証明方法によって、必要書類や申請準備の内容が異なります。
次章では、業種追加に必要な許可要件について、特に重要となる営業所技術者等の資格・実務経験を中心に解説します。
第2章 建設業許可の業種追加に必要な許可要件
建設業許可の業種追加では、すでに許可を取得している会社であっても、新たに追加する業種について許可要件を満たす必要があります。
特に重要なのが、追加したい業種に対応する営業所技術者等を確保できるかどうかです。
また、常勤役員等の要件や財産的基礎、社会保険の加入状況など、既存の許可要件が引き続き満たされていることも確認する必要があります。
2-1 追加する業種に対応した営業所技術者等が必要
建設業許可を取得するためには、営業所ごとに、許可を受けようとする業種に対応した営業所技術者等を配置する必要があります。
すでに建設業許可を持っている会社でも、業種追加では、新たに許可を取得する業種について技術者要件を満たしているかが審査されます。
例えば、内装仕上工事業の許可を持つ会社が、塗装工事業を追加するケースを考えてみましょう。
現在の営業所技術者等が塗装工事業の要件も満たしていれば、その方が追加業種を担当できる場合があります。
一方、現在の営業所技術者等が塗装工事業の要件を満たしていなければ、別の資格者や実務経験者を確保する必要があります。
既存の営業所技術者等が、追加したい業種も担当できるかどうかを確認することが、業種追加の第一歩です。
2-2 国家資格または実務経験によって技術者要件を満たす
一般建設業の営業所技術者等の要件は、主に次の方法で満たすことができます。
- 追加する業種に対応した国家資格などを有している
- 指定学科を卒業し、所定の実務経験を有している
- 追加する業種について10年以上の実務経験を有している
- その他、法令に定める技術者要件に該当している
国家資格を使用する場合には、資格の種類や区分によって、担当できる建設工事の業種が異なります。
また、資格によっては取得後の実務経験が必要になる場合もあるため、資格名称だけで判断することはできません。
実務経験によって要件を満たす場合には、必要な経験年数に加え、実際に従事した工事の内容と期間を証明する資料が必要です。
東京都では、実務経験を確認するため、工事の契約書・注文書・請求書などの資料が求められます。
そのため、実際に10年以上の経験があっても、その期間を証明できなければ業種追加の申請に支障が生じることがあります。
追加する業種に対応する資格や実務経験の確認方法については、営業所技術者等の要件で詳しく解説しています。
2-3 同一営業所であれば、一人で複数業種を担当できる
営業所技術者等は、必ずしも許可業種ごとに一人ずつ配置する必要はありません。
東京都では、同一営業所内であれば、一人の営業所技術者等が複数業種の技術者要件を満たす場合、その複数業種を兼ねることができるとされています。
例えば、すでに管工事業の営業所技術者等となっている方が、新たに追加する機械器具設置工事業についても必要な資格や実務経験を満たしていれば、同じ営業所で両方の業種を担当できる場合があります。
ただし、資格によって担当できる業種は異なり、既存業種の技術者要件を満たしていることだけで、別の業種も担当できるわけではありません。
また、営業所技術者等は原則として、その営業所に常勤し、専らその職務に従事する必要があります。
同じ会社であっても、別の営業所の営業所技術者等を同時に兼ねることはできません。
複数の営業所がある会社では、業種追加後にそれぞれの営業所で必要な技術者を配置できるか、あらかじめ確認することが重要です。
2-4 特定建設業の業種追加では技術者要件が異なる
特定建設業の業種追加では、一般建設業よりも厳しい営業所技術者等の要件が求められます。
特定建設業の営業所技術者等については、所定の国家資格や指導監督的な実務経験などによって要件を満たす必要があります。
ただし、次の7業種は「指定建設業」とされ、指導監督的な実務経験のみで技術者要件を満たすことはできません。
- 土木工事業
- 建築工事業
- 電気工事業
- 管工事業
- 鋼構造物工事業
- 舗装工事業
- 造園工事業
これらの指定建設業について特定建設業許可を取得する場合には、原則として一級の国家資格や技術士資格など、所定の資格・認定が必要です。
すでに一般建設業で担当できる業種であっても、特定建設業では同じ要件で認められるとは限りません。
業種追加を検討する際には、追加する業種だけでなく、一般・特定の許可区分に対応した技術者要件を確認することが重要です。
2-5 常勤役員等の要件も継続して満たしている必要がある
業種追加の申請では、営業所技術者等だけでなく、常勤役員等の要件も引き続き満たしている必要があります。
常勤役員等は、建設業許可を維持するための人的要件の一つです。
ただし、業種を追加するからといって、常勤役員等に追加業種の経営経験が新たに必要になるわけではありません。
例えば、内装仕上工事業の許可を持つ会社が塗装工事業を追加する場合でも、現在の常勤役員等が引き続き要件を満たしていれば、塗装工事業について別途経営経験を積む必要はありません。
一方、許可取得後に常勤役員等が退任・交代している場合には、必要な変更届が提出されているかを確認する必要があります。
業種追加を予定している時点で常勤役員等の交代が必要な場合には、後任者の経営経験や常勤性についても事前に確認しておきましょう。
常勤役員等の交代手続きについては、【東京都】常勤役員等の変更届|提出期限・必要書類・後任者の要件をご参照ください。
2-6 業種追加申請における財産的基礎と社会保険の加入状況
建設業許可の業種追加申請では、追加する業種の営業所技術者等の要件に加え、財産的基礎や社会保険の加入状況についても確認する必要があります。
ただし、東京都知事許可の業種追加申請では、新規許可申請とは異なり、財務諸表の添付は必要ありません。
財務諸表の提出が不要であることと、財産的基礎の許可要件が免除されることは別の問題です。
一般建設業の財産的基礎
一般建設業では、次のいずれかに該当することが必要です。
- 自己資本の額が500万円以上あること
- 500万円以上の資金調達能力があること
- 直前5年間、東京都知事許可を受けて継続して営業した実績があること
例えば、東京都知事許可を受けて5年以上継続して営業している会社では、3つ目の基準によって財産的基礎の要件を満たすことができます。
一方、許可取得から5年未満で、自己資本が500万円に満たない場合には、預金残高証明書や融資証明書によって資金調達能力を確認する必要があります。
なお、業種追加申請で財務諸表を改めて添付する必要はありませんが、財産的基礎の確認に必要な資料まで一律に省略されるわけではありません。
特定建設業の財産的基礎
特定建設業では、次のすべての要件を満たす必要があります。
- 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
- 流動比率が75%以上であること
- 資本金が2,000万円以上あること
- 自己資本が4,000万円以上あること
一般建設業とは異なり、5年間の継続営業実績によって財産的基礎の要件を満たすことはできません。
財産的基礎の詳しい判断基準については、建設業許可の財産要件をご覧ください。
社会保険の加入状況
また、建設業許可では、適用事業所に該当する場合、健康保険・厚生年金保険・雇用保険への適切な加入が必要です。
業種追加申請においても、社会保険の加入状況が許可要件に適合していることが求められます。
このように、業種追加では、追加する業種の営業所技術者等を確保するだけでなく、既存の建設業許可の要件を引き続き満たしていることが重要です。
第3章 東京都の業種追加申請に必要な書類と手続きの流れ
東京都知事許可の業種追加申請では、すでに建設業許可を取得しているため、新規許可申請とは提出書類が一部異なります。
例えば、新規許可申請では必要となる財務諸表や登記事項証明書、事業税の納税証明書などは、通常の業種追加申請では添付しません。
一方、追加したい業種については、営業所技術者等の資格・実務経験や常勤性を確認する資料が必要です。
ここでは、東京都で業種追加申請を行う際の主な提出書類と、申請手続きの流れについて解説します。
3-1 業種追加申請に必要な主な書類
東京都知事許可の業種追加申請では、主に次の書類を提出します。
| 書類名 | 様式・内容 |
|---|---|
| 建設業許可申請書 | 様式第1号 |
| 役員等の一覧表 | 別紙1 |
| 営業所一覧表 | 別紙2(1) |
| 営業所技術者等一覧表 | 別紙4 |
| 工事経歴書 | 様式第2号 |
| 直前3年の各事業年度における工事施工金額 | 様式第3号 |
| 使用人数 | 様式第4号 |
| 誓約書 | 様式第6号 |
| 健康保険等の加入状況 | 様式第7号の3 |
| 別とじ表紙 | 東京都指定書式 |
| 常勤役員等証明書 | 様式第7号または第7号の2 |
| 常勤役員等の略歴書 | 該当する区分に応じた書類 |
| 営業所技術者等証明書 | 様式第8号 |
| 許可申請者の住所、生年月日等に関する調書 | 様式第12号 |
| 役員等氏名一覧表 | 東京都指定書式 |
また、従たる営業所がある場合には、建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表や、その調書なども必要になります。
このほか、営業所技術者等の資格・実務経験を証明する書類、常勤性の確認資料、社会保険の加入状況を確認する資料などを準備します。
なお、工事経歴書と直前3年の工事施工金額は、今回追加する建設工事の業種について作成します。
すでに許可を取得している業種について、改めてすべての工事経歴書を作成する必要はありません。
3-2 業種追加申請では提出を省略できる書類がある
業種追加申請では、新規許可申請と比べて提出書類が一部省略されています。
通常の業種追加申請で提出が不要となる主な書類は、次のとおりです。
- 定款
- 財務諸表
- 営業の沿革
- 所属建設業者団体
- 主要取引金融機関名
- 株主(出資者)調書
- 登記事項証明書
- 事業税の納税証明書
ただし、提出書類が省略されることと、建設業許可の要件が免除されることは別の問題です。
例えば、財務諸表の添付は不要ですが、財産的基礎の要件そのものが免除されるわけではありません。
一般建設業で5年間の継続営業実績などによって財産的基礎を満たせない場合には、預金残高証明書や融資証明書が必要になることがあります。
また、役員変更や商号変更などが未届の場合には、業種追加申請とは別に、必要な変更届を提出しなければなりません。
業種追加申請の提出書類と、未提出の変更届に必要な書類は分けて確認することが重要です。
3-3 営業所技術者等の資格・実務経験を証明する書類
業種追加申請で特に重要なのが、追加する業種の営業所技術者等に関する書類です。
国家資格によって要件を満たす場合には、資格の合格証明書や免状など、該当する資格を確認できる書類を提出します。
一方、実務経験によって要件を満たす場合には、主に次の書類が必要です。
- 実務経験証明書(様式第9号)
- 指定学科の卒業証明書など(該当する場合)
- 工事の契約書・注文書・請求書など、実務経験を裏付ける資料
- 経験期間中の在籍状況を確認する資料
- 指導監督的実務経験証明書(様式第10号。該当する場合)
追加する業種によって、必要な国家資格や実務経験の内容は異なります。
また、一般建設業と特定建設業でも技術者要件が異なるため、資格を持っているという理由だけで業種追加ができるとは限りません。
実務経験によって申請する場合には、必要な経験年数だけでなく、その期間にどのような建設工事に従事していたかを証明できることが重要です。
特に東京都では、工事の契約書や注文書、請求書などを使用して実務経験を確認するため、必要な資料の収集に時間がかかる場合があります。
3-4 現在の営業所技術者等が追加業種を兼ねる場合
すでに営業所技術者等として届け出ている方が、追加したい業種の要件も満たしている場合には、同一営業所で複数の業種を担当できることがあります。
例えば、現在の営業所技術者等が、新たに追加する業種にも対応した国家資格を持っている場合などです。
この場合、必ずしも新たな技術者を採用する必要はありません。
ただし、追加する業種について必要な資格や実務経験を満たしていることを確認し、業種追加申請に必要な書類を準備する必要があります。
一方、新たに採用した従業員を営業所技術者等として配置する場合には、資格・実務経験に加えて、申請会社への常勤性を確認できる資料も必要です。
既存の営業所技術者等が追加業種を担当できるか、それとも新たな技術者の配置が必要かによって、申請準備の内容は大きく異なります。
なお、既存の営業所技術者等の交代や配置変更を伴う場合には、別途変更届が必要になることがあります。
営業所技術者等の交代手続きについては、【東京都】営業所技術者等の変更届|提出期限・必要書類・退職時の注意点で詳しく解説しています。
3-5 常勤役員等の経営経験は改めて証明する必要がある?
業種追加申請では、常勤役員等の要件についても引き続き満たしている必要があります。
ただし、すでに建設業許可を取得している会社が業種追加を申請する場合、常勤役員等の経営経験を証明する資料は、原則として改めて提出する必要はありません。
一方、常勤役員等の常勤性などを確認する資料は必要です。
また、許可取得後に常勤役員等が交代している場合には、必要な変更届が提出されていることが前提になります。
そのため、業種追加を予定している会社では、追加業種の営業所技術者等だけでなく、現在の常勤役員等についても、届出内容と実際の勤務状況が一致しているか確認しておくことが重要です。
常勤役員等の交代手続きについては、【東京都】常勤役員等の変更届|提出期限・必要書類・後任者の要件をご覧ください。
3-6 申請前に決算変更届や各種変更届の提出状況を確認する
東京都では、必要な決算変更届や各種変更届が未提出の場合、業種追加申請を受け付けることができません。
そのため、業種追加を予定している場合には、現在の建設業許可に関する届出状況を確認しておく必要があります。
特に注意したいのは、次のような事項です。
- 毎事業年度の決算変更届が提出されているか
- 代表取締役や取締役の変更届が未提出になっていないか
- 商号や営業所の所在地に変更がないか
- 常勤役員等の交代について必要な変更届が提出されているか
- 営業所技術者等の変更や異動について届出漏れがないか
例えば、過去の決算変更届が未提出の場合には、その年度の工事経歴書や財務諸表などを準備する必要があります。
また、役員変更や人的要件に関する変更届が未提出の場合には、過去の変更日や証明資料を確認しなければなりません。
業種追加の申請準備では、追加する業種の許可要件だけでなく、既存の建設業許可に関する届出漏れがないことも重要です。
決算変更届については、東京都の建設業許可の決算変更届をご覧ください。
3-7 東京都の業種追加申請の流れ
東京都知事許可の業種追加申請は、一般的に次の手順で進めます。
① 追加する業種と許可区分を確認する
追加したい建設工事の業種を確認し、一般建設業・特定建設業のどちらで申請するかを整理します。
現在の許可区分によっては、業種追加ではなく般・特新規申請に該当する場合があります。
② 営業所技術者等の要件を確認する
追加業種に対応した資格や実務経験を有する営業所技術者等を配置できるか確認します。
複数の営業所がある場合には、それぞれの営業所について必要な技術者を確保できるか確認することも重要です。
③ 決算変更届・各種変更届の提出状況を確認する
未提出の届出がないかを確認し、必要な手続きが残っている場合には先に対応します。
④ 必要書類と確認資料を準備する
建設業許可申請書、工事経歴書、営業所技術者等に関する証明書類、常勤性の確認資料などを準備します。
⑤ 東京都へ業種追加申請を提出する
申請書類が整ったら、東京都へ提出します。
窓口申請の場合は、東京都庁第二本庁舎3階の建設業課で手続きを行います。
申請方法によって必要な準備が異なるため、事前に受付方法を確認しておきましょう。
⑥ 審査を経て業種追加の許可を受ける
申請が受け付けられると、東京都による審査が行われます。
審査の過程で追加資料や補正を求められることもあります。
なお、業種追加申請を提出した時点で、新たな業種の建設業許可を取得したことにはなりません。
追加業種について許可が必要となる規模の建設工事を請け負う場合には、許可取得の時期に注意が必要です。
3-8 業種追加の申請手数料と申請時期の注意点
東京都知事許可の業種追加申請手数料は、一般建設業・特定建設業のそれぞれの区分につき5万円です。
同じ許可区分で複数の業種を同時に追加する場合も、申請手数料は原則として5万円です。
ただし、一般建設業と特定建設業の両方で業種追加を行う場合や、更新申請と同時に行う場合には、申請区分に応じて手数料が加算されます。
また、業種追加によって新たに取得した許可は、既存の許可と許可日や有効期間が異なることがあります。
そのため、許可の有効期間をそろえる「許可の一本化」を希望する場合には、現在の許可の有効期限と業種追加の申請時期を確認する必要があります。
業種追加を予定している会社では、営業所技術者等の要件を満たせるかだけでなく、更新時期や許可の一本化も考慮して申請方法を検討することが重要です。
次章では、業種追加と更新申請を同時に行う場合の取扱いと、許可の一本化について詳しく解説します。
第4章 業種追加と建設業許可の更新・許可の一本化
建設業許可の業種追加を検討する際には、現在保有している許可の有効期限も確認しておくことが重要です。
業種追加申請は、既存の建設業許可の更新申請と同時に行うことができます。
また、業種追加によって許可日が異なる業種が生じた場合には、将来の更新申請に合わせて、許可の有効期間を統一する「許可の一本化」という方法もあります。
ここでは、業種追加と更新申請の関係、許可の一本化の仕組み、申請時期の注意点について解説します。
4-1 業種追加と更新申請は同時にできる?
東京都知事許可では、建設業許可の業種追加申請と更新申請を同時に行うことができます。
例えば、内装仕上工事業の一般建設業許可を持つ会社が、許可の更新時期に合わせて塗装工事業を追加するケースです。
この場合、既存の内装仕上工事業の更新申請と、新たな塗装工事業の業種追加申請を同時に進めることができます。
ただし、業種追加についても、新たに許可を受ける業種の営業所技術者等の要件などを満たしている必要があります。
また、更新申請と業種追加申請では必要書類が異なるため、それぞれの申請内容に応じた書類を準備しなければなりません。
更新時期が近いからといって、必ず業種追加と同時申請する必要はありません。
業種追加に必要な資料の準備状況や、追加業種の許可を取得したい時期によっては、別々に申請した方がよい場合もあります。
4-2 許可の一本化とは?
許可の一本化とは、許可日が異なる複数の建設業許可について、更新申請の際に有効期間を統一する手続きです。
建設業許可の有効期間は5年間ですが、業種追加によって新たな許可を取得すると、既存の許可と追加業種の許可日が異なることがあります。
例えば、次のようなケースです。
| 許可業種 | 許可取得日 |
|---|---|
| 内装仕上工事業 | 令和5年8月5日 |
| 塗装工事業(業種追加) | 令和7年2月1日 |
この場合、許可日が異なるため、それぞれの許可の有効期間も異なります。
そのままでは、許可の更新時期が業種ごとに分かれてしまいます。
そこで、先に更新時期を迎える許可の更新申請に合わせて、有効期間が残っている他の許可も同時に更新することで、許可日を統一できます。
これが「許可の一本化」です。
許可を一本化すると、将来の更新時期をまとめて管理できるため、複数の許可業種を持つ会社では管理上のメリットがあります。
ただし、一本化によって、すべての業種について改めて許可要件を満たしていることが確認される点にも注意が必要です。
4-3 業種追加と同時に許可を一本化できる?
許可の一本化は、通常の更新申請だけでなく、業種追加申請と更新申請を同時に行う場合にも利用できます。
例えば、既存の建設業許可の更新時期に、新たな業種の追加を予定している場合です。
この場合、更新申請と業種追加申請を同時に行い、許可の有効期間をそろえることができます。
ただし、東京都では、許可の有効期間が満了する日の30日前までに申請を受け付けられることが必要です。
そのため、更新期限が迫ってから業種追加を検討し始めた場合には、必要書類の準備が間に合わず、同時申請が難しくなることがあります。
特に、営業所技術者等の要件を実務経験で証明する場合には、工事の契約書や注文書、請求書などを収集するために時間がかかることがあります。
更新申請と業種追加申請を同時に行いたい場合は、更新期限だけでなく、業種追加の証明資料を準備できる時期も考慮する必要があります。
4-4 業種追加と更新を同時申請する場合の手数料
東京都知事許可では、業種追加申請と更新申請のそれぞれに手数料が必要です。
一般建設業について、業種追加と更新申請を同時に行う場合の手数料は次のとおりです。
| 申請区分 | 東京都への申請手数料 |
|---|---|
| 業種追加申請 | 50,000円 |
| 更新申請 | 50,000円 |
| 業種追加+更新の同時申請 | 100,000円 |
同時申請をしたからといって、申請手数料が5万円になるわけではありません。
また、一般建設業と特定建設業の両方について申請する場合などは、申請区分に応じて手数料が加算されます。
なお、上記は東京都に納める申請手数料であり、行政書士に手続きを依頼する場合の報酬は含まれていません。
4-5 更新時期が近い場合は、業種追加の申請時期に注意する
東京都知事許可の更新申請は、原則として、許可の有効期間満了日の2か月前から30日前までが受付期間です。
業種追加を予定している会社では、現在の許可の更新期限と、追加業種の許可が必要になる時期を確認する必要があります。
例えば、取引先から新たな業種の建設業許可を求められており、早急に許可を取得したい場合には、更新時期を待たずに業種追加申請を行うことも考えられます。
一方、更新時期が近く、業種追加に必要な資格や証明資料もそろっている場合には、同時申請によって有効期間を統一する方法が考えられます。
重要なのは、許可の一本化を優先するあまり、必要な業種の許可取得や既存許可の更新に支障を生じさせないことです。
業種追加を検討する際には、現在の許可の有効期限、追加業種の営業所技術者等の要件、必要書類の準備状況を確認し、適切な申請時期を判断しましょう。
建設業許可の更新申請については、東京都の建設業許可更新申請で詳しく解説しています。
第5章 建設業許可の業種追加で多い4つの相談事例
建設業許可の業種追加では、すでに許可を取得している業種に関連する工事を新たに受注するようになり、別の許可業種が必要になるケースが多くあります。
ただし、工事内容が似ていても、建設業法上は異なる業種に区分される場合があります。
また、現在の営業所技術者等が追加業種にも対応できるとは限らないため、実際の工事内容と資格・実務経験の両方を確認することが重要です。
ここでは、業種追加を検討する際によくある4つのケースを紹介します。
5-1 解体工事業から、とび・土工工事業を追加するケース
解体工事業の許可を取得している会社が、足場工事や掘削工事、外構工事なども受注するようになり、とび・土工工事業の追加を検討するケースです。
解体工事業ととび・土工工事業は、実際の工事現場で関連する作業が多いため、同じ許可で対応できると考えられることがあります。
しかし、建設業許可では、解体工事業ととび・土工工事業は別の業種です。
例えば、建築物の解体工事を中心に行っている会社が、独立した足場工事や掘削工事を請け負う場合には、とび・土工工事業の許可が必要になることがあります。
業種追加を検討する際には、まず新たに受注する工事がどの建設工事の業種に該当するのかを確認します。
そのうえで、現在の営業所技術者等がとび・土工工事業の資格要件を満たしているか、または実務経験によって要件を証明できるかを確認する必要があります。
解体工事業の許可を持っているだけで、とび・土工工事業の許可を自動的に追加できるわけではありません。
5-2 電気工事業から電気通信工事業を追加するケース
電気工事業の許可を持つ会社が、防犯カメラ設備やLAN配線、通信設備などの工事を受注するようになり、電気通信工事業の追加を検討するケースです。
電気工事業と電気通信工事業は、施工する設備や工事内容によって区分されます。
例えば、防犯カメラの設置工事であっても、電源設備に関する電気工事と、映像・通信設備に関する工事では、建設業法上の業種区分が異なる場合があります。
そのため、単に「弱電工事だから電気通信工事業」と判断するのではなく、実際に請け負う工事内容を確認する必要があります。
また、電気工事業の営業所技術者等が、電気通信工事業の要件も満たしているとは限りません。
例えば、電気工事業の許可を国家資格によって取得している場合でも、その資格が電気通信工事業の技術者要件に対応していなければ、別の資格者や実務経験者を確保する必要があります。
電気工事業から電気通信工事業への業種追加では、工事区分と営業所技術者等の資格要件をそれぞれ確認することが重要です。
5-3 内装仕上工事業から建築工事業を追加するケース
内装仕上工事業の許可を持つ会社が、リフォーム工事や改修工事の元請案件を受注するようになり、建築工事業の追加を検討するケースです。
ここで注意したいのは、建築工事業(建築一式工事)と内装仕上工事業の違いです。
建築一式工事は、原則として総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事であり、単に複数の専門工事をまとめて請け負うことや、元請として受注することだけで建築一式工事に該当するわけではありません。
例えば、内装仕上工事や設備工事を組み合わせたリフォーム工事であっても、その工事内容によっては建築一式工事ではなく、専門工事として区分される場合があります。
そのため、建築工事業の追加を検討する際には、これまでの施工実績や今後の請負内容を整理し、建築一式工事に該当するかを確認する必要があります。
また、建築工事業の営業所技術者等には、建築一式工事に対応した国家資格や実務経験が求められます。
内装仕上工事業の技術者要件を満たしているだけでは、建築工事業の要件を満たすとは限りません。
建築工事業の業種追加では、請負金額や元請・下請の区分だけでなく、工事そのものの内容と技術者要件を慎重に確認する必要があります。
5-4 管工事業から消防施設工事業を追加するケース
管工事業の許可を持つ会社が、スプリンクラー設備や消火設備などの工事を新たに受注するようになり、消防施設工事業の追加を検討するケースです。
管工事業と消防施設工事業は、配管を伴う工事であっても、設備の用途や工事内容によって区分されます。
例えば、空調設備や給排水設備の配管工事と、スプリンクラー設備などの消火設備工事では、必要となる建設業許可の業種が異なる場合があります。
また、管工事業の営業所技術者等が、消防施設工事業についても要件を満たしているとは限りません。
消防施設工事業の業種追加では、消防設備士などの該当する国家資格や、消防施設工事に関する実務経験などを確認する必要があります。
さらに、消防設備の工事では、建設業許可とは別に、消防法に基づく資格者による施工等が求められる場合があります。
管工事業の許可を持っていても、消防施設工事を請け負うための建設業許可や、施工に必要な消防法上の資格を別途確認することが重要です。
5-5 業種追加を検討する際に共通する注意点
ここまで紹介した4つのケースに共通するのは、現在の建設業許可だけで新たな工事に対応できるかどうかを、工事内容と技術者要件の両面から判断する必要があることです。
業種追加を検討する際には、特に次の点を確認しましょう。
- 新たに請け負う工事が、どの建設工事の業種に該当するか
- 現在の許可業種だけで対応できる工事なのか
- 追加業種に対応した営業所技術者等を配置できるか
- 国家資格による申請が可能か、実務経験の証明が必要か
- 一般建設業と特定建設業のどちらで許可を取得する必要があるか
また、一つの国家資格で複数業種の技術者要件を満たす場合には、新たな技術者を採用せずに業種追加できる可能性もあります。
一方、実務経験によって追加業種の要件を満たす場合には、必要な経験年数だけでなく、工事内容や経験期間を裏付ける資料を準備しなければなりません。
業種追加では、希望する業種を決めるだけでなく、その業種の許可を取得できる具体的な根拠を事前に確認することが重要です。
第6章 建設業許可の業種追加に関するよくある質問
建設業許可の業種追加を検討している会社からは、追加できる業種の数や許可番号、営業所技術者等の資格・実務経験などについて、さまざまなご相談があります。
ここでは、業種追加申請に関する代表的な質問について解説します。
6-1 建設業許可は1業種だけでも追加できますか?
はい。1業種だけでも業種追加申請は可能です。
例えば、内装仕上工事業の許可を持つ会社が、新たに塗装工事業だけを追加することができます。
また、追加する業種について許可要件を満たしていれば、複数の業種を同時に申請することも可能です。
東京都知事許可の場合、同じ一般建設業または特定建設業の区分であれば、1業種の追加でも複数業種の追加でも申請手数料は5万円です。
6-2 業種追加をすると建設業許可番号は変わりますか?
通常の業種追加申請では、現在の建設業許可番号は変わりません。
例えば、東京都知事許可を持つ会社が新たな業種を追加した場合でも、既存の許可番号を引き続き使用します。
ただし、追加した業種の許可日や有効期間は、既存の許可と異なることがあります。
複数の許可業種の有効期間をそろえたい場合には、更新申請に合わせた「許可の一本化」を検討することになります。
6-3 現在の営業所技術者等が追加業種も兼任できますか?
追加する業種の技術者要件を満たしていれば、同一営業所で複数の業種を担当できる場合があります。
例えば、現在の営業所技術者等が保有する国家資格によって、既存業種と追加業種の両方の要件を満たせる場合です。
この場合、新たに技術者を採用することなく業種追加を申請できる可能性があります。
ただし、国家資格の種類によって担当できる業種は異なります。また、一般建設業と特定建設業では必要な資格・経験が異なる場合があります。
そのため、業種追加の前に、現在の営業所技術者等が追加業種にも対応できるかを確認することが重要です。
6-4 以前勤務していた会社での実務経験も使えますか?
はい。以前勤務していた会社での実務経験を使用できる場合があります。
ただし、追加する建設工事の業種について、必要な期間の実務経験があることを証明しなければなりません。
例えば、以前の勤務先で電気通信工事に従事していた方を、電気通信工事業の営業所技術者等として配置する場合には、その工事内容や経験期間を確認する必要があります。
実務経験の証明には、工事の契約書・注文書・請求書などに加え、当時の勤務先への在籍状況を確認する資料が必要になることがあります。
以前の勤務先が廃業している場合や、工事資料が残っていない場合には、実務経験の証明が難しくなることがあるため注意が必要です。
6-5 業種追加の申請中に、新しい業種の工事を請け負うことはできますか?
業種追加を申請しただけでは、新たな業種の建設業許可を取得したことにはなりません。
そのため、追加する業種について許可が必要となる規模の建設工事を請け負う場合には、原則として業種追加の許可を取得している必要があります。
一方、建設業許可を必要としない軽微な建設工事については、許可取得前でも請け負える場合があります。
ただし、工事の内容や請負金額、建築一式工事かどうかによって判断が異なるため、契約前に確認することが重要です。
特に、取引先から新たな許可業種の取得を求められている場合には、必要な許可を取得できる時期を考慮して申請を進めましょう。
6-6 決算変更届を提出していなくても業種追加できますか?
東京都では、必要な決算変更届が未提出の場合、業種追加申請を受け付けることができません。
そのため、業種追加を予定している場合には、まず過去の決算変更届が提出されているかを確認する必要があります。
また、代表取締役や取締役の変更、営業所移転、常勤役員等・営業所技術者等の変更などが未届の場合にも、必要な手続きへの対応が求められます。
業種追加の申請準備では、追加業種の営業所技術者等の要件だけでなく、既存の建設業許可に関する届出状況も確認しておきましょう。
第7章 まとめ|東京都で建設業許可の業種追加をご検討の会社様へ
建設業許可の業種追加は、すでに許可を取得している会社が、事業の拡大や新たな工事の受注に伴い、別の建設工事の業種について許可を取得する手続きです。
業種追加を申請する際には、特に次の点を確認する必要があります。
- 追加したい工事が、どの建設業許可の業種に該当するか
- 追加業種に対応した営業所技術者等を配置できるか
- 国家資格または実務経験によって技術者要件を証明できるか
- 一般建設業・特定建設業のどちらの許可が必要か
- 決算変更届や各種変更届に未提出のものがないか
- 現在の許可の更新時期と、許可の一本化を検討する必要があるか
特に重要なのは、追加したい業種について、営業所技術者等の資格・実務経験と常勤性を証明できることです。
すでに在籍している営業所技術者等が追加業種も担当できる場合がある一方、資格や実務経験の内容によっては、新たな技術者の確保が必要になることもあります。
また、東京都知事許可の業種追加申請では、新規許可申請と提出書類が異なるため、現在の許可状況に応じた準備が必要です。
増村行政書士事務所では、東京都知事許可を中心に、建設業許可の業種追加申請を取り扱っています。
**「現在の資格で業種追加できるのか」「実務経験で追加業種の要件を満たせるのか」「更新と同時に申請したい」**といったご相談にも対応しています。
建設業許可の業種追加をご検討の会社様は、お気軽にご相談ください。









