東京都港区の会社様から、造園工事業の建設業許可を取得したいとのご相談をいただきました。
こちらの会社様は、生花販売や装飾を中心に事業を行っていましたが、庭園や外構の植栽工事も増えてきたため、造園工事業の一般建設業許可を取得することになりました。
営業所技術者等については、一級造園施工管理技士の資格を持つ従業員が在籍していたため、大きな問題はありませんでした。
今回の申請でポイントとなったのは、代表取締役の常勤役員等としての経験年数です。
代表取締役は長年にわたり会社経営に携わっていましたが、過去に取締役の重任登記を失念していた時期があり、登記上は役員期間に空白が生じていました。
そこで、その空白期間について「権利義務取締役」としての期間を常勤役員等の経験年数に含めることができるかを確認しながら、申請準備を進めることになりました。
今回の案件では、
代表取締役の経営経験
権利義務取締役期間の確認
一級造園施工管理技士による営業所技術者等の要件
社会保険
財産的基礎
本店とは別に設けた営業所
を一つずつ確認しています。
特に、登記上の役員期間だけを見ると経験年数が不足する可能性があるケースでも、実際の会社経営の状況や当時の資料を確認することで、建設業許可申請につなげられることがあります。
今回は、権利義務取締役となっていた期間を含めて代表取締役の経営経験を整理し、東京都へ造園工事業の新規申請を行った事例をご紹介します。
第1章 代表取締役の経営経験と権利義務取締役の期間を確認
まず確認したのは、代表取締役の常勤役員等としての経営経験です。
今回の会社様では、唯一の取締役である代表取締役が常勤役員等の候補となりました。
過去の経営経験を確認するため、会社の履歴事項全部証明書や閉鎖事項証明書、定款に加え、過去の請求書や通帳などを確認しました。
工事実績については6年以上確認できたものの、登記関係の資料を確認したところ、取締役の重任登記を行っていなかった時期があることが分かりました。
取締役の任期が満了した後も後任者が選任されていない場合、従前の取締役は、新たな取締役が就任するまで引き続き権利義務を負うことがあります。
いわゆる「権利義務取締役」です。
今回の会社様では、この権利義務取締役となっていた期間を、建設業許可における常勤役員等の経営経験としてどのように扱うかが重要なポイントとなりました。
登記上だけを見ると、役員在任期間に空白があるように見えるため、その期間に実際に会社経営へ継続して関与していたことを別の資料で確認していく必要があります。
そこで、権利義務取締役となっていた期間を含む事業年度の確定申告書なども確認し、会社が継続して事業を行っていたことや、代表取締役が引き続き経営に携わっていた状況を整理しました。
その結果、権利義務取締役としての期間も含めて、建設業許可申請に必要な経営経験を証明できる見込みが立ちました。
役員の重任登記を失念していた場合でも、それだけで直ちに建設業許可の取得ができなくなるとは限りません。
登記上の役員期間と実際の経営状況を確認し、権利義務取締役としての期間をどのように証明するかを整理することが重要です。
第2章 一級造園施工管理技士で営業所技術者等の要件を確認
次に確認したのが、造園工事業の営業所技術者等の要件です。
今回の会社様には、一級造園施工管理技士の資格を持つ従業員が在籍していました。
一級造園施工管理技士は、造園工事業の営業所技術者等として認められる資格です。
そのため、実務経験10年を請求書や契約書などで証明する必要はなく、資格によって技術者要件を満たすことができました。
建設業許可では、営業所ごとに、その業種について一定の資格や実務経験を持つ営業所技術者等を置く必要があります。
今回は資格要件そのものについては問題ありませんでしたが、あわせて、その従業員が申請会社に常勤していることも確認しました。
資格証明書に加え、会社との雇用関係や常勤性を確認できる資料を揃え、営業所技術者等として申請できる状態を整えました。
今回の申請では、常勤役員等については権利義務取締役の期間を含めた経営経験の証明が大きな論点となりましたが、営業所技術者等については、一級造園施工管理技士の資格者が在籍していたため、比較的スムーズに要件を確認することができました。
第3章 社会保険の加入状況を確認
続いて、社会保険の加入状況を確認しました。
今回の会社様は、多数の従業員を雇用しており、健康保険・厚生年金保険・雇用保険についても必要な加入手続きが行われていました。
建設業許可では、適用事業所に該当する場合、社会保険等へ適切に加入していることが許可要件の一つとなります。
そのため、新規申請にあたっては、
健康保険・厚生年金保険
雇用保険
の加入状況をそれぞれ確認し、申請時に必要となる資料を準備しました。
また、営業所技術者等となる一級造園施工管理技士の従業員についても、会社との雇用関係や常勤性を確認できる資料を揃えました。
今回の会社様は、もともと従業員を多数雇用して事業を行っており、社会保険等の加入状況も整っていたため、この点については特に問題なく申請準備を進めることができました。
第4章 純資産500万円以上で財産的基礎を確認
次に確認したのが、一般建設業許可の財産的基礎です。
今回の会社様については、直近の決算書を確認したところ、貸借対照表上の純資産額が500万円を上回っていました。
一般建設業許可では、財産的基礎または金銭的信用について一定の要件を満たしている必要があります。
今回は、直前の決算における純資産額が500万円以上あったため、残高証明書を取得する方法ではなく、決算書の内容によって財産的基礎を確認することができました。
建設業許可申請では、決算書の数字をそのまま転記するのではなく、建設業法上の様式に合わせて財務諸表を作成していきます。
そのうえで純資産額を確認し、一般建設業許可の財産的基礎を満たしていることを整理しました。
今回の会社様については、財務内容に大きな問題はなく、この要件についてもスムーズに確認することができました。
第5章 本店とは別に設けた営業所の要件を確認
続いて確認したのが、建設業を営む営業所の要件です。
今回の会社様は、登記上の本店所在地とは別の場所に、実際に事業を行う営業所を構えていました。
そのため、営業所として使用する権原を確認するため、賃貸借契約書をご用意いただきました。
また、契約が継続していることを確認できる資料として、更新料を支払ったことが分かる通帳の記録もあわせて確認しました。
営業所内部についても、
事務机
複合機
書類を保管するスペース
来客や打ち合わせに使用できるスペース
などが整っており、建設業の営業所として実際に使用できる状態となっていました。
建設業許可では、登記上の本店所在地と実際の営業所所在地が必ず同じである必要はありません。
一方で、申請する営業所については、その場所を継続して使用できる権原があり、実際に建設工事の見積りや契約などの営業活動を行える実態が必要です。
今回の会社様については、賃貸借契約書や営業所内部の状況を確認し、建設業許可上の営業所として問題なく整理することができました。
第6章 東京都へ造園工事業の新規申請
ここまでの確認で、
代表取締役の経営経験
権利義務取締役期間の取り扱い
一級造園施工管理技士による営業所技術者等の要件
社会保険
財産的基礎
営業所
の各要件を整理することができました。
今回の申請で最も重要だったのは、代表取締役の役員登記に空白期間があった点です。
単純に履歴事項全部証明書だけを確認すると、常勤役員等として必要な経営経験が不足するように見えてしまいます。
しかし、実際には任期満了後も後任の取締役が就任するまで権利義務取締役として会社経営を継続していたため、その期間について確定申告書などの資料を確認し、経営経験として整理しました。
営業所技術者等については、一級造園施工管理技士の資格を持つ従業員が在籍していたため、資格要件を満たしています。
さらに、社会保険の加入状況、純資産500万円以上の財産的基礎、本店とは別に設けた営業所についても必要な資料を揃えました。
すべての申請書類を整えたうえで、東京都へ造園工事業の一般建設業許可を新規申請し、無事に受理されました。
建設業許可では、役員の重任登記を失念していたなど、登記上の経歴だけでは判断しにくいケースがあります。
今回のように、権利義務取締役として実際に経営を継続していた期間について、当時の資料を確認しながら整理することで、許可申請につなげられる場合があります。









