東京都江東区でリフォーム工事を営む会社様から、建築工事業・内装仕上工事業・解体工事業について、特定建設業許可を取得したいとのご相談をいただきました。
会社は設立から6年以上が経過しており、代表取締役である社長にも十分な役員経験がありました。
また、一級建築施工管理技士の資格を持つ従業員も在籍していたため、人的要件については大きな問題はありませんでした。
一方で、今回の申請で最も重要なポイントとなったのが、特定建設業許可の財産的基礎です。
特定建設業許可では、
・欠損比率
・流動比率
・資本金
・自己資本
について、それぞれ一定の基準を満たす必要があります。
直近の決算書を確認したところ、欠損比率、流動比率、自己資本については基準を満たしていました。
しかし、資本金は1,000万円でした。
特定建設業許可では資本金2,000万円以上が必要となるため、このままでは申請することができません。
そこで、特定建設業許可の申請前に資本金を1,000万円から2,000万円へ増資し、増資登記を完了させたうえで申請することになりました。
さらに、代表取締役については、設立後6年以上にわたる役員経験を確認するため、工事請求書や入金履歴を整理し、常勤役員等の要件を確認しました。
一級建築施工管理技士の資格、社会保険の加入状況、営業所の実態についても確認し、特定建設業許可の新規申請に必要な要件を整えました。
この記事では、直近決算時点では資本金1,000万円だった会社様が、申請前に2,000万円へ増資し、建築工事業・内装仕上工事業・解体工事業の特定建設業許可を取得した事例をご紹介します。
第1章 ご相談の内容
今回ご相談いただいたのは、東京都江東区でリフォーム工事を中心に営んでいる会社様です。
会社設立から6年以上が経過し、事業規模も大きくなってきたことから、建築工事業・内装仕上工事業・解体工事業について、特定建設業許可を取得したいとのご相談でした。
特定建設業許可を取得するためには、一般建設業許可よりも厳しい要件を確認する必要があります。
今回の会社様では、
・代表取締役が常勤役員等の要件を満たしているか
・一級建築施工管理技士を特定営業所技術者として配置できるか
・特定建設業の財産的基礎4要件を満たしているか
・社会保険へ適切に加入しているか
・営業所の実態が確認できるか
といった点を一つずつ確認しました。
代表取締役については、会社設立時から6年以上にわたり役員として経営に携わっていました。
そのため、工事請求書や入金履歴を確認しながら、建設業に関する経営経験を整理することになりました。
また、社内には一級建築施工管理技士の資格を持つ従業員が在籍していたため、技術者要件についても資格を使って整理することができました。
一方で、今回の申請で最も大きな論点となったのが財産的基礎です。
直近の決算書を確認したところ、欠損比率、流動比率、自己資本については特定建設業許可の基準を満たしていました。
しかし、資本金は1,000万円でした。
特定建設業許可では資本金2,000万円以上が必要となるため、このままでは財産的基礎の要件をすべて満たすことができません。
そこで、特定建設業許可の申請前に資本金を1,000万円から2,000万円へ増資し、必要な要件を整えたうえで申請を進める方針となりました。
今回の事例は、直近決算の内容自体は良好でありながら、資本金だけが特定建設業許可の基準に届いていなかった会社様について、申請前の増資で要件を整えたケースです。
第2章 特定建設業の財産的基礎を確認すると資本金だけが不足
特定建設業許可では、一般建設業許可よりも厳しい財産的基礎の要件が設けられています。
今回の会社様について、まず直近の決算書を確認し、特定建設業許可に必要となる財産的基礎の4要件を一つずつ確認しました。
確認する項目は、
・欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
・流動比率が75%以上であること
・資本金が2,000万円以上であること
・自己資本が4,000万円以上であること
です。
今回の会社様は業績も安定しており、直近決算の内容を確認したところ、
・欠損比率
・流動比率
・自己資本
については、特定建設業許可の基準を満たしていました。
ところが、資本金だけが1,000万円でした。
そのため、財務内容そのものに問題があるわけではありませんでしたが、「資本金2,000万円以上」という要件だけを満たしていない状態でした。
特定建設業許可の財産的基礎は、4つの要件のうちどれか一つを満たせばよいわけではありません。
すべての要件を満たす必要があります。
したがって、自己資本が4,000万円以上あり、流動比率などに問題がなかったとしても、資本金が1,000万円のままでは特定建設業許可を申請することはできません。
そこで今回の会社様については、特定建設業許可の申請前に資本金を2,000万円まで増資することで、財産的基礎の要件を整えることになりました。
直近決算だけを見ると資本金は1,000万円でしたが、資本金については申請時点までに増資を完了させることで要件を満たすことができます。
今回の事例では、この点を使って申請前に増資を行い、特定建設業許可の財産的基礎を整える方針としました。
第3章 資本金1,000万円から2,000万円へ増資して要件を整備
今回の会社様では、直近決算の内容を確認した結果、特定建設業許可の財産的基礎4要件のうち、資本金だけが基準に届いていませんでした。
資本金は1,000万円でしたが、特定建設業許可では2,000万円以上が必要です。
そこで、申請前に資本金を1,000万円から2,000万円へ増資することになりました。
今回のポイントは、特定建設業許可の財産的基礎は原則として直近の決算内容をもとに確認しますが、資本金については申請時点までに増資を完了していれば、その増資後の金額で要件を確認できるという点です。
そのため、
・直近決算では資本金1,000万円
・欠損比率は基準内
・流動比率は75%以上
・自己資本は4,000万円以上
・申請前に資本金を2,000万円へ増資
という形で、財産的基礎の4要件をそろえることができました。
増資後は、法務局で資本金変更の登記を行い、増資後の資本金額が記載された履歴事項全部証明書を取得しました。
この履歴事項全部証明書によって、申請時点で資本金が2,000万円以上となっていることを確認できる状態にしました。
特定建設業許可を検討している会社様の中には、自己資本や流動比率には問題がないものの、資本金だけが2,000万円未満というケースがあります。
その場合でも、他の財産的基礎の要件を満たしているのであれば、申請前に増資することで特定建設業許可の要件を整えられる可能性があります。
今回の会社様では、直近決算そのものを変更するのではなく、申請前に資本金を1,000万円から2,000万円へ増資することで、特定建設業許可に必要な財産的基礎を整えることができました。
第4章 社長の6年3か月の役員経験を請求書と入金履歴で確認
今回の会社様では、代表取締役である社長を常勤役員等として配置する予定でした。
会社は設立からすでに6年以上が経過しており、社長も設立当初から継続して経営に携わっていました。
そのため、常勤役員等の要件については、会社設立後の役員経験を使って確認することになりました。
ただし、単に履歴事項全部証明書で取締役としての在任期間が確認できれば足りるわけではありません。
実際に建設業を営んでいた期間であることも確認する必要があります。
そこで今回の申請では、会社設立後の工事実績について、
・工事請求書
・請負代金の入金が確認できる通帳等
を確認しながら、建設業を継続して営んでいた期間を整理しました。
今回の会社様は、リフォーム工事を中心に継続して受注しており、請求書と入金履歴もしっかり保管されていました。
そのため、工事請求書の内容と入金状況を照合しながら確認作業を進めることができました。
確認の結果、社長について建設業を営む会社での役員経験を6年3か月確認することができました。
これにより、社長を常勤役員等として配置するための経営経験の要件を満たしていることを整理できました。
建設業許可では、法人を設立してから一定期間が経過しているというだけで、当然に常勤役員等の要件を満たすわけではありません。
その期間について実際に建設業を営んでいたことを確認できる資料が重要になります。
今回の会社様では、設立後の工事請求書と入金履歴が継続して保管されていたため、6年3か月の経営経験を具体的な資料で確認し、特定建設業許可の申請へ進めることができました。
第5章 一級建築施工管理技士・社会保険・営業所の要件を確認
今回の会社様では、特定建設業許可の技術者要件について、一級建築施工管理技士の資格を持つ従業員が在籍していました。
そのため、建築工事業、内装仕上工事業、解体工事業について、特定営業所技術者として配置できるかを確認しました。
確認した主な内容は、
・一級建築施工管理技士の資格を保有していること
・申請会社に常勤していること
・申請する業種について特定営業所技術者の要件を満たしていること
です。
資格証明書を確認し、申請する各業種について技術者要件を満たしていることを整理しました。
また、社会保険についても確認しました。
会社では健康保険・厚生年金保険など必要な加入手続が行われており、代表取締役と技術者の常勤性についても確認できる状態でした。
さらに、営業所については、登記上の本店所在地と実際に営業を行う事務所が一致していました。
実際に現地を確認し、
・事務机
・複合機などの事務設備
・電話等の通信設備
・打ち合わせスペース
などが設置され、建設業の営業を行うための実態があることを確認しました。
これにより、
・社長の6年3か月の役員経験
・一級建築施工管理技士による特定営業所技術者の要件
・社会保険への加入
・営業所の実態
・増資後の財産的基礎
と、特定建設業許可の申請に必要となる主要な要件を一通り確認することができました。
今回の会社様では、人的要件や営業所について大きな問題はなく、最も重要だった資本金の不足についても、申請前の増資によって要件を整えることができました。
第6章 東京都へ特定建設業許可を申請し無事に取得
財産的基礎、常勤役員等、特定営業所技術者、社会保険、営業所の各要件を確認し、申請に必要な書類を整えたうえで、東京都へ特定建設業許可の新規申請を行いました。
今回の会社様では、
・直近決算では資本金が1,000万円
・欠損比率、流動比率、自己資本は基準をクリア
・申請前に資本金を2,000万円へ増資
・社長の役員経験を6年3か月確認
・一級建築施工管理技士を特定営業所技術者として配置
・社会保険への加入状況を確認
・営業所の実態を確認
という形で、特定建設業許可に必要な要件を一つずつ整理しました。
特に今回のポイントは、直近決算時点では資本金が1,000万円だったものの、申請前に2,000万円へ増資することで、特定建設業許可の財産的基礎を整えたことです。
増資後は、資本金変更の登記を完了させ、増資後の履歴事項全部証明書を取得しました。
そのうえで東京都へ特定建設業許可の新規申請を行い、申請は無事に受理されました。
その後、建築工事業、内装仕上工事業、解体工事業について、特定建設業許可を取得することができました。
今回の事例のように、特定建設業許可を検討している会社様の中には、直近決算の財務内容は良好でも、資本金だけが2,000万円未満というケースがあります。
その場合でも、欠損比率、流動比率、自己資本など他の要件を満たしていれば、申請前に増資することで特定建設業許可の要件を整えられる可能性があります。
今回の会社様では、資本金1,000万円から2,000万円への増資を行い、人的要件や営業所要件とあわせて申請内容を整理することで、特定建設業許可の取得につなげることができました。









