東京都台東区で新たに設立された会社様から、とび・土工工事業の建設業許可を取得したいとのご相談をいただきました。
この会社様は、とび・土工工事を専門に行うために設立されたばかりの法人で、代表取締役ご本人が二級建築施工管理技士(躯体)の資格を保有していました。
そのため、営業所技術者等の要件については大きな問題はありませんでしたが、建設業許可を取得するうえでポイントとなったのが、常勤役員等の要件です。
代表取締役は、これまでご家族が経営する建設会社で勤務していましたが、取締役としての経営経験はありませんでした。
そこで確認したのが、お母様の経歴です。
お母様は、ご家族が経営する建設業許可会社で20年以上にわたり取締役を務めていました。
この経営経験を活かすため、お母様に新会社の取締役へ就任していただき、常勤役員等として配置する形で申請体制を整えることになりました。
さらに、会社設立直後の申請だったため、財産的基礎については開始貸借対照表を作成して確認しました。
今回は、新設法人で代表取締役自身に経営経験がない状況から、家族の経営経験と代表取締役の国家資格を組み合わせ、とび・土工工事業の一般建設業許可を取得した事例です。
第1章 代表取締役だけでは常勤役員等の要件を満たせなかった
まず確認したのは、常勤役員等の要件です。
今回の会社様では、代表取締役が唯一の取締役でした。
代表取締役は、ご家族が経営する建設会社で長く勤務していましたが、その会社で取締役などの役員には就任していませんでした。
また、個人事業主として建設業を営んでいた経験もありませんでした。
そのため、代表取締役ご本人については、建設業許可で求められる常勤役員等としての経営経験を満たすことができませんでした。
新設法人の場合、会社そのものにはまだ5年以上の経営実績がありません。
そのため、代表者自身に過去の役員経験や個人事業主としての経営経験がない場合は、別の方法で常勤役員等の要件を満たす必要があります。 常勤役員等を含む東京都の建設業許可要件も参考になります。
今回の案件では、そこでご家族の経歴を確認することになりました。
ご家族が経営する建設業許可会社の役員歴を確認したところ、お母様が長期間にわたって取締役を務めていることが分かりました。
このお母様の経営経験を活用できないか検討することが、今回の許可取得に向けた大きなポイントとなりました。
第2章 20年以上の役員経験があるお母様を常勤役員等として配置
代表取締役ご本人では常勤役員等の要件を満たせなかったため、次に確認したのがお母様の経営経験です。
お母様は、ご家族が経営する建設業許可会社で長年取締役を務めていました。
確認のため、
建設業許可通知書
履歴事項全部証明書
などを照らし合わせたところ、取締役としての在任期間は20年以上あることが分かりました。
そのため、お母様のこれまでの建設業に関する経営経験を活用し、新会社の取締役へ就任していただくことにしました。
あわせて、新会社に常勤する体制を整え、常勤役員等として申請できる状態にしていきました。
新設法人で代表者自身に十分な経営経験がない場合でも、他の役員候補者に建設業での経営経験があるケースでは、その経験を活用して許可要件を整えられることがあります。
今回の案件では、お母様の20年以上にわたる役員経験が、建設業許可取得の大きなポイントとなりました。
第3章 二級建築施工管理技士(躯体)で営業所技術者等の要件を確認
次に確認したのが、とび・土工工事業の営業所技術者等の要件です。
今回の会社様では、代表取締役ご本人が二級建築施工管理技士(躯体)の資格を保有していました。
そのため、とび・土工工事業については、この資格によって営業所技術者等の要件を満たすことができました。 とび・土工工事業の営業所技術者等の資格要件も参考になります。
資格で営業所技術者等の要件を満たせる場合は、長期間の実務経験を請求書や契約書などで証明する必要がありません。
今回の案件では、常勤役員等についてはお母様の経営経験を活用し、営業所技術者等については代表取締役ご本人の国家資格を活用する形で、それぞれの要件を分けて整えました。
建設業許可では、常勤役員等と営業所技術者等を必ず同じ人が担う必要はありません。
それぞれの要件を満たす人材を適切に配置できれば、新設法人であっても許可取得を目指すことができます。
今回のように、代表者自身が技術資格を持っている場合は、その資格を活かしながら、経営経験のある別の役員を配置することで申請体制を整えることができます。
第4章 新設法人の財産的基礎を開始貸借対照表で確認
次に確認したのが、一般建設業許可の財産的基礎です。
今回の会社様は、設立したばかりでまだ最初の事業年度を迎えていませんでした。
そのため、直近の決算書で財産的基礎を確認することはできません。
そこで、会社設立時の財務状況を示す開始貸借対照表を作成し、一般建設業許可に必要な財産的基礎を確認することになりました。
今回の会社様は、資本金500万円で設立されていました。
開始貸借対照表でも、一般建設業許可の財産的基礎を満たしていることを確認できたため、この点についても問題なく申請を進めることができました。
新設法人の場合、既存法人とは財産的基礎の確認方法が異なります。
設立直後でまだ決算を迎えていない会社では、開始貸借対照表の内容が重要になるため、会社設立時の資本金や資産状況を確認しながら申請準備を進める必要があります。
今回の案件では、常勤役員等と営業所技術者等に加え、財産的基礎についても設立時点から要件を整えていたため、比較的スムーズに申請体制を固めることができました。
第5章 営業所と社会保険の要件を確認
続いて、営業所の実態と社会保険の加入状況を確認しました。
今回の会社様では、登記上の本店所在地をそのまま建設業の営業所として使用していました。
営業所内には、事務机や複合機などの事務設備があり、打ち合わせを行うスペースも確保されていました。
そのため、実際に見積りや契約などの建設業務を行う営業所としての実態も確認できました。
また、従業員を雇用しており、健康保険・厚生年金保険・雇用保険についても必要な加入手続きが行われていました。
今回、常勤役員等として配置するお母様についても、新会社で常勤する体制を整えたうえで申請を進めました。
建設業許可では、経営経験や資格だけでなく、常勤役員等や営業所技術者等が実際にその会社・営業所で常勤していることも重要です。
今回の会社様は、営業所の実態と社会保険関係についても特に問題がなく、新設法人として必要な申請体制を整えることができました。
第6章 東京都へとび・土工工事業の新規申請
ここまでの確認で、
常勤役員等
営業所技術者等
社会保険
財産的基礎
営業所
の各要件を満たしていることが確認できました。
今回の会社様は設立したばかりの新設法人でしたが、
常勤役員等は、20年以上の建設業に関する経営経験を持つお母様
営業所技術者等は、二級建築施工管理技士(躯体)を保有する代表取締役
という体制を整えることで、許可要件を満たすことができました。
また、財産的基礎についても、資本金500万円で設立されていたため、開始貸借対照表で要件を確認することができました。
必要書類を整えたうえで、東京都へとび・土工工事業の一般建設業許可を新規申請しました。
申請は大きな補正もなく受理され、無事に許可取得へ進むことができました。
新設法人の場合、会社そのものに長い経営実績がないため、誰を常勤役員等として配置するかが許可取得の大きなポイントになることがあります。
今回のように、代表者自身は技術資格を持っていても経営経験が不足しているケースでは、別の役員候補者の経歴を確認し、会社全体として要件を整えることで申請できる場合があります。
新しく建設会社を設立して許可取得を目指す場合は、会社設立後に考えるのではなく、役員構成や保有資格、資本金などを設立段階から整理しておくことが重要です。









