増村行政書士事務所は、東京都の建設業許可に特化して15年。新規許可だけでなく、更新、決算変更届、変更届、経営事項審査まで継続してサポートしています。
建設業許可は、取得できればそれで終わりではありません。
許可取得後も、常勤役員等、営業所技術者等、営業所、財産要件、決算変更届、役員変更など、許可要件を継続して維持していく必要があります。
特に、家族経営の建設会社では、父親が常勤役員等を担い、息子である代表取締役が営業所技術者等を担っているケースがあります。
この体制自体は珍しいものではありません。
しかし、常勤役員等を担っていた取締役が死亡した場合、後任者の経験年数によっては、建設業許可を維持できなくなることがあります。
今回ご紹介するのは、東京都台東区の内装仕上工事業者様について、平成27年の新規許可申請時から継続してサポートしている事例です。
当初は、取締役であるお父様が常勤役員等を担い、代表取締役社長が二級建築施工管理技士(仕上げ)の資格により営業所技術者等を担う形で、内装仕上工事業の建設業許可を取得しました。
その後、常勤役員等であったお父様が亡くなられたため、社長ご自身の経営業務経験を確認したところ、必要な5年に数か月足りない状況でした。
そのため、一旦全部廃業の手続きを行い、社長ご自身の経験年数が5年に達したタイミングで、改めて建設業許可の新規申請を行いました。
この記事では、常勤役員等が死亡した場合の建設業許可の取扱い、後任者の経験年数が足りない場合の対応、再度新規申請を行う際に確認したポイントについて、実際の対応事例をもとに解説します。
第1章 ご相談時の状況
今回の事例は、東京都台東区で内装仕上工事業を営む会社様からのご相談です。
こちらの会社様とは、平成27年に内装仕上工事業の建設業許可を新規で取得したときから、継続してお付き合いがありました。
新規許可申請時の体制は、代表取締役社長と、社長のお父様である取締役を中心とした家族経営の会社でした。
代表取締役社長は、二級建築施工管理技士(仕上げ)の資格をお持ちでした。
そのため、内装仕上工事業の営業所技術者等については、社長ご本人が担当する形で整理しました。
一方で、常勤役員等については、社長ご本人の建設業に関する経営業務経験がまだ5年に達していませんでした。
そこで、新規許可申請時には、取締役であるお父様が前職の建設業許可業者で取締役として勤務していた経験をもとに、常勤役員等の要件を満たす形で申請しました。
この体制で、内装仕上工事業の一般建設業許可を取得しました。
ところが、その後、常勤役員等を担っていたお父様が亡くなられたことで、建設業許可の維持に大きな問題が発生しました。
建設業許可では、営業所技術者等の要件を満たしていても、常勤役員等の要件を満たす人がいなくなると、許可を維持することができません。
この会社様の場合も、社長ご本人は営業所技術者等の要件を満たしていましたが、常勤役員等として必要な経営業務経験が、当時はまだ5年に届いていませんでした。
第2章 父親である取締役が常勤役員等を担っていた
建設業許可を取得するためには、営業所技術者等だけでなく、常勤役員等の要件も満たす必要があります。
今回の会社様では、代表取締役社長が二級建築施工管理技士(仕上げ)の資格を持っていたため、内装仕上工事業の営業所技術者等については大きな問題はありませんでした。
一方で、常勤役員等については、社長ご本人の経営業務経験だけでは要件を満たすことができませんでした。
そこで、新規許可申請時には、社長のお父様である取締役を常勤役員等として整理しました。
お父様は、かつて別の建設業許可業者で取締役として勤務していた経験がありました。
そのため、前職での取締役経験をもとに、建設業に関する経営業務の管理責任者としての経験を証明し、常勤役員等の要件を満たす形で申請しました。
家族経営の建設会社では、父親が長年建設業に携わり、息子が現場や技術面を担っているケースがあります。
このような場合、父親が常勤役員等を担い、息子である代表取締役が営業所技術者等を担う体制で、建設業許可を取得することがあります。
ただし、この体制は、常勤役員等を担っている人が引き続き常勤で会社に在籍していることが前提です。
常勤役員等を担っている取締役が退任したり、亡くなられたりした場合には、後任者が常勤役員等の要件を満たせるかどうかを確認しなければなりません。
今回の会社様でも、許可取得時にはお父様の経験により常勤役員等の要件を満たしていましたが、その後、お父様が亡くなられたことで、許可要件の維持が問題となりました。
第3章 代表取締役社長は営業所技術者等の要件を満たしていた
今回の会社様では、代表取締役社長が二級建築施工管理技士(仕上げ)の資格をお持ちでした。
そのため、内装仕上工事業の営業所技術者等については、社長ご本人を営業所技術者等として整理することができました。
建設業許可では、常勤役員等と営業所技術者等は、それぞれ別の要件です。
営業所技術者等については、取得しようとする業種に対応した資格や実務経験が必要になります。
内装仕上工事業の場合、二級建築施工管理技士のうち、仕上げの資格を持っている方であれば、営業所技術者等の要件を満たせる場合があります。
今回の会社様では、代表取締役社長がこの資格を持っていたため、営業所技術者等については大きな問題はありませんでした。
しかし、営業所技術者等の要件を満たしていることと、常勤役員等の要件を満たしていることは別問題です。
代表取締役社長が資格を持っていて、現場を取り仕切っていたとしても、それだけで常勤役員等の要件を満たすわけではありません。
常勤役員等については、建設業に関する経営業務の経験が必要になります。
そのため、許可取得時には、営業所技術者等を社長ご本人、常勤役員等をお父様である取締役という形で、それぞれ別に要件を整理しました。
このように、建設業許可では、技術面の要件と経営面の要件を分けて確認する必要があります。
資格者がいるから許可を取れる、という単純な話ではなく、常勤役員等と営業所技術者等の両方を満たして初めて、建設業許可の要件を整えることができます。
第4章 常勤役員等の死亡により許可要件を維持できなくなった
建設業許可は、許可を取得した時点だけ要件を満たしていればよいものではありません。
許可を受けた後も、常勤役員等、営業所技術者等、営業所、財産的基礎など、許可要件を継続して維持していく必要があります。
今回の会社様では、許可取得時には、お父様である取締役が常勤役員等を担っていました。
ところが、そのお父様が亡くなられたことで、常勤役員等の要件を満たす人がいなくなってしまいました。
代表取締役社長は、二級建築施工管理技士(仕上げ)の資格を持っていたため、営業所技術者等の要件は満たしていました。
しかし、常勤役員等については、建設業に関する経営業務経験が必要です。
資格を持っていることや、現場経験があることだけでは、常勤役員等の要件を満たすことはできません。
この時点で確認したところ、社長ご自身の建設業に関する経営業務経験は、まだ5年に達していませんでした。
そのため、お父様が亡くなられた時点で、後任の常勤役員等を立てることができない状態でした。
建設業許可では、常勤役員等が欠けたまま許可を維持することはできません。
後任者がすぐに要件を満たせる場合であれば、変更届により常勤役員等を交代することができます。
しかし、後任候補者の経験年数が足りない場合には、単に変更届を出せばよいという話にはなりません。
今回の会社様では、社長ご自身の経験年数が5年に数か月足りなかったため、常勤役員等の交代によって許可を維持することができませんでした。
そのため、建設業許可については、一旦全部廃業の手続きを行う必要がありました。
第5章 社長の経営業務経験は5年に届かなかった
常勤役員等を交代できるかどうかを判断するためには、後任候補者の経営業務経験を具体的に確認する必要があります。
今回の会社様では、代表取締役社長が後任候補者となりました。
社長は、もともと前職の建設業許可業者でも取締役として在任しており、その後、自社を設立して建設業許可を取得していました。
そのため、社長ご自身にも建設業に関する経営業務経験はありました。
しかし、問題はその経験年数です。
お父様が亡くなられた時点で、社長ご自身の経営業務経験は4年8か月でした。
内訳としては、前職の建設業許可業者での取締役在任期間と、自社で建設業許可を取得した後の取締役在任期間を合わせたものです。
常勤役員等として認められるためには、原則として建設業に関する経営業務経験が5年以上必要です。
今回の会社様では、あと数か月あれば5年に達する状況でした。
しかし、経験年数は水増しすることができません。
あと少しだからといって、5年に満たない状態で常勤役員等として届け出ることはできません。
建設業許可では、要件を満たしているかどうかを、資料に基づいて確認します。
前職の取締役在任期間については、建設業許可業者であったことや、取締役として在任していたことを確認する必要があります。
自社で建設業許可を取得した後の期間についても、許可業者の取締役として在任していた期間を確認します。
今回の会社様では、それらを確認しても、お父様が亡くなられた時点では5年に届きませんでした。
そのため、常勤役員等の変更届によって許可を維持することはできず、一旦全部廃業を行ったうえで、社長ご自身の経験年数が5年に達するのを待つ必要がありました。
第6章 一旦全部廃業し、不足分の経験を積んで再度新規申請
今回の会社様では、常勤役員等を担っていたお父様が亡くなられた時点で、代表取締役社長の経営業務経験が5年に届いていませんでした。
そのため、常勤役員等の変更届によって許可を維持することはできませんでした。
建設業許可では、常勤役員等の要件を満たす人がいなくなった場合、そのまま許可を継続することはできません。
今回のケースでは、後任となる社長ご自身の経験年数が足りなかったため、一旦全部廃業の手続きを行いました。
全部廃業を行うと、その時点で建設業許可はなくなります。
そのため、許可が必要となる500万円以上の工事については、再度建設業許可を取得するまで請け負うことができません。
ただし、今回の会社様では、社長ご自身の経験年数が5年に達するまで、あと数か月という状況でした。
そこで、不足していた期間について、建設業に関する経営業務経験を積んだうえで、5年に達したタイミングで改めて新規申請を行う方針としました。
再度新規申請を行う際には、以前許可を持っていた会社であっても、審査が省略されるわけではありません。
常勤役員等、営業所技術者等、財産的基礎、営業所、社会保険など、新規申請として改めて要件を確認されます。
今回の会社様では、社長ご自身の経営業務経験について、前職の建設業許可業者での取締役在任期間、自社で建設業許可を取得していた期間、そして不足分を補う期間を整理しました。
不足分については、実際に建設業を営んでいたことを示す資料として、発注書、請求書、通帳などを確認しました。
経験年数が5年に達した後、必要書類を整え、改めて内装仕上工事業の一般建設業許可を新規申請しました。
このように、常勤役員等の経験年数がわずかに足りない場合でも、足りない期間を水増しすることはできません。
一旦全部廃業を行い、要件を満たしたタイミングで再度新規申請を行うという、正しい手順で対応する必要があります。
第7章 再申請時に確認した要件
一旦全部廃業を行った後、社長ご自身の経営業務経験が5年に達したタイミングで、改めて建設業許可の新規申請を行いました。
再度新規申請をする場合、以前に建設業許可を持っていた会社であっても、許可要件の確認が省略されるわけではありません。
新規申請として、常勤役員等、営業所技術者等、財産的基礎、営業所、社会保険などの要件を改めて確認する必要があります。
今回の会社様で最も重要だったのは、代表取締役社長が常勤役員等の要件を満たすかどうかでした。
社長ご自身の経営業務経験については、前職の建設業許可業者で取締役として在任していた期間、自社で建設業許可を取得していた期間、全部廃業後に不足分を補った期間を整理しました。
前職の建設業許可業者での取締役経験については、その会社が建設業許可業者であったこと、社長が取締役として在任していたことを確認しました。
自社で建設業許可を取得していた期間については、許可業者として営業していた期間と、社長が取締役として在任していた期間を確認しました。
不足分を補う期間については、実際に建設業を営んでいたことを示す資料として、発注書、請求書、通帳などを確認しました。
営業所技術者等については、社長ご本人が二級建築施工管理技士(仕上げ)の資格を持っていたため、資格証を確認しました。
内装仕上工事業の営業所技術者等として必要な資格を満たしていたため、この点については大きな問題はありませんでした。
財産的基礎については、一般建設業許可の新規申請として、500万円以上の資金調達能力があるかどうかを確認しました。
直近決算の純資産額が500万円に届かない場合でも、金融機関が発行する500万円以上の預金残高証明書により、財産的基礎を確認できる場合があります。
今回の会社様でも、金融機関から預金残高証明書を取得し、財産的基礎の要件を整理しました。
営業所については、以前の許可取得時から大きな変更はなく、建設業を営む営業所として必要な独立性や使用権限、事務机、電話、契約締結を行う体制などを確認しました。
このように、再度新規申請を行う場合には、過去に許可を持っていた事実だけでは足りません。
現在の会社体制で、建設業許可の要件を改めて満たしているかを一つずつ確認する必要があります。
第8章 決算変更届を提出していたことが経験証明にも影響する
今回の事例で重要だったのは、過去の建設業許可期間中に、決算変更届をきちんと提出していたことです。
建設業許可を受けた会社は、毎事業年度終了後、決算変更届を提出する必要があります。
決算変更届には、その事業年度に行った工事内容や財務状況を記載します。
この決算変更届を継続して提出していることで、その会社が建設業許可業者として事業を行っていたことを確認しやすくなります。
今回の会社様では、自社で建設業許可を取得していた期間について、代表取締役社長が取締役として在任していたことに加え、許可業者として継続して事業を行っていたことを整理する必要がありました。
もし、建設業許可を持っていた期間中の決算変更届が未提出だった場合、その期間を経営業務経験としてスムーズに整理できない可能性があります。
過去に許可を持っていたからといって、すべての期間が当然に経験として使えるわけではありません。
許可業者として営業していた期間、役員として在任していた期間、決算変更届の提出状況などを総合的に確認する必要があります。
今回の会社様では、平成27年の新規許可申請時から当事務所が継続して関与していたため、許可取得後の管理状況を確認しながら、再申請に向けた資料整理を進めることができました。
決算変更届は、単に毎年提出しなければならない義務書類ではありません。
将来、常勤役員等の経験を証明する場面や、更新、業種追加、再度の新規申請を行う場面で、過去の許可管理状況を確認する重要な資料になることがあります。
建設業許可を取得した後は、決算変更届をため込まず、毎年きちんと提出しておくことが大切です。
許可を維持するためだけでなく、将来の役員交代や世代交代に備える意味でも、決算変更届の継続管理は非常に重要です。
第9章 同じようなケースで注意したいこと
今回のように、家族経営の建設会社では、父親が常勤役員等を担い、息子である社長が営業所技術者等を担っているケースがあります。
この体制で建設業許可を取得すること自体は、実務上珍しいものではありません。
ただし、常勤役員等を担っている方が高齢の場合には、将来の交代を早めに考えておく必要があります。
常勤役員等が退任したり、亡くなられたりした場合、後任者がすぐに要件を満たせるとは限りません。
特に、後任候補となる社長や取締役の経営業務経験が5年に届いていない場合には、常勤役員等の変更届で許可を維持することができない可能性があります。
今回の会社様でも、代表取締役社長は二級建築施工管理技士(仕上げ)の資格を持っており、営業所技術者等の要件は満たしていました。
しかし、常勤役員等として必要な経営業務経験が5年に届いていなかったため、一旦全部廃業を行う必要がありました。
建設業許可では、資格者がいることと、常勤役員等の要件を満たしていることは別問題です。
営業所技術者等の要件を満たしていても、常勤役員等が不在になれば、許可を維持することはできません。
また、後任者の経験年数があと数か月足りない場合でも、その期間を水増しすることはできません。
経験年数は、登記事項証明書、許可番号、過去の許可書類、請求書、通帳、決算変更届などの資料に基づいて確認されます。
そのため、将来の世代交代を見据えて、後任候補者の経営業務経験がいつ5年に達するのかを、事前に確認しておくことが重要です。
また、建設業許可申請書の副本、変更届出書の控え、決算変更届の控えなどは、将来の経験証明に使うことがあります。
許可を取得した後も、これらの書類を会社で保管しておくことが大切です。
建設業許可は、取得時だけでなく、取得後の管理が非常に重要です。
常勤役員等の高齢化、役員交代、世代交代が見えている会社様は、更新時期が近づいてからではなく、早い段階で許可要件を確認しておくことをおすすめします。
まとめ
今回の事例では、東京都台東区の内装仕上工事業者様について、常勤役員等を担っていた取締役が亡くなられたことにより、一旦全部廃業を行い、その後、代表取締役社長の経営業務経験が5年に達したタイミングで、改めて建設業許可の新規申請を行いました。
建設業許可は、営業所技術者等の要件を満たしているだけでは維持できません。
常勤役員等の要件、営業所技術者等の要件、営業所要件、財産的基礎など、必要な要件を継続して満たしている必要があります。
今回の会社様では、代表取締役社長が二級建築施工管理技士(仕上げ)の資格を持っていたため、営業所技術者等の要件は満たしていました。
しかし、常勤役員等を担っていたお父様が亡くなられた時点では、社長ご自身の経営業務経験が5年に届いていませんでした。
そのため、常勤役員等の変更届によって許可を維持することはできず、一旦全部廃業を行う必要がありました。
その後、社長ご自身の経験年数が5年に達したタイミングで、常勤役員等、営業所技術者等、財産的基礎、営業所などの要件を改めて確認し、内装仕上工事業の一般建設業許可を新規申請しました。
家族経営の建設会社では、父親が常勤役員等を担い、息子である社長が営業所技術者等を担っているケースがあります。
この体制自体は珍しくありませんが、常勤役員等を担っている方が高齢の場合には、将来の交代を早めに考えておく必要があります。
後任候補者の経験年数が足りない場合、許可を維持できなくなることがあります。
また、決算変更届や変更届、過去の申請書副本などの管理状況も、将来の経験証明に影響することがあります。
建設業許可は、取得して終わりではありません。
役員構成、常勤役員等、営業所技術者等、決算変更届、更新時期を継続して管理しておくことが大切です。
東京都で建設業許可を取得している会社様で、常勤役員等の交代、役員の高齢化、世代交代、決算変更届の未提出などに不安がある場合は、早めにご相談ください。
許可が維持できる状態かどうか、後任者の経験年数が足りているか、今後どのような手続きが必要になるかを確認したうえで、実務に即してサポートいたします。









