東京都千代田区で内装仕上工事を営む個人事業主様から、法人成りと建設業許可の新規申請についてご相談をいただきました。
こちらのお客様は、高校卒業後に東京都内の建設会社へ就職し、内装仕上工事の経験を積んだ後に独立。
個人事業主として6年間、内装仕上工事を中心に営業を続けていました。
その後、二級建築施工管理技士(仕上げ)の資格を取得し、売上も安定して増えてきたことから、
「法人化とあわせて建設業許可も取得したい」
と考えるようになったそうです。
そこで今回は、個人事業から合同会社へ法人成りし、その新しい会社で東京都知事の一般建設業許可を取得する計画を立てました。
申請する業種は、内装仕上工事業を中心に、大工工事業、屋根工事業、建具工事業です。
建設業許可の取得に向けて確認したところ、
・個人事業時代の6年間の工事実績
・二級建築施工管理技士(仕上げ)の資格
・資本金500万円での合同会社設立
・建設業の営業所として使用できる事務所の確保
・法人設立後の社会保険加入
などを順番に整えていく必要がありました。
特に今回は、個人事業時代の経験を、新しく設立する法人の常勤役員等の要件としてどのように証明するかが重要なポイントでした。
また、自宅はワンルームマンションで建設業の営業所として使用するには難しい状況だったため、法人成り後に別途営業所となる物件を確保しました。
合同会社の設立、営業所の準備、社会保険への加入、個人事業時代の経験証明まで一つずつ整え、東京都へ建設業許可の新規申請を行った事例をご紹介します。
第1章 個人事業から法人成りと建設業許可取得をご相談
今回ご相談いただいたのは、東京都千代田区で内装仕上工事を営んでいる個人事業主様です。
高校卒業後、東京都内の建設会社へ就職し、内装仕上工事の実務経験を積んだ後に独立。
その後は個人事業主として6年間、内装仕上工事を中心に事業を続けていました。
仕事量も安定して増えてきたことから、今後の事業拡大を見据えて法人成りを検討するようになり、あわせて建設業許可も取得したいとのことで当事務所へお問い合わせをいただきました。
また、ご自身で二級建築施工管理技士(仕上げ)の資格を取得されていたことも、建設業許可の取得を具体的に考えるきっかけになっていました。
そこで今回は、
・個人事業から合同会社への法人成り
・新しく設立する法人での建設業許可取得
を並行して進めることになりました。
会社形態については、株式会社と合同会社の違いをご説明したうえで、今回は合同会社を設立することになりました。
建設業許可については、内装仕上工事業を中心に、大工工事業、屋根工事業、建具工事業について一般建設業許可を申請する方針です。
法人成りをしてから建設業許可を取得する場合、新しく会社を作れば自動的に許可が取れるわけではありません。
個人事業時代の経営経験を新法人の常勤役員等の要件として証明できるか、営業所技術者等の要件を満たしているか、営業所を確保できるか、財産的基礎や社会保険の加入状況に問題がないかなど、一つずつ確認していく必要があります。
今回のケースでは、個人事業時代の実績資料もしっかり残っていたため、それらを活用しながら合同会社の設立と建設業許可申請の準備を進めていきました。
第2章 自宅とは別に建設業許可用の営業所を確保
合同会社の設立と並行して、建設業許可を申請するための営業所についても確認しました。
今回のお客様は、ご自宅を会社の本店所在地とする予定でしたが、自宅はワンルームマンションでした。
建設業許可における営業所は、単に登記上の本店所在地があればよいというものではありません。
実際に建設工事の請負契約に関する業務を行う場所として、事務所としての実態があり、来客対応や契約業務を行える環境が整っている必要があります。
また、自宅の一部を営業所として使用する場合には、居住部分と営業所部分が適切に区別され、事務所としての独立性が保たれていることも重要です。
今回のご自宅では、こうした営業所要件を満たすことが難しいと判断しました。
そこで、合同会社設立後に、建設業の営業所として使用するための事務所を別途賃借していただくことになりました。
物件を確保する際には、
・建設業の営業所として使用できる契約内容になっているか
・実際に事務所として使用できるスペースがあるか
・来客や打ち合わせに対応できる環境が整っているか
・会社として継続して使用できる場所であるか
といった点を確認しました。
営業所となる物件が決まった後は、机や事務用品などを配置し、実際に建設業の営業を行える状態を整えていただきました。
建設業許可を取得する際には、常勤役員等や営業所技術者等といった人的要件だけでなく、営業所についても事前に確認しておく必要があります。
特に、法人成りに合わせて建設業許可を取得する場合には、会社設立だけを先に進めるのではなく、どこを建設業の営業所として使用するのかまで含めて計画しておくことが重要です。
今回については、自宅とは別に営業所を確保することで、合同会社設立後の建設業許可申請を進められる体制を整えることができました。
第3章 合同会社設立後に社会保険へ加入
合同会社の設立後は、建設業許可申請に向けて社会保険の加入手続も進めました。
今回のお客様は、個人事業主から法人成りするケースでしたので、法人設立後は新たに社会保険の適用事業所として手続を行う必要がありました。
従業員を雇用していない一人会社であっても、法人である以上、代表社員について健康保険・厚生年金保険への加入が必要となります。
建設業許可においても、適用事業所であるにもかかわらず社会保険へ適切に加入していない場合には、許可要件を満たすことができません。
そこで今回は、合同会社の設立登記が完了した後、社会保険労務士と連携して社会保険の加入手続を進めました。
あわせて、税務署への法人設立関係の届出については、個人事業主時代からお付き合いのある税理士へ依頼されました。
法人成りと建設業許可を同時に進める場合には、
・会社設立登記
・営業所の確保
・社会保険の加入
・税務署等への届出
・建設業許可申請の準備
と、複数の手続を並行して進める必要があります。
どれか一つだけを先に進めても、建設業許可申請に必要な状態が整っていなければ申請することはできません。
今回については、合同会社の設立後すぐに社会保険の加入手続を進め、その間に建設業許可申請に必要となる経験証明や資格関係の資料も並行して整理しました。
その結果、法人設立後の手続を止めることなく、建設業許可申請へつなげることができました。
第4章 個人事業時代の6年分の実績で常勤役員等を証明
建設業許可を取得するためには、建設業の経営業務を適正に管理できる体制を備えている必要があります。
今回のお客様は、合同会社を設立する前に、個人事業主として6年間にわたり内装仕上工事を中心とした建設業を営んでいました。
そこで、この個人事業時代の経験を、新しく設立した合同会社における常勤役員等の要件として使用できるかを確認しました。
建設業許可の申請では、単に「6年間個人事業主をしていた」という申告だけでは足りません。
その期間に実際に建設業を営んでいたことを、過去の資料によって確認できる状態にしておく必要があります。
今回については、個人事業主として営業していた期間の工事実績に関する資料を6年分確保することができました。
それらの資料を確認し、
・個人事業主として継続して事業を行っていたこと
・その期間に建設工事を請け負っていたこと
・建設業の経営に携わっていた期間が必要年数を満たしていること
を整理しました。
その結果、個人事業時代の経験をもとに、新しく設立した合同会社の常勤役員等として要件を満たすことを確認できました。
個人事業主から法人成りして建設業許可を取得する場合、法人そのものには設立直後のため経営実績がありません。
しかし、代表者が法人成り前から個人事業主として建設業を営んでいた場合には、その経験を活用できることがあります。
そのため、法人成りを検討している段階から、過去の請求書や契約書、通帳、確定申告関係の資料などを整理しておくことが重要です。
今回のお客様については、個人事業時代の6年分の実績を確認できる資料が残っていたため、合同会社設立後すぐに建設業許可申請へ進むための人的要件を整えることができました。
第5章 二級建築施工管理技士(仕上げ)で営業所技術者等の要件を確認
営業所技術者等については、お客様ご自身が二級建築施工管理技士(仕上げ)の資格を保有していました。
今回申請する業種は、内装仕上工事業を中心に、大工工事業、屋根工事業、建具工事業です。
そこで、保有している資格がそれぞれの申請業種について営業所技術者等の要件を満たすかを確認しました。
二級建築施工管理技士(仕上げ)は、内装仕上工事業をはじめ、今回申請する複数の業種について営業所技術者等となることができる資格です。
そのため、個人事業時代の実務経験を営業所技術者等の要件として改めて証明する必要はなく、資格によって技術者要件を整理することができました。
また、今回のお客様は、新しく設立した合同会社の代表社員でもあります。
同一の営業所において、それぞれの要件を満たしていれば、常勤役員等と営業所技術者等を同一人物が兼任することができます。
そのため今回は、
・個人事業時代の建設業の経営経験をもとに常勤役員等となる
・二級建築施工管理技士(仕上げ)の資格をもとに営業所技術者等となる
という形で人的要件を整えました。
法人成りをして建設業許可を取得する場合、代表者自身が建設業許可に使用できる資格を持っていると、営業所技術者等を別途採用する必要がなく、許可取得に向けた体制を組みやすくなります。
今回についても、個人事業時代の6年間の経営経験と二級建築施工管理技士(仕上げ)の資格を組み合わせることで、新しく設立した合同会社で建設業許可に必要となる人的要件を満たすことができました。
第6章 合同会社設立後に複数業種の建設業許可を新規申請
ここまでの準備で、建設業許可申請に必要となる要件を一つずつ整えることができました。
今回の合同会社では、
・個人事業時代の6年間の経営経験
・二級建築施工管理技士(仕上げ)の資格
・建設業の営業所として使用できる事務所
・法人設立後の社会保険加入
・一般建設業許可に必要となる財産的基礎
について確認し、申請できる状態を整えました。
財産的基礎については、合同会社を資本金500万円で設立しています。
新設法人の場合には、設立時の財務内容も確認したうえで申請を進める必要がありますが、今回は会社設立の段階から建設業許可取得を見据えて資本金を設定していました。
申請する業種は、主力となる内装仕上工事業に加えて、
・大工工事業
・屋根工事業
・建具工事業
の一般建設業許可です。
お客様が保有する二級建築施工管理技士(仕上げ)の資格で、これらの業種について営業所技術者等の要件を満たすことができたため、まとめて申請することになりました。
個人事業主から法人成りする場合には、会社を設立してから建設業許可について考えるのではなく、会社設立の段階から許可要件を見据えて準備しておくことが重要です。
今回についても、資本金の設定、営業所の確保、社会保険への加入、個人事業時代の経験証明などを並行して進めたことで、合同会社設立後、スムーズに建設業許可申請へ移ることができました。
必要書類をすべて整えたうえで東京都へ一般建設業許可の新規申請を行い、申請は無事に受理されました。
今回の事例は、個人事業主として積み重ねてきた経験を活かしながら法人成りし、新しい合同会社で複数業種の建設業許可を取得するための手続きを進めたケースです。
法人成りと建設業許可を同時に検討している場合には、設立する会社の内容と許可要件を最初から一体で考えることで、その後の申請を進めやすくなります。









