電気通信工事業は、インターネット通信設備や防犯カメラ設備、放送設備、光ファイバー設備など、現代社会に欠かせない通信インフラを構築する重要な工事です。近年ではオフィスや商業施設だけでなく、マンションや一般住宅においてもネットワーク設備の需要が高まっており、電気通信工事業を営む事業者も増えています。
しかし、一定規模以上の電気通信工事を請け負う場合には、建設業許可(電気通信工事業)の取得が必要となります。許可を取得するためには、常勤の役員等(経営業務の管理責任者)、営業所技術者等(専任技術者)、財産的基礎などの要件を満たさなければなりません。
また、電気通信工事業は電気工事業との違いが分かりにくく、「どちらの許可が必要なのか」「LAN工事や防犯カメラ工事はどちらに該当するのか」といったご相談も多く寄せられます。
この記事では、建設業許可における電気通信工事業の概要から、許可取得要件、営業所技術者等になれる資格、電気工事業との違い、許可取得後に必要な手続きまで、東京都で多数の建設業許可申請をサポートしている行政書士が実務に基づいて分かりやすく解説します。
第1章 建設業許可における電気通信工事業とは
建設業許可における電気通信工事業とは、有線・無線による電気通信設備や情報通信設備、放送設備などを設置する工事を行うために必要な業種区分です。
近年ではインターネット環境の整備や情報通信技術の発展に伴い、オフィスや商業施設、工場、マンションなどにおいて様々な通信設備工事が行われています。こうした工事の多くは電気通信工事業に該当し、請負金額が一定額以上となる場合には建設業許可が必要となります。
国土交通省の建設業許可事務ガイドラインでは、電気通信工事業について「有線電気通信設備、無線電気通信設備、放送機械設備、データ通信設備等の電気通信設備を設置する工事」とされています。
具体的には次のような工事が電気通信工事業に該当します。
- 電気通信線路設備工事
- 電気通信機械設置工事
- 放送機械設置工事
- 空中線設備工事
- データ通信設備工事
- 情報制御設備工事
- TV電波障害防除設備工事
また、実務上よく見られる工事としては、LAN配線工事、光ファイバー工事、防犯カメラ設備工事、Wi-Fi設備工事、電話設備工事、インターホン設備工事などがあります。
特に企業のネットワーク環境整備やセキュリティ対策の需要増加により、電気通信工事業の建設業許可取得を検討される事業者は年々増えています。
なお、電気通信工事業は電気工事業と混同されることが多い業種です。同じ現場で施工されるケースも少なくありませんが、建設業許可上は異なる業種として扱われています。そのため、自社が行う工事がどちらの業種に該当するのかを正しく判断することが重要です。
火災報知設備や非常警報設備などは、電気通信工事業ではなく消防施設工事業として整理する場合があります。
次章では、電気通信工事業と電気工事業の違いについて詳しく解説します。
第2章 電気通信工事業と電気工事業の違い
電気通信工事業の建設業許可についてご相談をいただく際に、「電気工事業との違いがよく分からない」というご質問をいただくことがあります。
どちらも電気を扱う工事であり、同じ現場で施工されることも多いため混同されやすいのですが、建設業許可上は別の業種として区分されています。
電気工事業とは、発電設備や変電設備、送配電線設備、照明設備、コンセント設備など、電気を供給・使用するための設備を設置する工事をいいます。
一方、電気通信工事業とは、電話設備やLAN設備、光ファイバー設備、防犯カメラ設備、放送設備など、情報や通信を伝達するための設備を設置する工事をいいます。
例えば、オフィスビルに防犯カメラを設置する場合を考えてみましょう。
防犯カメラ本体や録画装置、通信ネットワークの構築は電気通信工事業に該当します。一方で、防犯カメラへ電源を供給するための配線工事については電気工事業に該当する場合があります。
また、企業のネットワーク環境を整備するためのLAN配線工事やWi-Fi設備工事、サーバーラックの設置工事なども一般的には電気通信工事業として取り扱われます。
実務上は電気工事と電気通信工事が同時に行われるケースも多く、どちらの許可が必要になるのか判断が難しい場合もあります。そのような場合には、工事全体の内容や主たる工事の目的を確認したうえで判断することになります。
なお、電気通信工事業の許可を取得しているだけでは、すべての電気工事を自由に請け負い、施工できるわけではありません。電気工事を別途請け負う場合は、電気工事業の建設業許可の要否と、電気工事業法に基づく登録・届出等の要否を別々に確認します。自社施工の有無などにより取扱いが異なるため、電気工事業の建設業許可と電気工事業者登録もご覧ください。
特に防犯カメラ工事や通信設備工事を中心に事業を行っている会社では、電気通信工事業と電気工事業のどちらが必要になるのかを事前に確認しておくことが重要です。
次章では、どのような場合に電気通信工事業の建設業許可が必要になるのかについて解説します。
第3章 電気通信工事業許可が必要になるケース
建設業法では、軽微な建設工事のみを請け負う場合を除き、建設業許可を取得しなければなりません。
電気通信工事業についても同様であり、一定金額以上の工事を請け負う場合には建設業許可が必要となります。
一般的に、次のいずれかに該当する工事を請け負う場合には建設業許可が必要です。
1件の請負代金が500万円以上(税込)の工事
建築一式工事以外の専門工事で500万円以上(税込)の工事
この金額は消費税を含めて判断し、注文者から材料の支給を受ける場合には材料の市場価格・運送費も加算して確認します。正当な理由なく一つの工事を分割して請け負う場合も、契約金額の合算に注意が必要です。許可が必要な工事は、原則として請負契約を締結する前に必要な許可を取得しておかなければなりません。
電気通信工事業の場合、LAN配線工事や光ファイバー設備工事、防犯カメラ設備工事、放送設備工事などにおいて、この500万円の基準を超えるケースが少なくありません。
例えば、オフィスビル全体のネットワーク設備工事や工場の通信設備更新工事、マンションの防犯カメラ設備改修工事などでは、請負金額が500万円を超えることも多くあります。
また、元請会社からの受注条件として建設業許可の取得を求められるケースもあります。
実際には500万円未満の工事しか施工していない場合であっても、
元請会社の協力会社登録
大手企業との取引開始
公共工事への参入
金融機関や取引先からの信用力向上
といった理由から建設業許可を取得する事業者も少なくありません。
特に電気通信工事業は、企業の情報通信インフラを支える工事であるため、大規模案件や継続的な保守契約へ発展することも多く、事業拡大を見据えて早い段階で建設業許可を取得するケースもあります。
なお、電気通信工事業に該当する1件500万円未満(税込み)の軽微な建設工事のみを請け負う場合は、原則として建設業許可は不要です。ただし、元請会社や取引先が許可取得を取引条件とすることがあります。法律上の許可義務と、取引上求められる許可の有無は分けて確認しましょう。
次章では、電気通信工事業の建設業許可を取得するために必要となる要件について解説します。
第4章 電気通信工事業許可を取得するための要件
電気通信工事業の建設業許可を取得するためには、他の建設業許可と同様に一定の許可要件を満たさなければなりません。
主な確認事項は次のとおりです。
* 常勤の役員等の要件
* 営業所技術者等の要件
* 財産的基礎または金銭的信用の要件
* 営業所の要件
* 社会保険加入の要件
これらの要件を満たしていることを証明する書類を揃え、許可行政庁へ申請を行います。
4-1 常勤の役員等を配置する
建設業許可を取得するためには、建設業の経営について一定の経験を有する常勤の役員等を配置する必要があります。
常勤の役員等とは、法人であれば代表取締役や取締役など、個人事業であれば事業主本人が該当します。
具体的には、
* 建設業の役員として5年以上の経験がある
* 一定の補佐体制を整えたうえで所定の経験年数を有している
などの要件を満たす必要があります。
申請にあたっては、登記事項証明書や確定申告書、建設業許可申請書類などを用いて経験を証明していきます。
【東京都対応】常勤役員等(経営業務の管理責任者)の要件を徹底解説
4-2 営業所技術者等を配置する
電気通信工事業の許可を取得するためには、営業所ごとに営業所技術者等を配置する必要があります。
営業所技術者等とは、電気通信工事に関する専門的な知識や技術を有する者のことです。
営業所技術者等になるためには、
* 所定の国家資格を保有している
* 指定学科卒業後に一定年数の実務経験がある
* 電気通信工事業に関する10年以上の実務経験がある
といった要件のいずれかを満たさなければなりません。
近年では、電気通信工事施工管理技士や電気通信主任技術者の資格を活用して許可取得を行うケースも増えています。
4-3 財産的基礎または金銭的信用があること
一般建設業許可の場合には、次のいずれかを満たしている必要があります。
* 自己資本が500万円以上ある
* 500万円以上の資金調達能力がある
* 許可を受けて継続して営業した実績がある
新規申請の場合は、金融機関が発行する預金残高証明書を利用して要件を満たすケースが多く見られます。
また、特定建設業許可を取得する場合には、一般建設業許可よりも厳しい財務要件が求められます。
建設業許可の財産的要件とは?500万円の資金調達能力と純資産要件を行政書士が解説
4-4 営業所の要件
電気通信工事業の建設業許可を取得するためには、建設業を営むための営業所を確保している必要があります。
東京都では、営業所としての実態が確認できることが重要とされており、単に住所が存在するだけでは足りません。
具体的には、
* 事務所として使用できる権限があること
* 電話や机など業務を行うための設備があること
* 他の法人や個人と明確に区分されていること
などが求められます。
申請時には賃貸借契約書や営業所写真などを提出し、営業所の実態を確認します。
建設業許可における営業所とは?要件・判断基準を行政書士が解説(東京都基準)
4-5 社会保険加入の要件
建設業許可を取得するためには、健康保険・厚生年金保険・雇用保険について適切に加入している必要があります。
法人の場合は原則として健康保険および厚生年金保険への加入が必要となります。また、従業員を雇用している場合には雇用保険への加入も求められます。
申請時には社会保険の加入状況を確認するため、各種保険関係書類の提出を求められる場合があります。
近年は社会保険未加入事業者に対する指導が強化されているため、許可取得前に加入状況を確認しておくことが重要です。
電気通信工事業の建設業許可では、これらの要件について証明書類を準備し、許可行政庁へ申請を行います。特に営業所技術者等の実務経験証明は確認すべき事項が多いため、事前に必要書類を整理しておくことが重要です。
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第5章 電気通信工事業の営業所技術者等になれる主な資格
電気通信工事業の建設業許可を取得するためには、営業所ごとに営業所技術者等を配置しなければなりません。
営業所技術者等になる方法としては、国家資格を利用する方法、指定学科卒業後の実務経験を利用する方法、10年以上の実務経験を証明する方法があります。
特に電気通信工事業では国家資格を活用して許可を取得するケースが多く見られます。工事担任者も一定の資格区分・交付時期等の条件と必要な実務経験を満たせば、一般建設業の営業所技術者等の要件に該当する場合があります。工事担任者資格者証は「第一級アナログ通信及び第一級デジタル通信の両方」または「総合通信」など対象区分に制限があり、令和3年4月1日以降の試験合格等に関する条件もあるため、資格者証と東京都の対応表で確認が必要です。詳しくは電気通信工事業の営業所技術者等|資格・指定学科・実務経験をご覧ください。
【東京都対応】営業所技術者等の要件を徹底解説|一般建設業許可・特定建設業許可の違い
5-1 電気通信工事施工管理技士
電気通信工事施工管理技士は、電気通信工事業の営業所技術者等として認められている代表的な国家資格です。
電気通信工事施工管理技士には1級と2級があり、それぞれ一定の範囲で営業所技術者等になることができます。
近年では情報通信設備の需要拡大に伴い、電気通信工事施工管理技士を保有する技術者の重要性も高まっています。
電気通信工事業の許可取得を目指す事業者にとって、最も活用される資格の一つといえるでしょう。
5-2 技術士(電気電子部門)
技術士法に基づく技術士資格のうち、電気電子部門や総合技術監理部門(電気電子)は電気通信工事業の営業所技術者等として認められています。
技術士は高度な専門知識と実務能力を有する技術者に与えられる資格であり、建設業許可においても高く評価されています。
対象となる部門や登録状況によって要件が異なるため、申請前に確認が必要です。
5-3 電気通信主任技術者
電気通信事業法に基づく電気通信主任技術者も、一定の実務経験を満たすことで営業所技術者等となることができます。
ただし、資格を取得しただけでは足りず、資格者証の交付後、電気通信工事に関する5年以上の実務経験が必要です。資格取得前の経験年数と混同しないよう確認します。
通信設備の保守や運用に携わる事業者では、この資格を活用して建設業許可を取得するケースもあります。
5-4 指定学科卒業後の実務経験
国家資格を保有していない場合であっても、指定学科を卒業し、その後一定期間の実務経験を積むことで営業所技術者等になることができます。
指定学科の代表例としては、
- 電気工学
- 電気通信工学
などがあります。
大学や高等専門学校卒業者と高校卒業者では必要となる実務経験年数が異なります。
卒業証明書や成績証明書に加え、実務経験を証明する資料も必要となります。
5-5 10年以上の実務経験(一般建設業許可)
資格や指定学科を利用できない場合でも、電気通信工事業に関する10年以上の実務経験を証明することで営業所技術者等となることが可能です。
実務経験による申請では、工事内容が確認できる請求書、契約書、注文書、通帳などの証明資料を揃える必要があります。
特に東京都では実務経験の確認が厳格に行われるため、証明資料の収集には十分な準備期間を確保しておくことが重要です。
営業所技術者等の要件は、電気通信工事業の建設業許可申請において最も重要なポイントの一つです。申請前にどの要件で立証するのかを整理し、必要書類を早めに確認しておくことをおすすめします。
次章では、電気通信工事業許可取得後に必要となる各種手続きについて解説します。
第6章 電気通信工事業許可取得後に必要な手続き
電気通信工事業の建設業許可は、一度取得すれば終わりというものではありません。
許可取得後も毎年の事業年度終了後に行う届出や、役員・営業所の変更に関する届出など、継続的な管理が必要となります。
必要な手続きを怠ると、許可更新時に大きな負担となるだけでなく、公共工事への参加や各種申請に影響が生じる可能性もあります。
6-1 決算変更届(事業年度終了届)
建設業許可業者は、毎事業年度終了後4か月以内に決算変更届を提出しなければなりません。
決算変更届では、
* 工事経歴書
* 直前3年の施工金額
* 財務諸表
* 納税証明書
などの書類を提出します。
提出を怠った場合、建設業許可の更新申請を受け付けてもらえないため注意が必要です。
建設業許可の決算変更届(決算報告書)とは?提出期限・必要書類・出さないリスクを解説
6-2 役員や営業所に変更があった場合
許可取得後に次のような変更が生じた場合には、変更届の提出が必要となります。
* 役員の変更
* 商号変更
* 本店移転
* 営業所の新設・廃止
* 営業所技術者等の変更
* 常勤の役員等の変更
変更内容によって提出期限や必要書類が異なるため、早めに確認することが重要です。
特に営業所技術者等や常勤の役員等に関する変更は、建設業許可の維持に直結する重要な事項となります。役員変更だけでなく幅広い届出については建設業許可の変更届で確認できます。
建設業許可の役員変更とは?手続き・期限・必要書類を行政書士が解説
6-3 建設業許可の更新
建設業許可の有効期間は5年間です。
許可を継続するためには、有効期間満了前に更新申請を行う必要があります。
更新時には、過去5年分の決算変更届が適切に提出されていることが前提となります。
決算変更届の未提出がある場合には、更新申請前にまとめて対応しなければならないケースもあります。
6-4 業種追加や許可区分の変更
事業拡大に伴い、電気通信工事業以外の建設業許可を取得するケースもあります。
例えば、
* 電気工事業
* 機械器具設置工事業
* 内装仕上工事業
などを追加する場合には業種追加申請を行います。
また、下請契約金額の増加などにより、一般建設業許可から特定建設業許可への変更を検討することもあります。
まとめ
電気通信工事業は、LAN配線工事や光ファイバー工事、防犯カメラ設備工事、放送設備工事など、現代の情報通信社会を支える重要な工事を行う業種です。
請負金額が500万円以上となる工事を請け負う場合には、原則として建設業許可(電気通信工事業)が必要となります。
許可取得にあたっては、
* 常勤の役員等
* 営業所技術者等
* 財産的基礎
* 営業所の実態
* 社会保険加入状況
などの要件を満たさなければなりません。
また、電気通信工事業は電気工事業と混同されることも多いため、自社が施工する工事内容がどちらの業種に該当するのかを正しく判断することも重要です。
さらに、建設業許可取得後は決算変更届や各種変更届、更新申請などの手続きが継続的に発生します。将来的に公共工事への参入を目指す場合には、経営事項審査(経審)も視野に入れながら許可管理を行っていく必要があります。
電気通信工事業の建設業許可取得をご検討中の方や、自社で許可要件を満たしているか確認したい方は、お気軽にご相談ください。東京都の建設業許可申請に多数対応している行政書士が、許可取得から取得後の管理までサポートいたします。









