東京都北区で内装仕上工事を中心に建設業を営んでいる会社様から、一般建設業許可の新規申請についてご相談をいただきました。
こちらの会社様は、代表取締役社長と従業員2名で内装仕上工事を請け負っていましたが、あるとき元請業者から、
「建設業許可を取ってくれたら、もっと仕事を出せる」
と言われたことが、許可取得を検討するきっかけになりました。
建築一式工事以外の建設工事については、1件の請負代金が500万円未満であれば、原則として建設業許可がなくても請け負うことができます。
しかし実際の取引では、工事金額が500万円未満であっても、元請業者のコンプライアンス上の理由から、建設業許可を持っている下請業者が優先されることがあります。
そこで今回、今後さらに受注を増やしていくために、内装仕上工事業の建設業許可を取得することになりました。
会社は設立から7期目を迎えており、創業当初から内装仕上工事を継続していました。
確認を進めたところ、
・代表取締役としての建設業の経営経験
・2級建築施工管理技士(仕上げ)の資格
・500万円以上の預金残高による財産的基礎
・営業所として使用できる事務所
・社会保険、雇用保険の加入状況
について、それぞれ許可申請に向けた整理が可能でした。
一方で、直近の決算が赤字であったことや、登記上の本店所在地が社長の自宅のままになっていたことなど、申請前に整理しておくべき点もありました。
そこで当事務所では、これまでの工事実績や資格、財務状況、営業所の使用状況を一つずつ確認し、必要な準備を整えたうえで、東京都へ内装仕上工事業の一般建設業許可を新規申請しました。
第1章 元請業者から建設業許可の取得を求められた
今回ご相談いただいたのは、東京都北区で内装仕上工事を中心に建設業を営んでいる会社様です。
代表取締役社長と従業員2名で日々の工事に対応しており、会社設立当初から内装仕上工事を継続して請け負っていました。
建設業許可を取得しようと考えたきっかけは、取引先である元請業者からの一言でした。
「建設業許可を取ってくれたら、もっと仕事を出せる」
元請業者としても、コンプライアンスや下請業者の管理を考えると、建設業許可を受けている会社へ工事を発注しやすいという事情があったようです。
建築一式工事以外の建設工事については、1件の請負代金が500万円未満であれば、原則として建設業許可を受けていなくても請け負うことができます。
しかし、500万円未満の工事であれば必ず無許可業者へ発注してもらえるというわけではありません。
実際には、元請業者や発注者が独自の取引基準を設け、建設業許可を取得していることを取引条件の一つとしているケースがあります。
特に、これまで継続的に仕事を受注してきた会社が、今後さらに受注金額や取引先を増やしていこうとする段階では、建設業許可の有無が営業面に影響することがあります。
今回の会社様も、これまで500万円未満の内装仕上工事を中心に営業していましたが、元請業者から今後さらに仕事を発注したいという話があり、建設業許可の取得を具体的に検討することになりました。
そこで当事務所が会社様へ伺い、これまでの経営経験、社長が保有している資格、財務状況、営業所の状況、社会保険等の加入状況を確認し、内装仕上工事業の一般建設業許可を取得できるか一つずつ整理していきました。
第2章 創業からの実績で常勤役員等の要件を確認
建設業許可を取得するためには、建設業の経営業務を適正に管理できる体制を備えていることが必要です。
今回の会社様は、会社設立から7期目を迎えており、代表取締役社長が創業当初から会社の経営に携わっていました。
また、設立当初から継続して内装仕上工事を請け負っています。
そこで、代表取締役社長を常勤役員等として申請できるか、これまでの経営経験を確認することになりました。
建設業の経営経験を証明する際には、単に会社の登記簿上で代表取締役になっている期間だけではなく、その期間に実際に建設業を営んでいたことを確認できる資料が必要になります。
今回の会社様では、元請業者から交付された発注書や注文書は残っていませんでした。
一方で、会社から取引先へ発行した請求書と、その代金が入金されたことを確認できる通帳については、創業当初からきちんとファイリングされていました。
そこで、過去の請求書を一つずつ確認し、
・どのような工事を請け負っていたのか
・内装仕上工事に該当する内容であるか
・請求書に対応する入金が通帳で確認できるか
といった点を整理しました。
その結果、代表取締役社長について、建設業を経営していた期間を6年分確認することができました。
建設業許可の申請では、過去の経験があることだけでは足りず、その経験を申請先に説明できる資料が残っているかが重要になります。
今回の会社様のように、発注書や契約書が残っていなくても、請求書や通帳などの資料を組み合わせることで、過去に建設業を営んでいたことを確認できる場合があります。
長期間にわたって工事を続けていても、過去の請求書や入金資料が残っていなければ、許可申請の際に経営経験の証明が難しくなることがあります。
今回については、創業当初からの資料がしっかり保存されていたことが、建設業許可の申請を進めるうえで大きなポイントとなりました。
第3章 2級建築施工管理技士(仕上げ)で営業所技術者等の要件を確認
内装仕上工事業の建設業許可を取得するためには、その営業所に内装仕上工事について一定の資格や実務経験を有する営業所技術者等を置く必要があります。 内装仕上工事業の営業所技術者等の資格要件も参考になります。
今回の会社様では、代表取締役社長が2級建築施工管理技士(仕上げ)の資格を保有していました。
そのため、内装仕上工事業について営業所技術者等の要件を満たすことができました。
営業所技術者等の要件については、一定の国家資格を持っている場合には、長期間の実務経験を一から証明する必要がありません。
実務経験で要件を満たそうとする場合には、過去の工事内容や在籍期間などについて資料をそろえる必要がありますが、今回のように許可業種に対応した資格を保有している場合には、資格証明書を基に要件を整理することができます。
また、今回の会社様では、代表取締役社長が常勤役員等の要件を満たすだけでなく、営業所技術者等の要件も満たしていました。
同一の営業所で双方の要件を満たしている場合には、常勤役員等と営業所技術者等を同一人物が兼ねることができます。
そのため、今回の申請では社長自身が、
・常勤役員等
・内装仕上工事業の営業所技術者等
の両方を担当する形で申請を進めることができました。
従業員を別途営業所技術者等として配置する必要がなかったことも、今回の許可申請をスムーズに進められたポイントの一つです。
建設業許可を検討する際には、社長や従業員がどのような資格を持っているかを最初に確認することが重要です。
本人が「建設業許可に使える資格だとは思っていなかった」というケースもありますので、保有資格を一度整理してみると、実務経験を証明しなくても営業所技術者等の要件を満たせることがあります。
第4章 赤字決算でも500万円以上の預金残高で財産的基礎を確認
一般建設業許可の新規申請では、財産的基礎の要件も確認する必要があります。
今回の会社様について直近の決算書を確認したところ、赤字決算となっており、決算書上の純資産額だけでは500万円以上の要件を満たしていませんでした。
しかし、赤字決算だからといって、それだけで一般建設業許可を取得できないわけではありません。 赤字決算時の財産的要件と500万円の確認方法も参考になります。
一般建設業許可では、500万円以上の自己資本が確認できない場合でも、500万円以上の資金を調達できる能力があることを証明する方法があります。
今回の会社様では、金融機関の預金残高証明書を利用することにしました。
申請に向けて資金の状況を確認し、預金残高が500万円以上となっているタイミングで、金融機関から残高証明書を取得していただきました。
この残高証明書によって、一般建設業許可に必要となる財産的基礎を確認することができました。
ここで注意したいのが、残高証明書を取得する時期です。
東京都の建設業許可申請では、残高証明書は証明日から一定期間内のものを使用する必要があります。
そのため、許可申請の準備が整うかなり前の段階で取得してしまうと、実際に申請する頃には使えなくなってしまうことがあります。
今回も、常勤役員等や営業所技術者等の確認、営業所の準備など他の要件を整理したうえで、申請時期から逆算して残高証明書を取得しました。
建設業許可を検討している会社様から、
「決算が赤字なので建設業許可は取れないでしょうか」
というご相談をいただくことがあります。
しかし、一般建設業許可の場合には、決算書上の純資産額だけで判断するわけではありません。
今回のように、500万円以上の預金残高を証明することで財産的基礎の要件を満たせる場合もあります。
赤字決算だからと最初から諦めるのではなく、現在の決算内容や預金状況を確認したうえで、利用できる方法を検討することが重要です。
第5章 営業所を確認し、本店所在地の変更も整理
建設業許可を取得するためには、実際に建設業の営業を行う営業所についても要件を満たしている必要があります。
今回の会社様については、申請前に営業所へ伺い、事務所の使用状況を確認しました。
営業所には、
・業務を行うためのデスク
・電話
・各種書類を保管できる設備
・来客や打ち合わせに対応できるスペース
などがあり、建設業の営業所として使用している実態を確認することができました。
また、建設業許可申請に必要となる営業所の写真も、この際に撮影しました。
一方で、会社の履歴事項全部証明書を確認すると、登記上の本店所在地は会社設立当初から社長のご自宅となっていました。
実際に建設業を営んでいる営業所と、登記上の本店所在地が異なっていたわけです。
建設業許可では、登記上の本店と実際の営業所が必ず同じ場所でなければならないわけではありません。
そのため、営業所について使用権原を確認できる賃貸借契約書などを準備すれば、そのままの状態で申請を進めることも可能でした。
ただ、今後の会社運営について確認したところ、実際に使用している営業所へ本店所在地を移したいとのご希望がありました。
そこで、建設業許可の申請にあわせて、本店移転の登記も進めることになりました。
会社の本店移転登記については、当事務所と連携している司法書士へ依頼し、登記手続きを行いました。
建設業許可の申請では、許可要件だけを確認すればよいとは限りません。
登記上の本店所在地と実際の営業所が異なっている場合や、賃貸借契約の内容が営業所として使用できるものになっているかなど、会社の現在の状況を整理したうえで申請方法を決める必要があります。
今回の会社様については、営業所そのものは建設業許可の要件を満たしていたため、本店所在地についても今後の実態に合わせて整理し、そのうえで新規申請を進めることができました。
第6章 内装仕上工事業の一般建設業許可を新規申請
ここまでの確認で、建設業許可に必要となる要件を一つずつ整理することができました。
代表取締役社長については、創業当初からの請求書や通帳を確認することで、建設業の経営経験を証明できる状態になりました。
営業所技術者等については、社長が保有している2級建築施工管理技士(仕上げ)の資格を使用。
財産的基礎については、500万円以上の預金残高証明書を準備しました。
営業所についても、実際に会社へ伺って使用状況を確認し、必要な写真撮影を行いました。
また、従業員2名を雇用している会社でしたが、社会保険および雇用保険についても加入状況に問題はありませんでした。
さらに、登記上の本店所在地については、社長のご自宅から実際に使用している営業所へ変更することになったため、司法書士と連携して本店移転登記も済ませました。
こうして申請に必要な準備がすべて整ったところで、東京都へ内装仕上工事業の一般建設業許可を新規申請しました。
窓口での審査も順調に進み、申請は無事に受理されました。
今回の会社様は、これまでも内装仕上工事を継続して請け負っていましたが、元請業者から建設業許可の取得を求められたことをきっかけに、新規申請へ進むことになりました。
建設業許可を取得する理由は、500万円以上の工事を請け負うためだけではありません。
今回のように、
・元請業者から許可取得を求められた
・今後さらに受注を増やしたい
・取引先からの信用を高めたい
・コンプライアンス上、許可業者として取引したい
といった理由から、建設業許可を取得する会社もあります。
特に、すでに一定期間にわたって建設業を営んでいる会社であれば、これまでの経営経験や保有資格、決算内容、営業所の状況を確認することで、許可取得の見通しを立てられる場合があります。
今回についても、それぞれの要件を個別に確認し、必要な部分を整えたうえで申請することで、内装仕上工事業の一般建設業許可新規申請まで進めることができました。









