東京都墨田区の会社様から、電気通信工事業の建設業許可を取得したいとのご相談をいただきました。
この会社様は、音響機器やデータ通信機器などの設置工事を行うために設立されたばかりの法人で、会社設立直後から建設業許可の取得に向けて準備を進めていました。
代表取締役ご本人は、以前勤務していた建設業許可会社で取締役を6年以上務めており、電気通信主任技術者の資格も保有していました。
そのため、今回の申請では、
代表取締役の過去の役員経験を使って常勤役員等の要件を満たせるか
電気通信主任技術者の資格と実務経験で営業所技術者等の要件を満たせるか
という2点が大きな確認ポイントとなりました。
常勤役員等については、前職会社の建設業許可の保有状況と履歴事項全部証明書などを確認し、約6年4か月の建設業に関する経営経験を証明することができました。
また、営業所技術者等については、電気通信主任技術者の資格に加えて、資格取得後5年以上の電気通信工事に関する実務経験を証明する必要がありました。
そこで、前職の建設会社から実務経験を証明してもらい、当時の在籍状況についても年金記録などを確認しながら申請準備を進めました。
今回は、新設法人でありながら、代表取締役の過去の役員経験と電気通信主任技術者としての実務経験を活用し、電気通信工事業の一般建設業許可を取得した事例です。
第1章 前職会社での6年4か月の役員経験を確認
まず確認したのは、常勤役員等の要件です。
今回の会社様では、代表取締役ご本人が唯一の取締役でした。
新設法人のため、現在の会社で5年以上の経営経験を積んでいるわけではありません。
そこで確認したのが、代表取締役の前職での役員経験です。
代表取締役は、以前勤務していた建設業許可会社で6年以上にわたり取締役を務めていました。
この経験を常勤役員等の要件として活用できるか確認するため、
前職会社の建設業許可番号
履歴事項全部証明書
閉鎖事項全部証明書
などを確認していきました。
前職会社の建設業許可通知書のコピーは手元にありませんでしたが、許可番号は把握できていました。
そこで東京都へ許可保有期間などを確認し、登記事項証明書に記載された取締役の就任日・退任日と照らし合わせて整理しました。
その結果、代表取締役の建設業に関する役員経験は約6年4か月あることを確認できました。
新設法人であっても、代表者が以前の会社で建設業に関する経営経験を積んでいる場合は、その過去の経験を使って常勤役員等の要件を満たせることがあります。
ただし、その場合は単に「以前役員だった」というだけでは足りず、当時の会社が建設業を営んでいたことと、本人の役員在任期間を資料で確認できることが重要です。
第2章 電気通信主任技術者と5年以上の実務経験で営業所技術者等を確認
次に確認したのが、電気通信工事業の営業所技術者等の要件です。
今回の会社様では、代表取締役ご本人が電気通信主任技術者の資格を保有していました。
ただし、電気通信主任技術者については、資格を持っているだけで電気通信工事業の営業所技術者等になれるわけではありません。
資格取得後に、電気通信工事について5年以上の実務経験を有していることが必要です。
そこで、前職の建設業許可会社での工事経験を確認し、実務経験証明書を作成してもらうことになりました。
あわせて、その実務経験期間中に前職会社へ在籍していたことを確認するため、年金記録照会回答票などの資料も確認しました。
今回の会社様では、代表取締役が資格取得後も継続して電気通信工事に携わっており、必要となる5年以上の実務経験を証明できる見込みが立ちました。
そのため、
電気通信主任技術者の資格
資格取得後5年以上の実務経験
その期間の在籍状況
をそれぞれ資料で確認し、営業所技術者等の要件を整えていきました。
電気通信工事業では、保有資格によっては資格証だけで申請できず、一定期間の実務経験まで求められる場合があります。
今回のようなケースでは、資格を取得した時期と、その後どの会社でどの工事に携わっていたのかを早い段階で確認しておくことが重要です。
第3章 社会保険の加入状況を確認
続いて、社会保険の加入状況を確認しました。
今回の会社様では、複数名の従業員を雇用しており、健康保険・厚生年金保険・雇用保険について、それぞれ必要な加入手続きが行われていました。
そのため、社会保険関係については特に大きな問題はありませんでした。
また、今回の申請では、代表取締役ご本人が常勤役員等と営業所技術者等の両方を担う予定です。
そのため、資格や過去の経験だけでなく、現在の会社に常勤していることも確認しながら申請準備を進めました。
建設業許可では、常勤役員等や営業所技術者等について、必要な経験や資格を満たしていても、現在の会社に常勤していることが確認できなければ申請を進めることはできません。
新設法人の場合は、設立直後から社会保険関係の手続きを適切に整え、役員や従業員の常勤性を確認できる状態にしておくことが重要です。
今回の会社様は、社会保険への加入状況も整っていたため、この点についてもスムーズに申請準備を進めることができました。
第4章 新設法人の財産的基礎を確認
次に確認したのが、一般建設業許可の財産的基礎です。
今回の会社様は設立したばかりで、まだ最初の事業年度を終えていませんでした。
そのため、直近の決算書ではなく、設立時の財務状況をもとに財産的基礎を確認することになります。
今回の会社様は、設立時の資本金が500万円を上回っていました。
そのため、一般建設業許可で求められる財産的基礎については、設立時点で要件を満たしていることを確認できました。
新設法人の場合は、既存法人のように直近決算の純資産額で確認することができないため、設立時の資本金や開始貸借対照表の内容が重要になります。
今回のように、会社設立の段階から建設業許可の取得を見据えて資本金を設定しておくと、その後の申請準備も進めやすくなります。
今回は、常勤役員等と営業所技術者等の要件に加え、財産的基礎についても設立時点で問題なく整っていました。
第5章 本店とは別に建設業の営業所を確保
続いて確認したのが、建設業許可上の営業所です。
今回の会社様では、登記上の本店所在地は代表取締役の自宅でしたが、実際に建設業を行う営業所は別の場所に設けていました。
そのため、営業所として使用している物件について、賃貸借契約書を確認し、会社がその場所を事務所として使用できる権原があることを確認しました。
また、営業所内には、
事務机
複合機
書類を保管するスペース
打ち合わせスペース
などが整っており、実際に見積りや契約などの建設業務を行うことができる環境になっていました。
建設業許可では、登記上の本店と建設業の営業所が必ずしも同じ場所である必要はありません。
ただし、本店とは別の場所を営業所として使用する場合は、その場所に実際の営業実態があることや、適法に使用できる権原があることを確認する必要があります。
今回の会社様は、新設法人でありながら、会社設立の段階から建設業を行うための営業所を別途確保していたため、営業所要件についても問題なく申請準備を進めることができました。
第6章 東京都へ電気通信工事業の新規申請
ここまでの確認で、
常勤役員等
営業所技術者等
社会保険
財産的基礎
営業所
の各要件を満たしていることが確認できました。
今回の会社様は設立したばかりの新設法人でしたが、代表取締役が前職の建設業許可会社で6年以上の役員経験を有していたため、その経験を常勤役員等の要件として活用することができました。
また、営業所技術者等についても、代表取締役が保有する電気通信主任技術者の資格に加え、資格取得後5年以上の電気通信工事に関する実務経験を証明することで要件を整えました。
さらに、
設立時の財産的基礎
社会保険への加入
本店とは別に確保した営業所の実態
についても問題がないことを確認し、必要書類を揃えて東京都へ電気通信工事業の一般建設業許可を新規申請しました。
申請書類は問題なく受理され、無事に許可取得へ進むことができました。
新設法人であっても、代表者が前職で積んだ経営経験や技術上の実務経験を適切に証明できれば、設立直後から建設業許可を取得できるケースがあります。
ただし、過去の経験を活用する場合は、当時の会社の建設業許可状況、役員在任期間、実務経験期間、在籍状況などを資料で裏付ける必要があります。
今回の案件では、代表取締役の過去の経歴を一つずつ確認し、それぞれの要件に結びつけることで、電気通信工事業の新規許可取得につなげることができました。









