建設業許可についてご相談を受けていると、「資格者がいるので建設業許可は取れますよね」と言われることがあります。
たしかに、建設業許可では営業所技術者の要件を満たすために、国家資格や技能士などの資格が重要になる場面があります。
しかし、建設業許可は資格者がいれば取得できるというものではありません。
建設業許可では、営業所技術者の要件とは別に、常勤役員等の要件も満たす必要があります。
例えば、一級技能士などの資格を持っている人がいる場合、その資格によって営業所技術者の要件を満たせることがあります。
しかし、その人に建設業の経営業務について必要な経験がない場合、常勤役員等の要件を満たすことはできません。
つまり、技術者としての資格があることと、建設業の経営経験があることは別の問題です。
特に、先代社長が死亡した場合や、世代交代の途中で建設業許可を維持しようとする場合には、この違いが大きな問題になることがあります。
後任の社長が一級技能士などの資格を持っていても、取締役としての経験や建設業の経営業務経験が不足している場合、建設業許可を維持できないケースがあります。
この記事では、資格者がいても建設業許可を取得・維持できない場合がある理由、常勤役員等と営業所技術者の違い、経験が足りない場合の対応方法について解説します。
目次
第1章 建設業許可は資格者がいれば取れるわけではない
建設業許可についてご相談を受ける際、「資格を持っている人がいるので、建設業許可は取れますよね」と言われることがあります。
たしかに、建設業許可を取得するうえで、資格者の存在はとても重要です。
営業所技術者の要件を満たすためには、施工管理技士、建築士、技能士、電気工事士などの資格が使える場合があります。
そのため、資格者がいることは建設業許可申請において大きな強みになります。
しかし、建設業許可は資格者がいれば必ず取得できるというものではありません。
建設業許可には、営業所技術者の要件だけでなく、常勤役員等の要件、財産要件、営業所要件、社会保険の加入状況など、複数の要件があります。
その中でも特に誤解されやすいのが、営業所技術者の要件と常勤役員等の要件です。
資格者がいることで営業所技術者の要件を満たせる場合でも、その人が常勤役員等の要件まで満たしているとは限りません。
営業所技術者は、工事についての技術的な要件です。
一方で、常勤役員等は、建設業の経営業務について一定の経験があるかどうかを見る要件です。
つまり、技術者として優れた資格を持っていることと、建設業の経営経験があることは別の問題です。
例えば、一級技能士の資格を持っている人がいる場合、その資格によって営業所技術者の要件を満たせることがあります。
しかし、その人に取締役としての経験や建設業の経営業務経験が不足している場合、常勤役員等の要件を満たすことはできません。
この場合、「資格者はいるのに建設業許可が取れない」という状況が起こります。
特に、先代社長が常勤役員等を務めていた会社で、後任者が資格は持っているものの経営経験が不足している場合には注意が必要です。
建設業許可を取得・維持するためには、資格者がいるかどうかだけでなく、常勤役員等の要件を満たす人がいるかを必ず確認する必要があります。
次に、営業所技術者と常勤役員等がどのように違うのかを整理します。
第2章 営業所技術者と常勤役員等は別の要件
建設業許可では、営業所技術者と常勤役員等という2つの重要な要件があります。
どちらも建設業許可を取得・維持するために必要な要件ですが、確認される内容はまったく異なります。
営業所技術者は、工事に関する技術的な要件です。
許可を受けようとする業種について、一定の資格や実務経験を持つ人を営業所に配置する必要があります。
例えば、施工管理技士、建築士、技能士、電気工事士などの資格によって、営業所技術者の要件を満たせる場合があります。
一方で、常勤役員等は、建設業の経営業務に関する要件です。
建設業を営む会社の役員等として、一定期間、経営業務に関与してきた経験があるかどうかを確認されます。
つまり、営業所技術者は「技術面の責任者」としての要件であり、常勤役員等は「建設業の経営経験者」としての要件です。
この2つは似ているように見えるかもしれませんが、建設業許可上は別々に確認されます。
そのため、営業所技術者の要件を満たす資格者がいても、常勤役員等の要件を満たす人がいなければ、建設業許可を取得することはできません。
反対に、常勤役員等の要件を満たす役員がいても、営業所技術者の要件を満たす人がいなければ、許可を取得することはできません。
建設業許可では、この両方を満たす必要があります。
特に家族経営の建設業者では、先代社長が常勤役員等を務め、後任者が現場を担当しているケースがあります。
この場合、後任者が一級技能士などの資格を持っていて営業所技術者の要件を満たせるとしても、取締役としての経験や建設業の経営業務経験が不足していれば、常勤役員等の要件を満たせないことがあります。
このようなケースでは、「資格者がいるから大丈夫」と考えていると、実際には建設業許可を維持できない可能性があります。
建設業許可を取得・維持するためには、資格者の有無だけでなく、常勤役員等の要件を満たす人がいるかを分けて確認することが重要です。
次に、一級技能士などの資格が営業所技術者の要件としてどのように扱われるのかを解説します。
第3章 一級技能士は営業所技術者の要件になる場合がある
建設業許可では、許可を受けようとする業種ごとに営業所技術者を配置する必要があります。
営業所技術者になるためには、その業種に対応する国家資格を持っていること、または一定期間の実務経験があることなどが求められます。
一級技能士の資格は、業種によっては営業所技術者の要件として認められる場合があります。
例えば、左官工事業であれば、一級左官技能士の資格を持っている人は、営業所技術者の要件を満たせる可能性があります。
そのため、後任の社長や取締役が一級技能士の資格を持っている場合、営業所技術者の要件については比較的確認しやすいことがあります。
資格証を確認し、許可を受けようとする業種に対応しているかを確認することで、営業所技術者として配置できるかを判断します。
ただし、ここで注意が必要です。
一級技能士などの資格は、あくまで営業所技術者の要件を確認するためのものです。
その資格を持っているからといって、常勤役員等の要件まで満たせるわけではありません。
営業所技術者は、工事についての技術的な資格や経験を見る要件です。
一方で、常勤役員等は、建設業の経営業務について一定の経験があるかどうかを見る要件です。
例えば、現社長が一級左官技能士を持っている場合、左官工事業の営業所技術者としては要件を満たせる可能性があります。
しかし、現社長が取締役に就任してからの期間が短く、建設業の経営業務経験が不足している場合には、常勤役員等の要件を満たすことはできません。
この場合、営業所技術者の要件は満たせても、常勤役員等の要件が不足するため、建設業許可を取得・維持できないことがあります。
「資格を持っているから建設業許可は大丈夫」と考えてしまうと、この点を見落としてしまう可能性があります。
建設業許可では、資格者がいるかどうかだけでなく、その人がどの要件を満たすのかを整理することが重要です。
一級技能士などの資格は営業所技術者の要件には有効な場合がありますが、常勤役員等の経営経験を補うものではありません。
次に、常勤役員等に求められる建設業の経営業務経験について解説します。
営業所技術者等の要件を徹底解説|一般建設業許可・特定建設業許可の違い
第4章 常勤役員等には建設業の経営業務経験が必要
建設業許可を取得・維持するためには、営業所技術者の要件だけでなく、常勤役員等の要件も満たす必要があります。
常勤役員等とは、建設業に関する経営業務について一定の経験を有する役員等のことです。
会社の場合は、取締役などの役員として建設業の経営業務に関与してきた経験が重要になります。
ここで確認されるのは、工事の技術的な経験ではなく、建設業を経営してきた経験です。
そのため、施工管理技士や技能士などの資格を持っていることだけでは、常勤役員等の要件を満たすことはできません。
例えば、一級左官技能士の資格を持っている人がいたとしても、その資格は左官工事業の営業所技術者の要件として使える可能性があるものです。
一方で、常勤役員等の要件では、建設業を営む会社の役員として経営業務に関与してきた期間や内容が確認されます。
この2つはまったく別の要件です。
そのため、後任の社長が資格を持っていて現場経験も豊富であったとしても、取締役としての経験や建設業の経営業務経験が不足している場合には、常勤役員等として認められないことがあります。
特に、先代社長が長年代表取締役として建設業許可を維持していた会社では、後任者が現場を中心に担当していたものの、取締役に就任した時期が比較的最近であるケースがあります。
このような場合、後任者が技術者としては十分な資格や経験を持っていても、常勤役員等として必要な経営経験の期間を満たしていないことがあります。
建設業許可では、営業所技術者と常勤役員等の両方が必要です。
どちらか一方だけを満たしていても、許可を取得・維持することはできません。
常勤役員等の要件を確認する際には、現在の役員がいつから取締役に就任しているのか、建設業の経営業務にどのように関与してきたのか、過去の登記事項証明書や許可申請書類、変更届出書などをもとに確認することになります。
また、過去に他社の建設業許可業者で取締役として在任していた期間がある場合には、その期間を経験として使えるかどうかも検討します。
ただし、経験年数は実際の事実に基づいて判断されるため、不足している期間を水増しすることはできません。
常勤役員等の経験が足りない場合には、必要な期間を満たすまで待つか、要件を満たす人を新たに取締役として迎えるかを検討する必要があります。
次に、先代社長の死亡や世代交代の場面で、この常勤役員等の要件がどのように問題になるのかを解説します。
第5章 社長死亡や世代交代で問題になるケース
建設業許可を持っている会社では、先代社長が長年にわたり常勤役員等として許可を維持しているケースがあります。
家族経営の会社では、先代社長が代表取締役として経営全般を担当し、後任者である息子さんや親族が現場を担当していることも少なくありません。
このような会社で先代社長が死亡した場合、問題になるのは代表者が亡くなったことだけではありません。
先代社長が常勤役員等として建設業許可の要件を満たしていた場合、その人が亡くなることで常勤役員等が不在になる可能性があります。
また、先代社長が営業所技術者も兼務していた場合には、常勤役員等と営業所技術者の両方が同時に不在になることもあります。
ただし、後任者が一級技能士などの資格を持っている場合には、営業所技術者の要件については満たせる可能性があります。
例えば、後任の社長が一級左官技能士を持っている場合、左官工事業の営業所技術者としては要件を満たせる可能性があります。
しかし、営業所技術者の要件を満たせたとしても、それだけで建設業許可を維持できるわけではありません。
後任の社長が取締役に就任してからの期間が短く、建設業の経営業務経験が不足している場合には、常勤役員等の要件を満たせないことがあります。
この場合、「資格者はいるのに建設業許可を維持できない」という状況になります。
特に注意が必要なのは、後任者を取締役に入れる時期が遅かったケースです。
現場では長年働いていたとしても、取締役として建設業の経営業務に関与していた期間が不足している場合、常勤役員等の経験として十分に認められないことがあります。
そのため、先代社長が元気なうちから、後任者を取締役に入れて経営業務の経験を積ませておくことが重要です。
建設業許可では、現場経験や資格だけでなく、経営経験も重要な要件になります。
世代交代を考えている会社では、後任者が営業所技術者の要件を満たせるかだけでなく、常勤役員等として必要な経験をいつ満たすのかを確認しておく必要があります。
次に、常勤役員等の経験が足りない場合にどのような選択肢があるのかを解説します。
常勤の役員等(旧経営業務の管理責任者)が死亡し建設業許可(内装仕上げ工事)を全部廃業~再取得するまで
第6章 経験が足りない場合の選択肢
後任の社長や取締役に常勤役員等として必要な経験が足りない場合、建設業許可を維持したり、新たに取得したりすることは難しくなります。
営業所技術者の要件を満たす資格者がいる場合でも、常勤役員等の要件を満たす人がいなければ、建設業許可の要件はそろいません。
このような場合、まず考えられるのは、後任者が常勤役員等として必要な経験を満たすまで待つ方法です。
例えば、後任の社長が取締役に就任してからの期間がまだ5年に達していない場合には、5年を満たす時期まで経験を積み上げることになります。
建設業の経営業務経験は、実際の在任期間や関与状況に基づいて判断されます。
そのため、足りない期間を水増しすることはできません。
あと数か月で要件を満たす場合であっても、その期間が経過するまでは常勤役員等として申請することはできません。
次に考えられるのが、常勤役員等の要件を満たす人を新たに取締役として迎える方法です。
すでに建設業の経営業務経験を有する人を取締役として迎え、その人を常勤役員等として申請できる場合には、後任者の経験不足を補える可能性があります。
ただし、形式的に取締役へ就任させるだけでは足りません。
その人が申請会社で常勤し、建設業の経営業務に関与する実態が必要です。
また、過去にどの会社で、どの期間、どのように建設業の経営業務に関与していたのかを説明できる資料も必要になります。
過去に建設業許可業者の役員として認められていた人であれば、許可申請書類や変更届出書の副本などが経験証明に役立つことがあります。
一方で、要件を満たす人を迎えることが難しく、後任者の経験も不足している場合には、一旦建設業許可について廃業届を提出し、要件を満たした後に新規許可申請を行うことを検討することになります。
この場合、許可がない期間は、原則として500万円以上の建設工事を請け負うことができません。
そのため、現在進行中の工事や今後の受注予定を確認し、取引先への説明や受注管理も慎重に行う必要があります。
常勤役員等の経験が不足している場合の選択肢は、大きく分けると次の3つです。
・後任者が必要な経験年数を満たすまで待つ
・要件を満たす人を新たに取締役として迎える
・一旦廃業し、要件を満たした後に新規許可申請を行う
どの方法を選ぶべきかは、会社の状況によって異なります。
後任者がいつ要件を満たすのか、営業所技術者の要件は満たせるのか、許可がない期間に受注へどのような影響が出るのかを整理したうえで判断する必要があります。
建設業許可では、資格者がいるかどうかだけでなく、常勤役員等としての経験を満たす人がいるかを早めに確認しておくことが重要です。
次に、要件を満たす人を新たに取締役として迎える場合の注意点について解説します。
第7章 要件を満たす人を取締役に迎える場合の注意点
常勤役員等の経験が不足している場合、要件を満たす人を新たに取締役として迎える方法があります。
すでに建設業の経営業務経験を有する人を取締役として迎え、その人を常勤役員等として申請できれば、後任者の経験不足を補える可能性があります。
ただし、取締役に就任してもらえば、それだけで常勤役員等として認められるわけではありません。
建設業許可では、その人が申請会社で常勤していることが必要です。
名前だけ取締役に入れるような形では認められません。
常勤役員等となる人は、申請会社の営業日や勤務時間に継続して勤務し、建設業の経営業務に関与している実態が必要です。
そのため、他社で常勤している人や、実際には申請会社の経営に関与していない人を形式的に取締役へ迎えるだけでは、要件を満たすことはできません。
また、その人が過去に建設業の経営業務経験を有していることも確認されます。
過去に建設業許可業者で取締役として在任していた場合には、その会社の建設業許可申請書類、変更届出書、登記事項証明書などが経験証明に役立つことがあります。
一方で、建設業許可を持っていない会社での経験を使う場合には、実際に建設業を営んでいたことや、経営業務に関与していたことを説明する資料が必要になります。
この場合、請負契約書、注文書、請求書、通帳、確定申告書、決算書などを確認しながら、建設業の経営業務経験を証明できるかを検討します。
要件を満たす人を取締役として迎える場合は、次の点を確認しておくことが重要です。
・申請会社で常勤できるか
・建設業の経営業務経験を証明できるか
・過去の経験年数が要件を満たしているか
・他社で常勤していないか
・取締役として実際に経営業務へ関与する予定があるか
特に注意したいのは、親族や知人を形式的に取締役へ入れるケースです。
建設業許可の要件を満たすためだけに名義を借りるような形では、常勤役員等として認められません。
また、将来的にその人が退任した場合には、再び常勤役員等が不在となる可能性があります。
そのため、要件を満たす人を取締役に迎える場合でも、一時的な対応として考えるのではなく、会社の経営体制として継続できるかを確認する必要があります。
後任者の経験があと少しで足りる場合には、要件を満たす人を外部から迎えるよりも、必要な経験年数を満たすまで待つ方が現実的な場合もあります。
一方で、許可がない期間が長くなると受注に大きな影響が出る場合には、要件を満たす人を常勤役員等として迎える選択肢を検討することになります。
どちらを選ぶべきかは、後任者の経験年数、会社の受注状況、許可がない期間の影響、迎える人の常勤性や経験証明の可否を総合的に見て判断することが大切です。
建設業許可を安定して維持するためには、常勤役員等の要件を満たす人を一人だけに依存しない体制を作っておくことも重要です。
次に、本記事の内容をまとめます。
まとめ
建設業許可は、資格者がいれば取得・維持できるというものではありません。
建設業許可では、営業所技術者の要件と常勤役員等の要件を分けて確認する必要があります。
一級技能士などの資格を持っている人がいる場合、その資格によって営業所技術者の要件を満たせることがあります。
例えば、一級左官技能士であれば、左官工事業の営業所技術者として認められる可能性があります。
しかし、営業所技術者の要件を満たせることと、常勤役員等の要件を満たせることは別の問題です。
常勤役員等には、建設業の経営業務について一定の経験が求められます。
そのため、後任の社長や取締役が資格を持っていても、取締役としての経験や建設業の経営業務経験が不足している場合には、常勤役員等の要件を満たせないことがあります。
特に、先代社長が死亡した場合や、世代交代の途中で建設業許可を維持しようとする場合には注意が必要です。
先代社長が常勤役員等として許可を維持していた会社では、後任者が営業所技術者の資格を持っていても、常勤役員等の経験が不足しているために建設業許可を維持できないケースがあります。
このような場合には、後任者が必要な経験年数を満たすまで待つ方法や、要件を満たす人を新たに取締役として迎える方法を検討することになります。
ただし、要件を満たす人を取締役として迎える場合でも、形式的に名前だけを入れればよいわけではありません。
申請会社で常勤し、建設業の経営業務に実際に関与することが必要です。
また、過去の経営業務経験を証明できる資料も確認しなければなりません。
建設業許可を安定して維持するためには、資格者の有無だけで判断するのではなく、常勤役員等と営業所技術者の両方について、誰がどの要件を満たしているのかを整理しておくことが重要です。
世代交代を予定している会社や、先代社長が常勤役員等を務めている会社では、後任者がいつ常勤役員等の要件を満たすのか、営業所技術者の要件は誰で満たすのかを早めに確認しておくことをおすすめします。
当事務所では、東京都の建設業許可申請、常勤役員等の要件確認、営業所技術者の確認、世代交代に伴う許可維持のご相談に対応しております。
資格者はいるものの常勤役員等の経験に不安がある会社様や、先代社長から後任者への引継ぎで建設業許可を維持できるか確認したい会社様は、お気軽にご相談ください。









