建設業許可の実務では、「営業所技術者等」と「主任技術者・監理技術者」の違いが分かりにくく、さらに特定建設業の5,000万円基準、主任技術者・監理技術者の現場専任、営業所技術者等の現場兼務まで加わると、制度全体がかなり複雑になります。
特に注意が必要なのが、金額基準ごとに「何を判断するための基準なのか」が異なる点です。
たとえば、特定建設業許可や監理技術者の配置を判断する5,000万円基準と、主任技術者・監理技術者の現場専任を判断する4,500万円基準は、まったく別の制度です。
また、近年の法改正により、一定の要件を満たす場合には、専任が必要な工事でも主任技術者・監理技術者の兼務が認められるほか、営業所技術者等が工事現場の技術者を兼務できるケースもあります。
そこでこの記事では、
・営業所技術者等と主任技術者・監理技術者の違い
・特定建設業の5,000万円基準
・主任技術者・監理技術者の現場専任
・営業所技術者等が工事現場を兼務できる場合
について、実務上の判断順序が分かるよう整理します。
建設業許可業者が大型工事を受注するときや、営業所技術者等を現場に配置できるか判断するときの確認用としてご利用ください。
第1章 営業所技術者等と主任技術者・監理技術者の違い
建設業法上の技術者制度を理解するうえで、最初に整理しておきたいのが「営業所技術者等」と「主任技術者・監理技術者」の違いです。
名称はいずれも技術者ですが、配置される場所と役割が異なります。
営業所技術者等は、建設業許可を受けた営業所に配置する技術者です。
一方、主任技術者・監理技術者は、実際に施工する工事現場に配置する技術者です。
つまり、大きく分けると、
営業所技術者等
=営業所における技術上の責任者
主任技術者・監理技術者
=工事現場における技術上の責任者
という関係になります。
営業所技術者等は、建設業許可を受けるための人的要件の一つです。
建設業許可を受けた営業所には、その営業所で取り扱う建設工事について必要な資格や実務経験を有する営業所技術者等を配置しなければなりません。
一般建設業では「営業所技術者」、特定建設業では「特定営業所技術者」とされ、これらをまとめて営業所技術者等と呼びます。
これに対して、主任技術者・監理技術者は、受注した建設工事を実際に施工するときに工事現場へ配置する技術者です。
工事現場では、施工計画の作成、工程管理、品質管理、施工に従事する者への技術上の指導監督などを行います。
主任技術者と監理技術者のどちらを配置するかは、単純に工事の請負金額だけで決まるものではありません。
原則として主任技術者を配置し、元請業者が一定額以上の下請契約を締結する場合には、主任技術者に代えて監理技術者を配置します。
このため、
「営業所技術者等がいるので、工事現場に技術者を配置しなくてもよい」
というわけではありません。
逆に、
「主任技術者や監理技術者になれる資格者がいるので、営業所技術者等は不要」
というわけでもありません。
営業所と工事現場では、それぞれ別の技術者配置制度が設けられています。
ただし、営業所技術者等と主任技術者・監理技術者については、一定の条件を満たす場合に同一人物が兼務できることがあります。
この兼務の可否を判断するときに関係してくるのが、
・工事の請負金額
・元請か下請か
・下請契約の金額
・現場専任が必要な工事か
・営業所と工事現場の関係
・専任特例の要件を満たしているか
といった条件です。
そのため、技術者配置を判断するときは、最初から「この人は兼務できるか」と考えるのではなく、
まず営業所技術者等と現場技術者を別の制度として整理し、そのうえで例外的に兼務できるかを確認する
という順番で考えると分かりやすくなります。
第2章 営業所技術者等とは
営業所技術者等とは、建設業許可を受ける営業所ごとに配置する技術者です。
建設業法では、営業所ごとに、許可を受けようとする建設業について一定の資格または実務経験を有する技術者を置くことが求められています。東京都の手引でも、営業所ごとに許可業種について一定の資格または経験を有する営業所技術者等を設置する必要があると整理されています。
従来は「専任技術者」という名称が使われていましたが、建設業法の改正により、現在は一般建設業では「営業所技術者」、特定建設業では「特定営業所技術者」とされ、両者をまとめて「営業所技術者等」と呼びます。
営業所技術者等について重要なのが「専任性」です。
ここでいう専任とは、その営業所に常勤し、専らその職務に従事することをいいます。
そのため、同じ会社であっても、別の営業所の営業所技術者等を兼ねることはできません。
一方、同じ営業所の中であれば、資格要件を満たす範囲で複数業種の営業所技術者等を1人で兼ねることができます。
たとえば、1級管工事施工管理技士が、同じ営業所において管工事業だけでなく、その資格によって要件を満たす他の許可業種についても営業所技術者等となる、といった形です。
また、営業所技術者等と常勤役員等についても、それぞれの要件を満たしており、同一営業所で勤務する場合には、1人で兼ねることができます。東京都の手引でも、営業所技術者等と常勤役員等・直接補佐者・令第3条の使用人について、双方の基準を満たす者は同一営業所内で兼務できるとされています。
一般建設業と特定建設業では、営業所技術者等に求められる技術者要件も異なります。
一般建設業の営業所技術者については、対象業種に応じた国家資格、指定学科卒業後の実務経験、一定期間の実務経験などによって要件を満たすことができます。
これに対して、特定建設業の特定営業所技術者には、一般建設業より高い技術者要件が求められます。
特定建設業では、所定の国家資格または指導監督的実務経験などによって要件を満たす必要があります。
ただし、土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業の7業種は「指定建設業」とされており、指導監督的実務経験だけで特定営業所技術者となることはできません。
これらの指定建設業では、1級の国家資格、技術士資格、大臣認定など、法令で定められた資格が必要になります。
営業所技術者等について実務上まず押さえておきたいのは、
・建設業許可を受ける営業所ごとに必要であること
・許可業種について技術者要件を満たしていること
・その営業所に常勤し、専らその職務に従事すること
・別の営業所の営業所技術者等を兼ねることはできないこと
・同一営業所内であれば、要件を満たす複数業種を兼ねることができること
という点です。
ここまでが「営業所に配置する技術者」の基本です。
これに対し、実際に建設工事を施工するときに工事現場へ配置するのが主任技術者・監理技術者です。
営業所技術者等と主任技術者・監理技術者では、配置する目的も判断基準も異なります。
第3章 主任技術者と監理技術者とは
主任技術者と監理技術者は、建設工事を実際に施工する工事現場に配置する技術者です。
営業所に配置される営業所技術者等とは異なり、工事施工の技術上の管理を行うことが役割です。
建設業の許可を受けている建設業者は、元請・下請を問わず、原則として工事現場に主任技術者を配置しなければなりません。
工事金額が小さいから主任技術者を配置しなくてもよい、というものではありません。
建設業許可業者として工事を施工する以上、まずは「主任技術者を配置する」というのが基本です。
主任技術者は、工事現場において、
・施工計画の作成
・工程管理
・品質管理
・その他技術上の管理
・工事の施工に従事する者への技術上の指導監督
などを行います。
一方、一定規模以上の下請契約を締結する元請工事では、主任技術者ではなく監理技術者を配置します。
現在の基準では、発注者から直接建設工事を請け負った元請業者が、その工事について下請業者に施工させる金額の合計が5,000万円以上となる場合、主任技術者に代えて監理技術者を配置しなければなりません。
建築一式工事の場合は8,000万円以上です。
ここで重要なのは、監理技術者を配置するかどうかは「元請工事の請負金額そのもの」で判断するのではないということです。
判断するのは、元請業者がその工事について締結する下請契約の合計額です。
したがって、主任技術者と監理技術者の基本的な関係は次のようになります。
主任技術者
=建設業許可業者が工事現場に配置する基本となる技術者
監理技術者
=元請業者が一定額以上を下請に施工させる場合に、主任技術者に代えて配置する技術者
また、監理技術者を配置しなければならないのは「発注者から直接工事を請け負った元請業者」です。
下請業者がさらに多額の工事を再下請したことだけを理由として、その下請業者に監理技術者の配置義務が生じるものではありません。
監理技術者を必要とする工事を施工できるのは、対象業種について特定建設業許可を受けている建設業者です。
つまり、
「特定建設業許可が必要になる工事」
と
「監理技術者を配置しなければならない工事」
は基本的に同じ5,000万円(建築一式工事は8,000万円)の下請発注基準によって判断することになります。
主任技術者・監理技術者となる者には、その工事の建設業種について必要な資格または実務経験が必要です。
さらに、主任技術者・監理技術者は、原則として工事を請け負った建設業者との間に「直接的かつ恒常的な雇用関係」が必要とされています。
単に資格を持っている外部の技術者を、工事のときだけ借りて配置することはできません。
特に公共工事などでは、入札申込日や契約日以前からの継続した雇用関係について確認が必要になる場合もあるため、技術者配置を予定する際には資格だけでなく雇用関係も確認する必要があります。
なお、主任技術者と監理技術者の違いと、「現場に専任しなければならないか」は別の問題です。
主任技術者であっても一定の工事では現場専任が必要となりますし、監理技術者であっても専任特例によって他の現場との兼務が認められる場合があります。
そのため、工事現場の技術者配置は、
1 主任技術者か監理技術者か
2 その技術者を現場専任とする必要があるか
を分けて判断することが重要です。
第4章 特定建設業の5,000万円基準とは
特定建設業許可が必要になるかどうかを判断するときに重要なのが、「5,000万円」という金額基準です。
ただし、この5,000万円は、元請として受注する工事そのものの請負金額ではありません。
特定建設業許可が必要になるのは、発注者から直接請け負った1件の建設工事について、下請業者と締結する下請契約の合計額が5,000万円以上となる場合です。
建築一式工事の場合は8,000万円以上です。
この金額はいずれも消費税込みで判断します。
つまり、判断するときに確認するのは、
「いくらの工事を受注したか」
ではなく、
「その元請工事について、下請業者へ合計いくら発注するか」
です。
たとえば、元請として1億円の工事を受注した場合でも、下請契約の合計額が3,000万円であれば、5,000万円基準によって特定建設業許可が必要になることはありません。
一方、元請として8,000万円の工事を受注し、そのうち6,000万円を下請業者へ発注する場合には、原則として特定建設業許可が必要になります。
複数の下請業者へ発注する場合には、それぞれの下請契約を合計して判断します。
たとえば、
A社 2,000万円
B社 1,500万円
C社 1,700万円
と下請契約を締結する場合、1社ごとの契約額はいずれも5,000万円未満ですが、合計額は5,200万円です。
この場合には5,000万円以上となるため、特定建設業許可が必要になります。
また、5,000万円基準が適用されるのは「発注者から直接工事を請け負った元請業者」です。
自社が一次下請や二次下請などの立場で工事を請け負っている場合には、その会社がさらに下請へ発注する金額が5,000万円以上となったとしても、この基準によって特定建設業許可が必要になるわけではありません。
プロジェクト内の建設業許可Q&Aでも、一次下請以下の下請業者については、下請発注額にかかわらず一般建設業許可で施工できると整理されています。
さらに重要なのが、自社施工する金額そのものには、一般建設業と特定建設業を分ける上限がないという点です。
たとえば1億円の工事を元請として受注し、その工事をすべて自社で施工するのであれば、5,000万円基準だけを理由として特定建設業許可が必要になることはありません。
特定建設業の5,000万円基準は、あくまで下請契約の金額を規制する制度です。
なお、この5,000万円(建築一式工事は8,000万円)を計算するとき、元請業者が下請業者へ提供する材料などの価格は含めません。
ここは、建設業許可における「軽微な建設工事」の500万円基準とは取扱いが異なるため注意が必要です。
また、工事開始時点では下請契約額が5,000万円未満であっても、追加工事などによる契約変更によって下請契約の合計額が5,000万円以上となることがあります。
東京都の手引では、契約変更によって5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)となる場合には、変更契約を締結する前に特定建設業許可へ切り替える必要があるとされています。
そのため、大型工事では当初契約だけで判断するのではなく、追加工事や下請発注額の増額も含めて管理する必要があります。
実務上は、次の4点を確認すると整理しやすくなります。
・発注者から直接請け負った元請工事か
・1件の工事について判断しているか
・下請契約の合計額はいくらか
・5,000万円以上か(建築一式工事は8,000万円以上か)
そして、この基準に該当する場合には、対象業種について特定建設業許可が必要となり、工事現場には主任技術者ではなく監理技術者を配置することになります。
注意したいのは、この「5,000万円基準」と、主任技術者・監理技術者を工事現場に専任させるかどうかを判断する「4,500万円基準」は別の制度だということです。
5,000万円
=元請業者が締結する下請契約の合計額
=特定建設業許可・監理技術者を判断する基準
4,500万円
=工事1件の請負金額
=主任技術者・監理技術者の現場専任を判断する基準
この2つを分けて覚えておくことが、技術者配置を判断するうえで非常に重要です。
第5章 主任技術者か監理技術者かを判断する方法
工事現場に配置する技術者が主任技術者なのか、それとも監理技術者なのか。
この判断は、工事の請負金額だけを見るのではなく、
・元請か下請か
・元請の場合、下請契約の合計額はいくらか
という順番で確認すると整理しやすくなります。
建設業許可業者は、元請・下請を問わず、原則として工事現場に主任技術者を配置します。
まずは「主任技術者を配置する」のが基本です。
そのうえで、発注者から直接工事を請け負った元請業者については、下請契約の合計額によって監理技術者へ切り替える必要があるかを判断します。
具体的には、元請業者がその工事を施工するために締結する下請契約の合計額が、
5,000万円以上
建築一式工事の場合は8,000万円以上
となる場合には、主任技術者に代えて監理技術者を配置しなければなりません。
この金額はいずれも消費税込みです。
実務では、次の順番で確認します。
1 自社は元請か下請か
まず、その工事を発注者から直接請け負っているのかを確認します。
自社が一次下請、二次下請などの立場であれば、原則として主任技術者を配置します。
監理技術者の配置が問題になるのは、発注者から直接工事を請け負った元請業者です。
2 元請の場合、下請に出すか
元請工事であっても、すべて自社で施工するのであれば、下請発注額を理由として監理技術者を配置することはありません。
一部または全部を下請業者に施工させる場合には、下請契約額を確認します。
3 下請契約額を合計する
下請業者が複数いる場合には、各社との下請契約額を合計します。
たとえば、
A社 1,500万円
B社 2,000万円
C社 1,800万円
の場合、下請契約の合計額は5,300万円です。
1社ごとの契約額が5,000万円未満であっても、合計額が5,000万円以上であれば基準に該当します。
4 5,000万円以上かを確認する
下請契約の合計額が5,000万円未満であれば、原則として主任技術者を配置します。
5,000万円以上であれば、対象業種について特定建設業許可を受けたうえで、主任技術者に代えて監理技術者を配置します。
建築一式工事については、この基準が8,000万円です。
整理すると、次のようになります。
下請工事
→原則として主任技術者
元請工事・下請契約額5,000万円未満
→主任技術者
元請工事・下請契約額5,000万円以上
→監理技術者
建築一式工事の場合
元請工事・下請契約額8,000万円未満
→主任技術者
元請工事・下請契約額8,000万円以上
→監理技術者
東京都の手引でも、建設業許可業者は元請・下請にかかわらず主任技術者を配置し、発注者から直接請け負った工事について5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)を下請契約する場合には、主任技術者に代えて監理技術者を配置すると整理されています。
また、監理技術者を配置する工事では、その業種について特定建設業許可を受けていることが前提になります。
したがって、
「監理技術者になれる資格者が会社にいるから、大規模な下請発注ができる」
という順番ではありません。
まず特定建設業許可を取得できる体制があり、その許可を受けたうえで、監理技術者を配置して工事を施工します。
なお、ここまでの判断は「主任技術者か監理技術者か」という技術者の種類を決めるためのものです。
次に確認しなければならないのが、その主任技術者または監理技術者を「その工事現場に専任させる必要があるか」という問題です。
ここでは5,000万円ではなく、工事1件の請負金額で判断する4,500万円基準が関係してきます。
第6章 主任技術者・監理技術者の現場専任とは
主任技術者または監理技術者を工事現場に配置するとき、次に確認しなければならないのが「その技術者を現場に専任させる必要があるか」です。
主任技術者か監理技術者かを判断する5,000万円基準とは別に、現場専任については4,500万円という金額基準があります。
公共性のある施設・工作物や、多数の者が利用する施設・工作物に関する重要な建設工事で、工事1件の請負金額が税込4,500万円以上となる場合、主任技術者または監理技術者は、原則としてその工事現場に専任しなければなりません。
建築一式工事の場合は、税込9,000万円以上です。
ここでいう「公共性のある工事」には、国や地方公共団体が発注する公共工事だけが含まれるわけではありません。
たとえば、
・鉄道、道路、ダム、上下水道などの公共工作物
・学校
・事務所
・店舗
・デパート
・その他、多数の人が利用する施設
なども対象となります。
東京都の経営事項審査手引では、4,500万円以上、建築一式工事では9,000万円以上の工事のうち、「個人住宅を除いたほとんどの建設工事」が対象になると整理されています。
そのため、
「民間工事だから現場専任は不要」
とは判断できません。
民間工事であっても、対象となる施設・工作物に関する工事で、請負金額が基準以上であれば現場専任が必要になります。
また、この専任義務は元請だけに適用されるものではありません。
元請・下請を問わず、対象となる工事を施工する場合には、主任技術者または監理技術者を原則として現場専任とする必要があります。
ここは、特定建設業の5,000万円基準との大きな違いです。
特定建設業の5,000万円基準
=発注者から直接工事を請け負った元請業者について判断する
現場専任の4,500万円基準
=元請・下請を問わず判断する
という違いがあります。
また、判断する金額も異なります。
5,000万円基準では、元請業者が締結する下請契約の合計額を確認します。
これに対して、現場専任の4,500万円基準では、その会社が請け負った工事1件の請負金額を確認します。
たとえば、下請業者が5,000万円の専門工事を請け負った場合、その会社は元請ではないため、5,000万円基準によって監理技術者を置くことにはなりません。
しかし、その工事が現場専任の対象となる公共性のある重要な工事であれば、請負金額が4,500万円以上となるため、配置する主任技術者について現場専任が必要になる可能性があります。
このように、
「主任技術者か監理技術者か」
と
「その技術者を現場専任とする必要があるか」
は、それぞれ別に判断しなければなりません。
現場専任が必要となる工事に監理技術者を配置する場合には、さらに注意が必要です。
専任を要する工事の監理技術者については、公共工事・民間工事を問わず、監理技術者資格者証の交付を受け、かつ監理技術者講習を受講していることが必要です。
したがって、監理技術者になることができる資格を持っているだけでは足りません。
現場専任を必要とする工事では、
・監理技術者としての資格要件
・監理技術者資格者証
・監理技術者講習
まで確認する必要があります。
実務では、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
1 その工事が現場専任の対象となる工事か
2 工事1件の請負金額が税込4,500万円以上か
3 建築一式工事の場合は税込9,000万円以上か
4 配置するのは主任技術者か監理技術者か
5 監理技術者の場合、資格者証・講習の要件を満たしているか
そして、現場専任の対象となったからといって、必ず1人の技術者が1現場だけを担当しなければならないとは限りません。
現在は一定の要件を満たす場合に、専任が必要な主任技術者・監理技術者が複数の工事現場を兼務できる「専任特例」が設けられています。
この専任特例と、営業所技術者等が工事現場を兼務できる場合については、次章で整理します。
第7章 専任特例と営業所技術者等の現場兼務
前章では、公共性のある重要な工事で、工事1件の請負金額が税込4,500万円以上、建築一式工事では税込9,000万円以上となる場合には、主任技術者または監理技術者を原則として工事現場に専任させる必要があることを確認しました。
ただし、現在の建設業法では、一定の要件を満たす場合に、この現場専任を合理化する特例が設けられています。
また、営業所に専任することが原則である営業所技術者等についても、一定の条件を満たせば、工事現場の主任技術者または監理技術者を兼務できる場合があります。
この2つは似ていますが、別の制度として整理しておく必要があります。
1 主任技術者・監理技術者の「専任特例1号」
工事1件の請負金額が、
税込1億円未満
建築一式工事では税込2億円未満
の工事については、建設業法施行規則で定める要件を満たすことで、本来は現場専任が必要となる主任技術者または監理技術者について、2つの工事現場を兼務することができます。
これが「専任特例1号」です。
したがって、
4,500万円以上だから必ず1現場だけ
というわけではありません。
4,500万円以上になると、まず原則として現場専任の対象となります。
そのうえで、
1億円未満か
建築一式工事なら2億円未満か
さらに専任特例1号の要件を満たしているか
を確認し、要件をすべて満たす場合に限って2現場まで兼務できる、という順番で判断します。
専任特例1号は、単に工事金額が1億円未満であれば利用できる制度ではありません。
情報通信技術を利用して現場の状況を確認できる体制など、建設業法施行規則や監理技術者制度運用マニュアルで定められた要件を満たす必要があります。
そのため、実際に利用する場合には、工事金額だけで判断せず、監理技術者制度運用マニュアルの要件を個別に確認する必要があります。
2 監理技術者の「専任特例2号」
監理技術者については、専任特例1号とは別に「専任特例2号」があります。
専任を要する工事現場に、一定の資格要件を満たす監理技術者補佐を専任で配置する場合には、監理技術者本人が2つの工事現場を兼務することができます。
専任特例2号については、専任特例1号のような1億円未満、建築一式工事2億円未満という請負金額の上限はありません。
つまり、監理技術者の現場兼務には、
専任特例1号
=一定の工事金額の範囲内で、法令上の要件を満たして2現場を兼務
専任特例2号
=各現場に監理技術者補佐を専任配置して2現場を兼務
という2つの制度があります。
3 営業所技術者等は原則として現場技術者を兼務できない
次に、営業所技術者等と工事現場の主任技術者・監理技術者との兼務です。
営業所技術者等は、その営業所に常勤し、専らその職務に従事することが原則です。
そのため、営業所技術者等が自由に工事現場の主任技術者または監理技術者を兼務できるわけではありません。
原則は兼務できません。
ただし、一定の要件を満たす場合には例外的に兼務が認められます。
4 4,500万円未満の工事における営業所技術者等の兼務
請負金額が税込4,500万円未満、建築一式工事では税込9,000万円未満の工事については、一定の条件を満たせば、営業所技術者等が主任技術者または監理技術者を兼務できる場合があります。
従来から認められている基本的な兼務では、
・その営業所で請負契約を締結した建設工事であること
・工事現場と営業所が近接していること
・営業所との間で常時連絡を取ることができる体制にあること
などが必要です。
したがって、営業所技術者等だからといって、その会社が施工するすべての工事現場を兼務できるわけではありません。
あくまで、その営業所と工事現場との関係を踏まえて判断します。
5 専任対象工事でも営業所技術者等が兼務できる場合がある
制度改正によって、営業所技術者等についても、専任特例1号に準じた要件を満たす場合には、一定規模までの工事現場について主任技術者または監理技術者を兼務できるようになりました。
対象となる工事は、
税込4,500万円以上1億円未満
建築一式工事では税込9,000万円以上2億円未満
です。
この場合、その営業所で請負契約を締結した建設工事であり、専任特例1号の要件を一部読み替えて満たすことなどが必要になります。
また、営業所技術者等がこの特例によって兼務できる工事現場は1現場に限られます。
ここは、主任技術者・監理技術者の専任特例1号との違いとして重要です。
主任技術者・監理技術者の専任特例1号
=2現場まで兼務可能
営業所技術者等の現場兼務
=営業所の職務を続けながら1現場まで兼務可能
という違いがあります。
6 1億円以上の工事では営業所技術者等の現場兼務はできない
営業所技術者等が専任特例1号に準じて現場技術者を兼務できるのは、請負金額が税込1億円未満までです。
建築一式工事では税込2億円未満までです。
これ以上の工事については、この制度を使って営業所技術者等が主任技術者または監理技術者を兼務することはできません。
実務上は、営業所技術者等を現場に配置しようとするとき、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
まず、その工事が営業所技術者等を置いている営業所で請負契約を締結した工事かを確認します。
次に、工事の請負金額を確認します。
4,500万円未満
建築一式工事では9,000万円未満
であれば、営業所と工事現場が近接していることや常時連絡体制など、通常の兼務要件を検討します。
4,500万円以上1億円未満
建築一式工事では9,000万円以上2億円未満
であれば、専任特例1号に準じた要件による1現場の兼務を検討します。
1億円以上
建築一式工事では2億円以上
であれば、営業所技術者等が工事現場の主任技術者・監理技術者を兼務することはできません。
営業所技術者等の現場兼務については、金額だけで判断できない点が特に重要です。
「1億円未満だから兼務できる」のではなく、
工事金額
請負契約を締結した営業所
営業所と現場との関係
通信・連絡体制
専任特例の各要件
などを確認したうえで、初めて兼務の可否を判断することになります。
大型工事の受注時には、営業所技術者等をそのまま現場技術者として使えると考えず、契約前に技術者配置まで確認しておくことが重要です。
第8章 技術者配置はこの順番で確認する
営業所技術者等、主任技術者、監理技術者、現場専任、専任特例は、それぞれ別の制度です。
実務で混乱しやすいのは、5,000万円、4,500万円、1億円という複数の金額基準があり、それぞれ確認する対象が違うためです。
技術者配置を判断するときは、すべてを一度に考えるのではなく、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
1 まず、営業所技術者等を確認する
最初に、その工事を請け負う営業所と、その営業所に配置されている営業所技術者等を確認します。
営業所技術者等は、建設業許可を受けた営業所に配置される技術者です。
工事現場に配置する主任技術者・監理技術者とは別の制度であるため、まずは分けて考えます。
営業所技術者等をそのまま工事現場にも配置したい場合には、後から兼務できるかを判断します。
最初から「営業所技術者等だから現場にも出せる」と考えないことが重要です。
2 工事現場には原則として主任技術者を配置する
建設業許可業者が建設工事を施工する場合、元請・下請を問わず、原則として工事現場に主任技術者を配置します。
したがって、配置技術者の判断は、まず主任技術者からスタートします。
そのうえで、元請工事について一定額以上を下請に施工させる場合に、主任技術者から監理技術者へ切り替えます。
3 元請か下請かを確認する
次に確認するのが、自社がその工事の元請なのか下請なのかです。
自社が一次下請や二次下請などであれば、原則として主任技術者を配置します。
監理技術者の配置が問題になるのは、発注者から直接建設工事を請け負った元請業者です。
4 元請の場合は下請契約額を確認する
元請の場合には、その工事について下請業者へいくら発注するのかを確認します。
下請契約の合計額が、
税込5,000万円以上
建築一式工事では税込8,000万円以上
となる場合には、対象業種について特定建設業許可が必要となり、主任技術者に代えて監理技術者を配置します。
複数の下請業者へ発注する場合は、その合計額で判断します。
ここで確認する5,000万円は、元請として受注した工事そのものの請負金額ではありません。
「元請が下請へいくら発注するか」を判断する金額です。
5 次に、現場専任が必要かを確認する
主任技術者または監理技術者のどちらを配置するかが決まったら、次にその技術者を工事現場に専任させる必要があるかを確認します。
公共性のある重要な工事について、
工事1件の請負金額が税込4,500万円以上
建築一式工事では税込9,000万円以上
となる場合、主任技術者または監理技術者は原則としてその工事現場に専任しなければなりません。
この基準は元請だけではなく、下請にも適用されます。
したがって、
5,000万円
=元請の下請発注額を見る
4,500万円
=自社が請け負った工事1件の請負金額を見る
という違いを明確にしておく必要があります。
6 現場専任なら専任特例が使えるかを確認する
現場専任の対象となった場合でも、直ちに「1人1現場」と判断するわけではありません。
工事1件の請負金額が、
税込1億円未満
建築一式工事では税込2億円未満
であり、建設業法施行規則で定める要件を満たす場合には、専任特例1号によって主任技術者または監理技術者が2現場まで兼務できる場合があります。
監理技術者については、さらに各現場へ監理技術者補佐を専任配置する専任特例2号もあります。
専任特例2号では、専任特例1号のような1億円未満、建築一式工事2億円未満という工事金額の上限はありません。
したがって、専任対象工事では、
現場専任が原則
↓
専任特例1号を使えるか
↓
監理技術者であれば専任特例2号を使えるか
という順番で確認します。
7 営業所技術者等を現場に出す場合は、最後に兼務要件を確認する
営業所技術者等を工事現場の主任技術者または監理技術者として配置したい場合には、さらに兼務要件を確認します。
営業所技術者等は、原則として主任技術者・監理技術者を兼務できません。
ただし、一定の場合には例外があります。
請負金額が、
税込4,500万円未満
建築一式工事では税込9,000万円未満
であれば、その営業所で請負契約を締結した工事であり、工事現場と営業所が近接し、常時連絡できる体制があることなどの要件を満たすことで兼務できる場合があります。
また、
税込4,500万円以上1億円未満
建築一式工事では税込9,000万円以上2億円未満
の工事についても、専任特例1号に準じた要件を満たすことで、営業所技術者等が1現場に限って主任技術者または監理技術者を兼務できる場合があります。
一方、
税込1億円以上
建築一式工事では税込2億円以上
となる工事では、この制度による営業所技術者等の現場兼務はできません。
8 実務で確認する金額基準
最後に、この記事で扱った主な金額基準を整理します。
5,000万円
建築一式工事は8,000万円
=元請業者が締結する下請契約の合計額
=特定建設業許可・監理技術者の配置を判断
4,500万円
建築一式工事は9,000万円
=工事1件の請負金額
=主任技術者・監理技術者の現場専任を判断
1億円未満
建築一式工事は2億円未満
=専任特例1号を検討する工事金額の範囲
=営業所技術者等が専任対象工事を兼務する場合の上限
この3つの金額を同じものとして考えないことが重要です。
実際の案件では、次の順番で確認します。
営業所技術者等は誰か
↓
自社は元請か下請か
↓
主任技術者か監理技術者か
↓
元請なら下請発注額は5,000万円以上か
(建築一式工事は8,000万円以上か)
↓
工事請負金額は4,500万円以上か
(建築一式工事は9,000万円以上か)
↓
現場専任の対象となる工事か
↓
専任特例を利用できるか
↓
営業所技術者等を兼務させる場合は、その要件を満たすか
技術者制度は、工事金額だけを見て判断すると間違えやすい分野です。
元請・下請の立場、下請発注額、工事請負金額、営業所との関係、技術者の資格、雇用関係、専任特例の要件まで順番に確認する必要があります。
特に大型工事については、工事を受注した後ではなく、見積りや契約の段階で建設業許可の区分と技術者配置を確認しておくことが重要です。









