経営事項審査(経審) 技術力(Z)の評価と点数の考え方を行政書士が解説

経営事項審査(経審)の結果通知書を見ると、「Z」という評価項目が記載されています。

Zは技術力を評価する項目であり、保有している技術者の資格や人数、元請としての施工実績などを基に算出されます。完成工事高(X1)と並んで経審に大きな影響を与える評価項目の一つであり、P点向上を目指す建設会社にとって非常に重要な指標です。

実際に経審結果を確認した際、

「1級施工管理技士が何人いれば評価されるのか」

「実務経験者も評価対象になるのか」

「技術者が退職すると点数はどの程度下がるのか」

「資格取得でどれくらい評価が変わるのか」

といった疑問を持つ方は少なくありません。

また、完成工事高(X1)は短期間で大きく改善することが難しい一方で、技術力(Z)は資格取得や技術者育成によって計画的に評価向上を目指すことができる項目でもあります。そのため、経審対策を検討する際には、まずZ点の仕組みを正しく理解することが重要です。

特に近年は、技術者不足や高齢化の影響により、有資格者の確保そのものが経営課題となっている建設会社も少なくありません。経審においても、どのような資格者が評価対象となるのか、元請完成工事高がどのように影響するのかを把握しておくことが大切です。

この記事では、経営事項審査における技術力(Z)の仕組みや評価方法、評価対象となる資格、実務経験者の取扱い、そしてZ点を向上させるための考え方について詳しく解説します。

技術力(Z)だけでなく、経営事項審査(経審)の全体像について詳しく知りたい方は、「経営事項審査(経審)とは?P点の仕組みや評価項目を解説」もあわせてご覧ください。

目次

第1章 技術力(Z)とは

技術力(Z)とは、経営事項審査(経審)において建設会社が保有する技術者や施工体制を評価するための項目です。

完成工事高(X1)が会社の規模を評価する項目であるのに対し、技術力(Z)は「どのような技術者をどれだけ確保しているか」「どの程度の施工能力を有しているか」を評価する項目といえます。

公共工事では、工事を受注するだけでなく、適切な技術者を配置し、品質や安全性を確保しながら施工できる体制が求められます。そのため、経審においても技術力は重要な評価対象となっています。

実際に経審結果通知書を見ると、技術力(Z)は完成工事高(X1)と並んで大きな影響を持つ評価項目の一つです。

特に中小建設会社の場合、完成工事高を短期間で大きく増やすことは容易ではありません。一方で、技術者の資格取得や育成によって技術力評価を向上させることは可能であるため、多くの建設会社がZ点の改善に取り組んでいます。

また、技術力(Z)は単に資格者数だけを評価する制度ではありません。

経審では、

・技術職員数

・保有資格

・元請完成工事高

などが評価対象となります。

そのため、有資格者が多い会社ほど有利になる傾向はありますが、資格者の人数だけで評価が決まるわけではありません。

技術者の配置状況や施工実績も含めて総合的に評価される仕組みとなっています。

さらに、技術力評価は毎年変動する可能性があります。

例えば、

・1級施工管理技士を取得した

・新たに有資格者を採用した

・技術者が退職した

といった場合には、翌年の経審結果へ影響することがあります。

実際の経審実務においても、技術者の退職によってZ点が下がるケースや、資格取得によって評価が向上するケースは少なくありません。

そのため、経審対策を考える際には、現在の技術者構成を把握し、中長期的な育成計画を立てることが重要になります。

また、技術力(Z)は建設会社の将来性を示す指標としても見ることができます。

有資格者が継続的に育成されている会社は、施工能力や組織力の向上も期待できます。

反対に、特定の技術者へ依存している場合には、その技術者が退職した際に大きな影響を受ける可能性があります。

そのため、経審の技術力評価は単なる点数ではなく、会社の技術者体制や人材育成の状況を表す指標として捉えることも重要です。

技術力(Z)を正しく理解するためには、どのような技術者が評価対象となるのか、またどのような仕組みで点数化されるのかを把握する必要があります。次章では、技術力(Z)がどのように計算されるのか、その仕組みについて詳しく解説します。

第2章 技術力(Z)はどのように計算されるのか

技術力(Z)は、経営事項審査(経審)において建設会社の技術者体制や施工能力を評価する項目です。

完成工事高(X1)のように売上規模を評価するものではなく、

「どのような技術者を確保しているのか」

「どの程度の施工実績を持っているのか」

という観点から評価が行われます。

そのため、同じ完成工事高の会社であっても、保有している技術者や施工体制によってZ点に大きな差が生じることがあります。

技術力(Z)は、大きく分けると技術職員数と元請完成工事高を基に評価される仕組みとなっています。

2-1 技術職員数が評価の中心となる

技術力(Z)の中でも特に重要なのが技術職員数です。

経審では、会社に所属する技術職員について、保有資格や実務経験の状況などを基に評価が行われます。

一般的には、

・1級施工管理技士

・2級施工管理技士

・技術士

・建築士

などの資格者が評価対象となります。

保有する資格によって評価内容が異なるため、同じ人数の技術者が在籍していても、資格構成によって評価結果は大きく変わります。

そのため、技術者の確保だけでなく、資格取得を計画的に進めることが重要になります。

2-2 上位資格ほど高く評価される

経審では、すべての資格が同じように評価されるわけではありません。

一般的には、

・1級資格

・監理技術者資格者証を有する技術者

・技術士

などが高く評価されます。

一方で、

・2級施工管理技士

・その他の評価対象資格

についても評価対象となりますが、評価の大きさは異なります。

そのため、技術力向上を目指す場合には、単に人数を増やすだけでなく、上位資格の取得を進めることが重要になります。

実際の経審対策でも、若手技術者の2級取得から始め、その後1級取得へ進める育成計画を立てる会社は少なくありません。

2-3 技術者の保有状況を適切に把握することが重要

技術力評価を考える際には、自社の技術者構成を正確に把握することが重要です。

建設会社の中には、

・国家資格を保有している技術者

・監理技術者資格者証を保有している技術者

・営業所技術者等となっている技術者

など、さまざまな立場の技術者が在籍しています。

しかし、営業所技術者等として認められていることと、経審における技術職員評価の対象となることは必ずしも同じではありません。

また、資格の種類や実務経験の内容によって取扱いが異なる場合もあります。

そのため、経審対策を行う際には、単に「営業所技術者等がいるから大丈夫」と考えるのではなく、実際にどの技術者がどのように評価されるのかを確認することが重要です。

2-4 元請完成工事高も評価対象となる

技術力(Z)では技術職員数だけでなく、元請完成工事高も評価対象となります。

これは、実際に工事を管理し施工した実績を評価するためです。

同じ完成工事高であっても、

・元請として施工した工事

・下請として施工した工事

では評価の考え方が異なります。

そのため、公共工事への参入や格付け向上を目指す会社では、元請工事の実績も重要な要素となります。

2-5 技術力評価は会社の将来性も表している

技術力(Z)は単なる資格者数の評価ではありません。

会社が将来にわたって安定した施工体制を維持できるかどうかを判断するための指標でもあります。

有資格者が継続的に育成されている会社は高く評価されやすく、反対に特定の技術者へ依存している会社はリスクを抱えているといえます。

そのため、技術力評価を高めるためには、資格取得だけでなく、技術者の採用や育成を含めた中長期的な人材戦略が重要になります。

技術力(Z)は、保有資格や技術職員数、元請完成工事高など複数の要素によって評価されます。そのため、まずは自社の技術者構成を把握し、どこに改善余地があるのかを分析することが重要です。

第3章 評価対象となる資格とは

技術力(Z)の評価において重要となるのが、技術職員が保有している資格です。

経審では、技術者の人数だけではなく、どのような資格を保有しているかによって評価が異なります。

そのため、同じ10人の技術者が在籍している会社であっても、保有資格の内容によって評価結果に大きな差が生じることがあります。

経審対策を考えるうえでは、どの資格が評価対象となり、どのような技術者が高く評価されるのかを理解しておくことが重要です。

また、技術力評価は単なる資格者数の競争ではありません。

資格取得の状況はもちろんですが、会社として継続的に技術者を育成できているか、将来に向けた人材確保ができているかという視点も重要になります。

経審の技術力評価は、建設会社の現在の実力だけでなく、将来的な施工体制の安定性を判断するための指標としても位置付けられています。

3-1 1級施工管理技士は高く評価される

経審において高く評価される資格の代表例が1級施工管理技士です。

1級施工管理技士は、公共工事や大規模工事において重要な役割を担う国家資格であり、多くの建設会社が資格取得を推進しています。

また、1級施工管理技士は監理技術者となるための要件の一つでもあり、特定建設業許可を取得している会社や公共工事へ積極的に参入している会社では特に重要な資格となります。

経審においても評価が高いため、Z点向上を目指す建設会社にとって重要な人材といえます。

さらに、1級資格者は営業所技術者等や現場配置技術者としても活躍できる場面が多く、会社全体の技術者体制を支える存在となります。

そのため、経営者の立場から見ても、1級施工管理技士の育成や確保は重要な経営課題の一つといえます。

3-2 2級施工管理技士も重要な評価対象となる

1級施工管理技士に注目が集まりがちですが、2級施工管理技士も経審では評価対象となります。

特に中小建設会社では、若手技術者がまず2級施工管理技士を取得し、その後1級施工管理技士を目指すケースが一般的です。

技術者育成の観点からも、2級施工管理技士の取得は重要なステップとなります。

また、複数の有資格者を確保することで、技術者退職によるリスクを軽減できるというメリットもあります。

実際には、

・1級施工管理技士が1名のみ在籍している会社

よりも、

・1級施工管理技士
・2級施工管理技士
・資格取得予定者

がバランス良く配置されている会社の方が、将来的な技術者体制は安定しやすいといえます。

経審は単年度の評価制度ではありますが、資格取得を継続的に進めている会社ほど長期的な評価向上につながりやすい傾向があります。

3-3 技術士や建築士も評価対象となる

経審では施工管理技士だけでなく、

・技術士

・一級建築士

・二級建築士

などの資格も評価対象となります。

特に技術士は高度な専門資格として位置付けられており、高く評価される資格の一つです。

また、建築一式工事を行う会社では建築士の配置が重要になるケースもあります。

建築確認や設計監理などとの関係もあり、建築士資格を保有する技術者は会社の技術力を示す重要な存在となります。

自社の事業内容に応じて、どの資格者を確保・育成するべきかを検討することが重要です。

3-4 監理技術者資格者証との関係

建設会社の経営者から、

「監理技術者資格者証を持っていれば有利になるのか」

という質問を受けることがあります。

監理技術者資格者証は、一定の資格や実務経験を基に交付されるものであり、大規模工事において監理技術者として現場へ配置される際に必要となります。

経審では、監理技術者資格者証を有する技術者が評価対象となる場合があり、技術力評価においても重要な意味を持っています。

また、監理技術者資格者証を有する者は、指定建設業以外の業種において営業所技術者等の要件を満たすことができる場合があります。

そのため、建設業許可の維持や経審対策の両面から重要な資格といえます。

さらに、監理技術者を配置できる体制が整っていることは、特定建設業許可の取得や大規模工事への対応力を示す要素でもあります。

公共工事を積極的に受注している会社では、監理技術者資格者証を保有する技術者の確保が重要な課題となることも少なくありません。

3-5 資格者の人数だけではなく構成も重要

技術力評価では、

「資格者が何人いるか」

だけではなく、

「どのような資格者がいるか」

も重要になります。

例えば、

1級施工管理技士が複数在籍している会社と、2級資格者のみで構成されている会社では評価に差が生じます。

また、特定の技術者一人に依存している場合、その技術者が退職すると評価が大きく変動する可能性があります。

実際の経審実務でも、

・長年在籍していた1級施工管理技士が退職した

・技術士が定年退職した

といった理由でZ点が下がるケースがあります。

そのため、経審対策では単に資格取得を促すだけではなく、資格者構成全体を見ながら中長期的な育成計画を立てることが重要です。

技術力(Z)の評価では、保有資格の内容が大きく影響します。どの資格者が在籍しているのかを把握し、将来的な資格取得計画や人材育成を進めていくことが、継続的な評価向上につながります。

第4章 実務経験者はどのように評価されるのか

技術力(Z)の評価について説明すると、

「資格者がいないと評価されないのですか」

「実務経験だけで営業所技術者等になっている者は評価対象になりますか」

といった質問を受けることがあります。

建設業界では、長年にわたり現場で経験を積み、高い施工能力を持ちながら国家資格を取得していない技術者も少なくありません。

そのため、実務経験者の取扱いは多くの建設会社にとって関心の高いテーマの一つです。

ただし、建設業許可制度における営業所技術者等の要件と、経営事項審査(経審)における技術力(Z)の評価は必ずしも同じではありません。

そのため、それぞれの制度の違いを理解することが重要です。

4-1 建設業許可における実務経験者

建設業許可では、一定期間の実務経験によって営業所技術者等の要件を満たすことができる場合があります。

例えば、指定学科卒業後の実務経験や、一定年数以上の実務経験を有する場合には、資格を持っていなくても営業所技術者等として認められることがあります。

実際に中小建設会社では、

・資格は保有していない

・長年現場に従事している

・営業所技術者等として登録されている

というケースも少なくありません。

建設業許可制度では、資格だけでなく実務経験も技術力を証明する方法の一つとして位置付けられています。

4-2 経審の技術力評価とは考え方が異なる

一方で、経審の技術力(Z)は建設業許可制度とは別の評価制度です。

経審では技術職員名簿に記載された技術者について、資格や一定の要件を基に評価が行われます。

そのため、

「営業所技術者等だから経審でも必ず高く評価される」

とは限りません。

また、

「実務経験者だから評価対象にならない」

と単純に考えることもできません。

実際の取扱いは制度改正や評価基準によって異なる部分もあるため、最新の基準に基づいて確認することが重要です。

経審では、建設業許可制度と同じ感覚で判断するのではなく、経審独自の評価基準を理解する必要があります。

4-3 資格者と実務経験者の違い

一般的に、経審では資格による評価が重要な位置を占めています。

そのため、

・1級施工管理技士

・2級施工管理技士

・技術士

・建築士

などの資格者は評価上のメリットを受けやすい傾向があります。

一方で、実務経験者については資格者と同じ評価になるとは限りません。

そのため、現在は実務経験によって営業所技術者等の要件を満たしている会社であっても、将来的な経審対策を考えるのであれば資格取得を進めることが重要になります。

特に若手技術者については、実務経験を積みながら資格取得を目指す体制を整備することが望ましいといえます。

4-4 技術者の高齢化と事業承継リスク

実務経験者を中心に技術者体制を構築している会社では、高齢化が課題となることがあります。

例えば、

・創業時から在籍しているベテラン技術者

・長年実務経験で要件を満たしている技術者

などが退職すると、建設業許可や経審へ影響が及ぶ可能性があります。

特に一人の技術者へ依存している場合には、その影響が大きくなることがあります。

そのため、

・若手技術者の採用

・資格取得支援

・複数人による技術者体制の構築

などを計画的に進めることが重要です。

経審対策という視点だけではなく、会社の事業承継や将来の組織運営という観点からも重要な課題といえます。

4-5 実務経験者の活用と資格取得は両立できる

実務経験者が在籍していること自体は、建設会社にとって大きな強みです。

現場経験や施工ノウハウは資格だけで得られるものではありません。

そのため、実務経験豊富な技術者が若手を育成し、技術継承を行うことは会社にとって大きな価値があります。

一方で、経審の技術力評価を考えるのであれば、実務経験だけに依存するのではなく、資格取得もあわせて進めることが重要です。

実務経験と資格取得を両立させることで、建設業許可の維持だけでなく、経審における技術力向上にもつなげることができます。

実務経験者は建設会社にとって重要な人材ですが、建設業許可制度と経審では評価の考え方が異なる部分があります。そのため、自社の技術者構成を把握しながら、実務経験の活用と資格取得の両方を計画的に進めていくことが重要です。

第5章 技術力(Z)を向上させるための考え方

技術力(Z)は、経営事項審査(経審)の評価項目の中でも改善に取り組みやすい項目の一つです。

完成工事高(X1)は実際の受注実績が反映されるため、短期間で大きく改善することは容易ではありません。

一方で、技術力(Z)は資格取得や人材育成によって中長期的に評価向上を目指すことができます。

そのため、経審対策を考える際には、自社の技術者構成を分析し、計画的に技術力向上へ取り組むことが重要です。

5-1 まずは現在の技術者構成を把握する

技術力向上の第一歩は、自社の技術者構成を正確に把握することです。

例えば、

・1級資格者は何名いるのか

・2級資格者は何名いるのか

・高齢化が進んでいないか

・若手技術者は育成できているか

といった点を整理します。

実際には、

「1級施工管理技士が1名だけ在籍している」

という会社も少なくありません。

この場合、その技術者が退職した場合の影響は非常に大きくなります。

経審対策としてはもちろんですが、建設業許可の維持や会社の事業継続という観点からも、技術者構成を定期的に確認することが重要です。

5-2 若手技術者の資格取得を進める

技術力(Z)を向上させるためには、若手技術者の育成が欠かせません。

特に中小建設会社では、

・ベテラン技術者に依存している

・資格者の年齢が高い

というケースもあります。

そのため、

まずは2級施工管理技士の取得を目指し、

その後1級施工管理技士へステップアップする流れを作ることが重要です。

資格取得には時間がかかります。

そのため、経審対策として考える場合でも、

来年の経審

再来年の経審

3年後の経審

という視点で計画を立てる必要があります。

継続的な資格取得ができる会社ほど、長期的な技術力評価の向上につながります。

5-3 特定の技術者への依存を避ける

技術力評価を考える際に見落とされがちなのが、特定の技術者への依存です。

例えば、

・1級施工管理技士が1名のみ

・営業所技術者等が1名のみ

・監理技術者が1名のみ

という状況では、その技術者が退職した場合に大きな影響を受ける可能性があります。

実際の経審実務でも、

技術者退職によってZ点が下がった

営業所技術者等の変更が必要になった

というケースは少なくありません。

そのため、重要な資格者を複数名育成し、組織として技術力を維持できる体制を構築することが重要です。

5-4 元請工事の実績を積み上げる

技術力(Z)は技術職員数だけでなく、元請完成工事高も評価対象となります。

そのため、公共工事への参入や格付け向上を目指す会社では、元請工事の実績を積み上げることも重要な要素となります。

もちろん、すべての会社が元請中心の経営を目指す必要はありません。

しかし、

・将来的に公共工事へ参入したい

・より上位の格付けを目指したい

という場合には、元請工事の割合も意識する必要があります。

完成工事高(X1)だけでなく、技術力(Z)の観点からも元請実績は重要な意味を持っています。

5-5 技術者の採用と定着も重要な経営課題

近年の建設業界では、技術者不足が大きな課題となっています。

そのため、資格取得だけでなく、

・技術者採用

・離職防止

・技術継承

も重要なテーマとなります。

資格取得者を増やしても、退職によって人材が流出してしまえば評価向上につながりません。

また、ベテラン技術者が持つ施工ノウハウや現場経験は、会社にとって重要な資産です。

そのため、若手育成と技術継承を両立させることが重要になります。

5-6 技術力向上は中長期的な取組みである

技術力(Z)は比較的改善しやすい評価項目といわれますが、それでも短期間で大きく向上させることは簡単ではありません。

資格取得には受験資格や実務経験が必要となる場合があります。

また、技術者育成には時間がかかります。

そのため、

「今年の経審だけを良くしたい」

という考え方ではなく、

「3年後にどのような技術者体制を作るか」

という視点で取り組むことが重要です。

継続的な資格取得支援や人材育成を行うことで、技術力評価だけでなく会社全体の競争力向上にもつながります。

技術力(Z)の向上は単なる経審対策ではありません。資格取得、人材育成、技術継承、元請実績の積み上げなどを通じて、会社全体の施工能力を高めていく取組みでもあります。経審をきっかけとして、自社の技術者体制を見直すことが将来の成長につながります。

第6章 技術力(Z)に関するよくある誤解

技術力(Z)は、経営事項審査(経審)の評価項目の中でも重要な位置を占めています。

そのため、多くの建設会社が技術者の確保や資格取得に取り組んでいますが、実際には技術力評価について誤解されているケースも少なくありません。

誤った認識のまま経審対策を進めると、期待したほど評価が向上しなかったり、将来的なリスクを見落としたりする可能性があります。

ここでは、実務上よく見られる誤解について解説します。

6-1 1級施工管理技士が1人いれば安心である

建設会社の中には、

「1級施工管理技士がいるから大丈夫」

と考えているケースがあります。

確かに1級施工管理技士は高く評価される資格であり、会社にとって重要な存在です。

しかし、その技術者が1名しかいない場合には注意が必要です。

例えば、

・退職

・病気による長期離脱

・定年退職

などが発生した場合、経審だけでなく建設業許可の維持にも影響する可能性があります。

そのため、重要な資格者を一人だけに依存するのではなく、複数の有資格者を育成することが重要です。

6-2 資格者数だけで評価が決まる

技術力(Z)は資格者数だけで評価されると思われることがあります。

しかし、実際には資格者数だけではなく、

・保有資格の内容

・技術者構成

・元請完成工事高

なども評価に関係します。

例えば、

1級施工管理技士が複数在籍している会社と、

2級資格者のみで構成されている会社では評価が異なります。

また、元請工事の実績によっても評価結果は変わることがあります。

そのため、単純に人数だけを見るのではなく、技術者全体の構成を把握することが重要です。

6-3 実務経験者は評価に関係しない

実務経験によって営業所技術者等の要件を満たしている技術者がいる場合、

「資格を持っていないから意味がない」

と考えられることがあります。

しかし、実務経験豊富な技術者は現場運営や技術継承の面で重要な役割を担っています。

また、建設業許可制度においても重要な存在です。

一方で、建設業許可制度と経審では評価の考え方が異なる部分もあります。

そのため、

「実務経験者だから評価されない」

あるいは

「営業所技術者等だから必ず高評価になる」

というような単純な理解ではなく、それぞれの制度の違いを理解することが重要です。

6-4 技術力(Z)は短期間で大きく改善できる

完成工事高(X1)と比較すると、技術力(Z)は改善しやすい項目といわれます。

しかし、それは短期間で大幅な改善が可能という意味ではありません。

例えば、

・2級施工管理技士の取得

・1級施工管理技士へのステップアップ

・技術士資格の取得

などには相応の時間が必要です。

また、受験資格として実務経験が求められる資格もあります。

そのため、

「今年の経審で点数を上げたい」

と思っても、すぐに結果が出るとは限りません。

技術力向上は中長期的な取組みとして考えることが重要です。

6-5 高齢の有資格者がいるから問題ない

建設会社の中には、長年在籍しているベテラン技術者によって技術者体制を維持しているケースがあります。

もちろん、経験豊富な技術者は会社にとって大きな財産です。

しかし、

・年齢構成が偏っている

・若手技術者が育っていない

という状況では将来的なリスクがあります。

特に建設業界では技術者不足が課題となっているため、次世代を担う技術者の育成が重要です。

現在の評価だけでなく、5年後や10年後を見据えた技術者体制を構築することが求められます。

6-6 技術者採用は経審と関係ない

経審対策というと資格取得ばかりが注目されがちですが、技術者採用も重要な要素です。

新たな有資格者を採用することで技術力評価が向上する場合があります。

また、若手技術者を採用し育成することは、将来的な評価向上にもつながります。

近年は技術者不足が続いており、資格取得支援だけでなく採用や定着の仕組みづくりも重要な経営課題となっています。

経審の技術力評価は、現在の技術者体制だけでなく、将来に向けた人材戦略とも深く関係しているのです。

技術力(Z)は単なる資格者数の評価ではなく、会社全体の施工能力や人材育成体制を評価する項目です。制度の仕組みを正しく理解し、中長期的な視点で技術者育成や組織づくりを進めることが、継続的な評価向上につながります。

第7章 許可取得後の管理

技術力(Z)は毎年の経審によって評価されるため、一度点数が上がれば終わりというものではありません。

技術者の資格取得状況や退職、採用状況によって評価は変動します。また、決算変更届や経営事項審査の手続きとあわせて、技術者情報の管理も継続的に行う必要があります。

特に、営業所技術者等や有資格者が退職した場合には、建設業許可や経審へ影響が及ぶ可能性があります。そのため、日頃から技術者体制を把握し、後継者育成や資格取得支援を計画的に進めることが重要です。

許可取得後の管理体制について詳しく知りたい方は、建設業許可取得後の管理についてもあわせてご覧ください。

まとめ

技術力(Z)は、経営事項審査(経審)において建設会社の技術者体制や施工能力を評価する重要な項目です。

完成工事高(X1)が会社の規模を示す指標であるのに対し、技術力(Z)は「どのような技術者を確保し、どのような施工体制を構築しているか」を評価する項目といえます。

経審では、1級施工管理技士や2級施工管理技士、技術士、建築士などの資格者が評価対象となり、保有資格や技術者構成によって評価結果が変わります。また、元請完成工事高も評価対象となるため、資格者数だけでなく施工実績も重要な要素となります。

一方で、建設業許可制度と経審では技術者評価の考え方が異なる部分もあります。そのため、営業所技術者等として認められていることと、経審における技術力評価を同じものとして考えないことが重要です。

また、技術力(Z)は短期間で大幅に改善できるものではありません。資格取得には時間がかかり、技術者育成や技術継承も継続的な取組みが必要です。しかし、計画的な資格取得支援や若手育成を行うことで、中長期的な評価向上につなげることができます。

経審対策という視点だけでなく、将来の事業継続や組織づくりという観点からも、自社の技術者構成を見直し、継続的な人材育成を進めていくことが重要です。

 

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