経営事項審査(経審) 社会性等(W)の評価と点数の考え方を行政書士が解説

経営事項審査(経審)の結果通知書を見ると、「W」という評価項目が記載されています。

Wは「社会性等」を評価する項目であり、建設会社の法令遵守体制や労働環境の整備状況、人材育成への取組みなどを評価するための指標です。完成工事高(X1)や技術力(Z)が会社の規模や施工能力を評価する項目であるのに対し、Wは会社の組織体制や社会的な信頼性を評価する項目といえます。

実際に経審結果を確認した際、

「W点とは何を評価しているのか」

「建設キャリアアップシステム(CCUS)は点数に影響するのか」

「CPDや防災協定はどのように評価されるのか」

「ISO認証を取得すると加点されるのか」

といった疑問を持つ建設会社は少なくありません。

また、完成工事高(X1)の増加や技術力(Z)の向上には時間がかかる一方で、Wの評価項目の中には比較的取り組みやすいものもあります。そのため、経審対策を考える際には、まず社会性等(W)の仕組みを理解し、自社で活用できる評価項目がないかを確認することが重要です。

近年は建設業界全体で働き方改革や人材確保が重要な課題となっており、経審においても建設キャリアアップシステム(CCUS)や継続教育(CPD)など、人材育成や労働環境整備に関する取組みが評価対象となっています。そのため、Wは単なる加点項目ではなく、会社の将来性や組織力を示す指標としての意味も持っています。

この記事では、経営事項審査における社会性等(W)の仕組みや評価項目、建設キャリアアップシステム(CCUS)やCPD、防災協定、ISO認証との関係、そしてW点を向上させるための考え方について詳しく解説します。

社会性等(W)だけでなく、経営事項審査(経審)の全体像について詳しく知りたい方は、「経営事項審査(経審)とは?P点の仕組みや評価項目を解説」もあわせてご覧ください。

目次

第1章 社会性等(W)とは

社会性等(W)とは、経営事項審査(経審)において建設会社の法令遵守状況や労働環境の整備状況、人材育成への取組みなどを評価する項目です。

完成工事高(X1)が会社の規模を評価し、技術力(Z)が施工能力や技術者体制を評価するのに対し、社会性等(W)は会社の組織体制や社会的信用力を評価する項目といえます。

公共工事では、単に工事を施工できるだけではなく、法令を遵守し、適切な雇用管理や安全管理を行っていることが求められます。そのため経審においても、売上や技術力だけでなく、企業として適切な体制を整備しているかどうかが評価対象となっています。

実際に経審結果通知書を見ると、W点は独立した評価項目として記載されています。

完成工事高(X1)のように売上を増やせば向上するものではなく、また技術力(Z)のように資格取得だけで改善できるものでもありません。

会社としてどのような取組みを行っているかによって評価が決まるため、経営方針や組織運営の考え方が反映されやすい項目といえます。

例えば、

・建設キャリアアップシステム(CCUS)への取組み

・継続教育(CPD)への参加

・防災協定への加入

・ISO認証の取得

・法令遵守体制の整備

などは、社会性等(W)の評価に関係する代表的な項目です。

これらは単なる経審対策ではなく、建設会社としての信頼性向上や組織力強化にもつながる取組みです。

そのため、近年ではW点の重要性が以前より高まっているといわれています。

特に建設業界では、人材不足や高齢化への対応が大きな課題となっています。

若手技術者の育成や技能者情報の適切な管理、安全教育の実施などは、会社の将来を左右する重要なテーマです。

経審においても、こうした取組みを評価する仕組みが整備されており、社会性等(W)は単なる加点項目ではなく、建設会社の将来性を評価する指標としての意味を持っています。

また、社会性等(W)の特徴として、比較的取り組みやすい評価項目が含まれていることが挙げられます。

完成工事高を短期間で増やすことは容易ではありませんし、技術者育成にも一定の時間が必要です。

一方で、会社の取組みや制度活用によって改善できる項目も存在します。

そのため、経審対策を検討する際には、自社が活用できる評価項目を把握し、計画的に取り組んでいくことが重要です。

社会性等(W)は単なる点数ではなく、会社の組織力や将来性を示す指標でもあります。まずはW点がどのような考え方で評価されているのかを理解し、自社の取組みを見直すことが評価向上への第一歩となります。

第2章 社会性等(W)はどのように評価されるのか

社会性等(W)は、経営事項審査(経審)の中でも評価項目が多岐にわたることが特徴です。

完成工事高(X1)が売上規模、技術力(Z)が技術者体制を中心に評価するのに対し、社会性等(W)は建設会社の組織運営や法令遵守、人材育成への取組みなどを総合的に評価します。

そのため、単一の要素で決まる評価項目ではなく、複数の評価項目を積み上げることで点数が構成されています。

経審対策を考える際には、まずどのような項目が評価対象となっているのかを理解することが重要です。

2-1 法令遵守の状況が評価される

公共工事を受注する建設会社には、高い法令遵守意識が求められます。

そのため、経審においても建設業法や関係法令を遵守しているかどうかが評価対象となっています。

反対に、営業停止処分や監督処分などを受けた場合には評価へ影響することがあります。

公共工事は税金によって行われるため、発注機関としても法令遵守体制が整った会社を評価する仕組みとなっています。

2-2 社会保険等への加入状況も重要である

建設業界では、以前から社会保険未加入事業者が課題とされてきました。

そのため現在の経審では、

・健康保険

・厚生年金保険

・雇用保険

などへの加入状況が重要な評価項目となっています。

適切に加入し保険料を納付していることは、企業としての健全性や労務管理体制を示す要素でもあります。

また、公共工事の現場では社会保険加入が事実上の前提となっているケースも多く、経審においても重要な位置付けとなっています。

2-3 建設業経理士などの評価項目

社会性等(W)では、技術者だけでなく経理・管理体制に関する項目も評価対象となります。

その代表例が建設業経理士です。

建設業では一般企業とは異なる会計処理が求められる場面も多く、適切な財務管理が重要になります。

建設業経理士の配置は、会社の管理体制や経営基盤の整備状況を示す要素の一つとして評価されています。

中小建設会社では見落とされがちな項目ですが、経審対策として確認しておきたいポイントです。

2-4 人材育成に関する取組みも評価される

近年の経審では、人材育成に関する取組みの重要性が高まっています。

建設業界では技能者不足や高齢化が大きな課題となっており、若手人材の確保と育成が求められています。

そのため、

・建設キャリアアップシステム(CCUS)

・継続教育(CPD)

などの取組みが評価対象となっています。

これらは単なる経審対策ではなく、技能者情報の管理や技術力向上にもつながる制度です。

今後も重要性が高まる可能性があるため、制度内容を理解しておくことが重要です。

2-5 地域社会への貢献も評価対象となる

社会性等(W)では、地域社会への貢献に関する取組みも評価対象となります。

その代表例が防災協定です。

災害発生時には、建設会社が道路啓開や応急復旧などを担うケースがあります。

そのため、自治体や関係機関との防災協定への参加状況が評価対象となっています。

建設会社は単に工事を施工するだけでなく、地域インフラを支える役割も担っています。

経審においても、そのような社会的役割が評価される仕組みとなっています。

2-6 ISO認証など組織的な取組みも評価される

品質管理や環境管理に関する取組みも、社会性等(W)の評価項目に含まれています。

例えば、

・ISO9001

・ISO14001

などの認証取得は、会社として組織的な管理体制を整備していることを示す要素となります。

認証取得には一定のコストや運用負担が伴いますが、品質向上や業務改善につながるという側面もあります。

そのため、経審対策だけではなく、企業価値向上の取組みとして活用している建設会社も少なくありません。

社会性等(W)は、法令遵守、労務管理、人材育成、地域貢献、組織運営など幅広い観点から評価されます。そのため、単一の施策で大きく改善するものではなく、自社の取組みを積み重ねていくことが評価向上につながります。

第3章 社会性等(W)の主な評価項目

社会性等(W)は、経営事項審査(経審)の評価項目の中でも特に幅広い分野を対象としていることが特徴です。

完成工事高(X1)が売上規模を評価し、技術力(Z)が技術者や施工体制を評価するのに対し、社会性等(W)は企業としての組織力や信頼性を評価する項目です。

そのため、経審対策を考える際には、どの評価項目が自社に該当するのかを把握することが重要です。

ここでは、社会性等(W)の中でも代表的な評価項目について解説します。

3-1 法令遵守に関する評価

公共工事を受注する建設会社には、高い法令遵守意識が求められます。

そのため経審では、建設業法や関係法令を遵守しているかどうかが評価対象となっています。

例えば、

・監督処分の有無

・営業停止処分の有無

・法令違反の状況

などは評価へ影響する可能性があります。

公共工事は国や地方公共団体が発注するものであり、発注機関としてもコンプライアンス体制が整備された会社へ発注したいと考えています。

そのため、法令遵守は社会性等評価の基本となる重要な項目です。

3-2 社会保険・労働保険への加入

現在の建設業界では、社会保険への加入は当然の前提として考えられています。

そのため経審においても、

・健康保険

・厚生年金保険

・雇用保険

への加入状況が評価対象となっています。

社会保険への適切な加入は、従業員を雇用する企業としての基本的な責任でもあります。

また、公共工事の現場では元請企業や発注機関から加入状況の確認を求められることもあります。

そのため、社会保険への加入は経審対策だけでなく、建設会社として事業を継続していくうえでも重要な要素となっています。

3-3 建設業経理士の配置

社会性等(W)の評価項目の中には、建設業経理士に関する評価もあります。

建設業では工事進行基準や完成工事高の管理など、一般企業とは異なる会計処理が必要になることがあります。

そのため、建設業特有の会計知識を持つ建設業経理士の配置は、適切な経営管理体制を示す要素として評価されています。

特に経審では財務内容も評価対象となるため、経理体制の整備は会社全体の評価向上につながります。

中小建設会社では技術者資格に注目が集まりがちですが、管理部門の整備も重要なポイントです。

3-4 建設キャリアアップシステム(CCUS)

近年の経審で注目されている評価項目の一つが建設キャリアアップシステム(CCUS)です。

CCUSは、技能者の資格や就業履歴などを蓄積・管理する制度です。

建設業界では技能者不足や高齢化が進んでおり、技能者の適切な評価や処遇改善が課題となっています。

CCUSはその課題に対応するために整備された制度であり、経審においても評価対象となっています。

今後さらに普及が進む可能性があるため、建設会社として制度の内容を把握しておくことが重要です。

3-5 継続教育(CPD)

技術者の継続的な能力向上を目的とした制度として、CPD(Continuing Professional Development)があります。

建設業界では技術基準や法令が変化するため、資格取得後も継続的な学習が求められます。

そのため経審では、継続教育への取組みも評価対象となっています。

CPDは単なる加点項目ではなく、技術者の知識や技術を維持・向上させるための仕組みでもあります。

長期的に見れば、会社全体の技術力向上にもつながる重要な取組みといえます。

3-6 防災協定への参加

建設会社は地域インフラを支える重要な役割を担っています。

特に災害発生時には、

・道路啓開

・応急復旧

・災害対応工事

などを担当することがあります。

そのため、自治体や関係機関との防災協定への参加状況も評価対象となっています。

防災協定は経審の加点だけを目的とするものではありません。

地域社会への貢献や社会的責任を果たす活動としても重要な意味を持っています。

3-7 ISO認証などの組織的な取組み

社会性等(W)では、ISO認証などの組織的な取組みも評価対象となっています。

代表的なものとして、

・ISO9001(品質マネジメント)

・ISO14001(環境マネジメント)

などがあります。

これらの認証は、会社として一定の管理体制を構築していることを示すものです。

取得や維持にはコストや手間がかかりますが、品質向上や業務改善につながるというメリットもあります。

また、発注者や取引先からの信頼向上につながる場合もあります。

社会性等(W)は、このように法令遵守、労務管理、人材育成、地域貢献、組織運営など幅広い項目によって構成されています。そのため、自社が活用できる評価項目を把握し、計画的に取り組むことが評価向上への近道となります。

第4章 なぜ社会性等(W)が重要視されているのか

経営事項審査(経審)の評価項目の中でも、近年特に重要性が高まっているのが社会性等(W)です。

以前は、完成工事高(X1)や技術力(Z)に比べると、Wは補助的な評価項目として考えられることもありました。

しかし現在では、建設業界を取り巻く環境の変化により、社会性等(W)が持つ意味は大きく変わっています。

公共工事を発注する国や地方公共団体は、単に工事を施工できる会社を求めているわけではありません。

法令を遵守し、適切な雇用管理を行い、継続的に人材育成へ取り組みながら、地域社会へ貢献できる企業であることも重視されています。

そのため、経審においても企業としての組織力や社会的責任を評価する仕組みが整備されてきました。

4-1 人材不足への対応が求められている

建設業界では長年にわたり人材不足が課題となっています。

特に技能者の高齢化が進んでおり、若手人材の確保や育成は多くの建設会社に共通する経営課題となっています。

国土交通省も建設業の担い手確保を重要な政策課題として位置付けており、建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及や継続教育(CPD)の推進などが進められています。

社会性等(W)では、こうした人材育成への取組みが評価対象となっています。

単に現在の技術力を評価するだけではなく、将来に向けて技術者や技能者を育成できる体制が整っているかどうかも重視されているのです。

4-2 公共工事に求められるコンプライアンス意識

近年は企業のコンプライアンスに対する社会的な要求も高まっています。

建設業界においても、法令違反や不適切な労務管理が発生した場合には、社会的信用を大きく失う可能性があります。

公共工事は税金によって行われるため、発注機関としても適切な企業へ発注したいと考えています。

そのため経審では、

・法令遵守

・社会保険加入

・労務管理体制

などが評価対象となっています。

社会性等(W)は、企業としての信頼性を評価する項目として重要な役割を担っています。

4-3 品質確保と安全管理の重要性

建設工事は完成すれば終わりではありません。

完成後も長期間にわたり社会インフラとして利用されるため、高い品質と安全性が求められます。

そのため、

・ISO認証の取得

・継続教育(CPD)

・組織的な品質管理

などの取組みが重視されています。

これらは単なる経審対策ではなく、施工品質の向上や事故防止にもつながります。

発注者の立場から見ても、品質管理体制が整備された会社へ工事を発注したいと考えるのは自然なことです。

社会性等(W)は、そのような企業努力を評価する仕組みの一つといえます。

4-4 地域社会を支える役割が期待されている

建設会社は工事を行うだけの存在ではありません。

災害発生時には道路啓開や応急復旧を担い、地域インフラを支える重要な役割を果たしています。

そのため、防災協定への参加など地域社会への貢献活動も評価対象となっています。

特に地震や台風などの自然災害が発生した際には、建設会社の迅速な対応が求められます。

社会性等(W)は、そのような地域貢献活動を評価することで、地域に根差した建設会社を支援する役割も果たしています。

4-5 企業の将来性を評価する指標でもある

完成工事高(X1)は現在の事業規模を示し、技術力(Z)は現在の施工能力を示します。

一方で、社会性等(W)は企業の将来性を評価する指標としての側面も持っています。

例えば、

・若手技術者の育成

・技能者情報の管理

・継続教育への参加

・組織的な品質管理

などは、短期間で成果が出るものではありません。

継続的に取り組むことで初めて成果につながります。

そのため、W点が高い会社は、将来に向けた組織づくりや人材育成に積極的に取り組んでいる会社であるとも考えられます。

社会性等(W)が重視される背景には、建設業界の人材不足、コンプライアンス強化、品質確保、地域貢献などさまざまな要因があります。経審におけるWは単なる加点項目ではなく、建設会社の組織力や将来性を評価するための重要な指標として位置付けられているのです。

第5章 社会性等(W)を向上させるための考え方

社会性等(W)は、経営事項審査(経審)の評価項目の中でも比較的改善に取り組みやすい項目といわれています。

完成工事高(X1)は受注実績を積み上げる必要があり、技術力(Z)は資格取得や技術者育成に時間がかかります。

一方で、社会性等(W)は会社の制度整備や組織的な取組みによって改善できる項目が多く含まれています。

もっとも、単純に加点項目を増やせば良いというものではありません。

自社の事業規模や経営方針に応じて、無理なく継続できる取組みを進めることが重要です。

5-1 まずは現在の評価状況を確認する

社会性等(W)の改善を考える際には、まず現在の経審結果通知書を確認することが重要です。

どの評価項目で点数を取得しているのか、どの項目に改善余地があるのかを把握しなければ、効果的な対策を立てることはできません。

例えば、

・既にCCUSへ取り組んでいる

・防災協定へ参加している

・建設業経理士が在籍している

といった場合には、評価内容を再確認することで改善のヒントが見つかることがあります。

反対に、制度自体を活用していない項目については、導入可能性を検討することが重要です。

5-2 社会保険や法令遵守体制を維持する

社会性等(W)の評価を考えるうえで最も基本となるのが法令遵守です。

社会保険や労働保険への適切な加入はもちろん、建設業法をはじめとする関係法令を遵守することが前提となります。

経審対策という観点だけでなく、公共工事へ参加する建設会社として信頼を維持するためにも重要な取組みです。

また、法令違反や行政処分は評価へ影響する可能性があるため、日頃から適切な管理体制を整備しておくことが求められます。

5-3 建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用する

近年の経審において注目されているのが建設キャリアアップシステム(CCUS)です。

CCUSは技能者の資格や就業履歴を管理する制度であり、人材育成や処遇改善にもつながる仕組みとして位置付けられています。

建設業界全体として普及が進められており、今後も重要性が高まる可能性があります。

経審対策としてだけではなく、自社の技能者管理体制を整備する手段としても活用を検討する価値があります。

5-4 継続教育(CPD)への取組みを進める

技術者の知識や技術は資格取得後も継続的に更新していく必要があります。

そのため、継続教育(CPD)への取組みも社会性等(W)の評価項目となっています。

法令改正や技術基準の変更に対応するためには、継続的な学習が欠かせません。

また、CPDは経審対策だけでなく、技術者自身の能力向上にもつながります。

会社として学習環境を整備することで、組織全体の技術力向上も期待できます。

5-5 防災協定や地域貢献活動を検討する

建設会社は地域社会を支える重要な役割を担っています。

そのため、防災協定への参加など地域貢献活動も評価対象となっています。

実際に災害発生時には、建設会社が道路啓開や応急復旧を担当することもあります。

防災協定への参加は経審の加点だけを目的とするものではなく、地域との信頼関係を構築する機会にもなります。

自治体や業界団体との関係強化という観点からも重要な取組みといえます。

5-6 ISO認証や管理体制の整備を検討する

一定規模以上の建設会社では、ISO認証の取得を検討するケースもあります。

ISO9001やISO14001は、品質管理や環境管理に関する国際規格です。

認証取得にはコストや運用負担も伴いますが、組織的な管理体制を整備するきっかけとなります。

また、取引先や発注者からの信頼向上につながる場合もあります。

経審対策だけでなく、企業価値向上の観点から導入を検討する会社も少なくありません。

5-7 短期的な加点ではなく組織づくりを意識する

社会性等(W)は、比較的改善しやすい項目といわれることがあります。

しかし、本来の目的は単なる加点ではありません。

人材育成、法令遵守、品質管理、地域貢献などを通じて、建設会社としての組織力を高めることにあります。

そのため、

「今年の経審で何点上げるか」

という視点だけではなく、

「5年後も安定して事業を継続できる体制をどう作るか」

という視点で考えることが重要です。

継続的な取組みを行うことで、経審評価だけでなく企業としての競争力向上にもつながります。

社会性等(W)の向上は、単なる経審対策ではなく会社の組織力を高める取組みでもあります。自社の状況を把握したうえで、継続的に取り組める施策を選択し、長期的な視点で改善を進めていくことが重要です。

第6章 社会性等(W)に関するよくある誤解

社会性等(W)は、経営事項審査(経審)の評価項目の中でも比較的改善しやすい項目といわれています。

そのため、多くの建設会社がW点向上に取り組んでいますが、一方で評価制度について誤解されているケースも少なくありません。

誤った認識のまま経審対策を進めると、期待したほど評価が向上しなかったり、本来優先すべき取組みを見落としてしまったりする可能性があります。

ここでは、実務上よく見られる誤解について解説します。

6-1 CCUSに登録すれば大幅に点数が上がる

近年は建設キャリアアップシステム(CCUS)が注目されているため、

「CCUSへ登録すれば大きく加点される」

と考える方もいます。

しかし、社会性等(W)は複数の評価項目によって構成されています。

そのため、CCUSだけで高いW点が決まるわけではありません。

CCUSは重要な取組みの一つですが、法令遵守や社会保険加入、人材育成なども含めて総合的に評価されます。

経審対策としては、CCUSだけに注目するのではなく、全体の評価項目を把握することが重要です。

6-2 防災協定に参加すれば十分である

防災協定は地域貢献活動として評価される項目です。

そのため、

「防災協定へ参加しているから問題ない」

と考えられることがあります。

しかし、防災協定も社会性等(W)の一要素に過ぎません。

防災協定だけで高い評価が得られるわけではなく、他の評価項目との組み合わせが重要になります。

また、防災協定は本来、災害時に地域社会へ貢献するための取組みです。

加点だけを目的とするのではなく、地域との信頼関係構築という視点も大切です。

6-3 ISO認証を取得すれば安心である

ISO9001やISO14001などの認証取得は、組織的な管理体制を示すものとして評価されます。

しかし、

「ISOを取得したから経審対策は完了」

というわけではありません。

社会性等(W)は複数の評価項目から構成されているため、ISO認証だけで評価が決まるものではありません。

また、認証取得後も適切な運用を継続することが重要です。

認証取得そのものを目的とするのではなく、品質向上や業務改善へ活用することが本来の目的といえます。

6-4 社会性等(W)は短期間で大きく改善できる

完成工事高(X1)や技術力(Z)と比較すると、社会性等(W)は改善しやすい項目といわれます。

しかし、それは短期間で大幅な改善が可能という意味ではありません。

例えば、

・CCUSの導入

・CPDへの継続参加

・ISO認証の取得

・人材育成体制の整備

などには一定の時間が必要です。

また、制度導入後も継続的な運用が求められます。

そのため、

「今年の経審だけ良くなればよい」

という考え方ではなく、中長期的な視点で取り組むことが重要です。

6-5 小規模な建設会社には関係がない

社会性等(W)は大規模な建設会社だけの評価項目だと思われることがあります。

しかし、実際には中小建設会社にも関係する項目です。

例えば、

・社会保険加入

・法令遵守

・人材育成

などは会社規模に関係なく重要です。

また、防災協定やCCUSなどについても、中小建設会社が取り組んでいる事例は数多くあります。

そのため、

「会社が小さいから関係ない」

と考えるのではなく、自社で活用できる制度を確認することが重要です。

6-6 W点だけを上げればよい

経審対策を考える際、

「W点が改善しやすいならWだけを上げればよい」

と考えることがあります。

しかし、経審は完成工事高(X1)、利益率等(X2)、経営状況(Y)、技術力(Z)、社会性等(W)を総合的に評価する制度です。

そのため、W点だけを見ていても高いP点につながるとは限りません。

例えば、

・技術者育成によるZ点向上

・財務内容改善によるY点向上

・完成工事高の増加によるX1向上

なども重要です。

経審対策では、社会性等(W)を含めた全体のバランスを考えることが求められます。

社会性等(W)は比較的取り組みやすい評価項目が多い一方で、単一の制度や取組みだけで大きく改善できるものではありません。制度の趣旨を理解し、自社の組織づくりや人材育成とあわせて継続的に取り組むことが、長期的な評価向上につながります。

第7章 許可取得後の管理

社会性等(W)は、一度評価を受ければ終わりというものではありません。

建設キャリアアップシステム(CCUS)への取組みや継続教育(CPD)、防災協定、各種認証制度などは継続的な運用が求められます。また、社会保険加入状況や法令遵守体制についても日頃から適切に管理していくことが重要です。

経営事項審査(経審)は毎年の決算にあわせて受審することが一般的であり、評価項目の状況によって点数は変動します。そのため、経審結果通知書を確認しながら、自社の強みや改善点を把握し、計画的に取り組みを進めていくことが重要です。

許可取得後の管理体制について詳しく知りたい方は、建設業許可取得後の管理についてもあわせてご覧ください。

まとめ

社会性等(W)は、経営事項審査(経審)において建設会社の法令遵守体制や労務管理、人材育成、地域貢献、組織運営などを評価する重要な項目です。

完成工事高(X1)が会社の規模を示し、技術力(Z)が施工能力を示すのに対し、社会性等(W)は企業としての信頼性や組織力を評価する項目といえます。

経審では、

・社会保険等への加入

・建設業経理士の配置

・建設キャリアアップシステム(CCUS)

・継続教育(CPD)

・防災協定への参加

・ISO認証の取得

など、さまざまな取組みが評価対象となっています。

これらは単なる経審対策ではなく、建設会社として継続的に成長していくための基盤づくりにもつながります。

また、社会性等(W)は比較的改善に取り組みやすい項目が多い一方で、特定の制度だけを導入すれば大幅に評価が向上するというものではありません。

重要なのは、自社の現状を把握したうえで、法令遵守、人材育成、品質管理、地域貢献などに継続的に取り組むことです。

近年の建設業界では、人材不足や高齢化への対応、働き方改革の推進などが重要な課題となっています。経審においても、そうした課題に対応するための取組みが評価される仕組みとなっています。

社会性等(W)は単なる加点項目ではなく、会社の将来性や組織力を示す指標でもあります。経審結果通知書を確認しながら、自社が活用できる制度や取組みを整理し、長期的な視点で評価向上を目指していくことが重要です。

各項目の詳細については、以下の記事で詳しく解説しています。

CCUS(建設キャリアアップシステム)とは?
CPDとは?
防災協定とは?
ISOとは?

 

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