個人事業主として長年建設業を営んでいるものの、「白色申告でも建設業許可は取得できるのだろうか」と不安に感じている方は少なくありません。
特に、実務経験を証明する必要がある場合は、確定申告書だけでなく請求書や通帳などの資料も必要となるため、どのように準備すればよいか悩まれるケースがあります。
今回は、東京都荒川区で管工事業を営む個人事業主様からご依頼いただいた建設業許可取得事例をご紹介します。
平成13年の創業以来、長年にわたり管工事業に従事されていましたが、近年は請負金額の大きな案件も増えてきたことから建設業許可の取得を検討されました。
白色申告であったため財産的要件の整理や貸借対照表の作成が必要となりましたが、実務経験の証明資料や営業所要件を一つずつ確認し、建設業許可申請を進めることができました。
この記事では、白色申告の個人事業主が管工事業の建設業許可を取得した事例について解説します。
目次
ご相談時の状況
お問い合わせをいただいたのは令和7年3月でした。
お客様は東京都荒川区で管工事業を営む個人事業主の方で、平成13年の創業以来、20年以上にわたり給排水設備工事や空調設備工事などの管工事に従事されていました。
長年にわたり安定して事業を継続されていましたが、近年は請負金額の大きな工事を受注する機会が増えており、今後の事業拡大を見据えて建設業許可の取得を検討されていました。
これまで建設業許可がなくても事業を継続することはできていましたが、500万円以上の工事を受注するためには建設業許可が必要となります。
元請会社から許可取得を求められる場面も増えてきたことから、本格的に申請準備を進めることとなりました。
一方で、お客様には大きな不安がありました。
それは長年白色申告で事業を行っていたことです。
建設業許可の取得には財産的要件や実務経験の証明が必要となりますが、白色申告の場合は青色申告のような貸借対照表が作成されていないことも多く、「本当に許可が取得できるのだろうか」という不安をお持ちでした。
また、営業所技術者についてはお客様ご自身の実務経験で要件を満たせる見込みでしたが、そのためには過去の確定申告書や請求書、通帳などを活用して長期間の実務経験を証明する必要がありました。
そこでまずは、
・実務経験の証明が可能か
・財産的要件を満たせるか
・営業所として認められるか
という点を一つずつ確認しながら、建設業許可取得の可能性を検討することとなりました。
個人事業主でも建設業許可は取得できるのか
建設業許可というと法人が取得するものというイメージを持たれる方も少なくありません。
しかし、建設業許可は法人だけでなく個人事業主でも取得することが可能です。
実際に東京都でも多くの個人事業主が建設業許可を取得し、事業を継続しています。
今回のお客様も個人事業主として平成13年に創業し、長年にわたり管工事業を営んでいました。
そのため、個人事業主であること自体は建設業許可取得の障害にはなりませんでした。
建設業許可で重要なのは法人か個人かではなく、
・常勤役員等の要件
・営業所技術者の要件
・財産的要件
・営業所要件
を満たしているかどうかです。
個人事業主の場合、法人のように代表取締役はいませんが、事業主本人が建設業に関する十分な経営経験を有していれば常勤役員等の要件を満たすことができます。
また、営業所技術者についても事業主本人の資格や実務経験によって要件を満たすことが可能です。
今回のお客様は平成13年から管工事業を営んでおり、実務経験も非常に豊富でした。
そのため、要件そのものについては大きな問題はないと考えられました。
一方で、建設業許可では「経験があること」と「経験を証明できること」は別の問題です。
特に個人事業主の場合は、過去の確定申告書や請求書などをどこまで保管しているかによって申請の難易度が大きく変わります。
今回の案件でも、長年の実務経験をどのような資料で証明するかが重要なポイントとなりました。
次に、実際にどのような資料を用いて実務経験を証明したのかをご紹介します。
実務経験の証明方法
今回の案件では、営業所技術者及び常勤役員等の要件について、お客様ご本人の実務経験によって証明することとなりました。
管工事業の場合、資格がなくても10年以上の実務経験を証明できれば営業所技術者の要件を満たすことができます。
また、個人事業主として長年事業を営んでいる場合は、事業主としての経験により常勤役員等の要件も満たすことが可能です。
今回のお客様は平成13年から管工事業を営んでおり、実務経験そのものについては十分な年数がありました。
しかし、建設業許可申請では単に「長年仕事をしていた」という説明だけでは認められません。
実際に管工事業へ従事していたことを客観的な資料によって証明する必要があります。
そこで今回は、
・確定申告書
・請求書
・通帳
を中心に資料を整理しました。
まず、事業を継続していたことを確認するために過去10年分の確定申告書を確認しました。
そのうえで、管工事に関する請求書と通帳の入金記録を照合し、実際に工事を請け負っていたことを確認しました。
建設業許可の実務経験証明では、請求書だけでなく入金が確認できる資料も重要になります。
請求書が存在していても実際に工事代金が支払われたことを確認できなければ説明が難しくなるためです。
今回のお客様は長年事業を継続されていたこともあり、多くの資料が保管されていました。
そのため、請求書と通帳を照合しながら管工事業として説明可能な工事実績を整理していきました。
実務経験年数自体は十分にあったため、最大の課題は経験の有無ではなく、過去の資料をどのように整理して証明資料としてまとめるかという点でした。
建設業許可申請では、実務経験が豊富な方ほど対象期間が長くなるため、早い段階から資料収集を始めることが重要です。
次に、今回の案件で特徴的だった白色申告と財産的要件への対応についてご紹介します。
白色申告で問題となった点
今回の案件で特徴的だったのは、お客様が長年にわたり白色申告で事業を行っていたことです。
建設業許可の相談を受ける際、「白色申告でも建設業許可は取得できますか」という質問をいただくことがあります。
しかし、結論からいうと、白色申告であることだけを理由に建設業許可が取得できなくなるわけではありません。
今回のお客様についても、白色申告であったこと自体は建設業許可取得の障害にはなりませんでした。
もっとも、白色申告の場合は青色申告と比較して申請準備に時間がかかることがあります。
特に個人事業主が一般建設業許可を取得する場合は、財産的要件を証明する必要があります。
預金残高によって500万円以上の資金を証明する方法もありますが、今回は事業の実態を反映した資料で申請を進めることとしました。
そのため、確定申告書の内容をもとに貸借対照表を作成し、財産的要件を確認する作業を行いました。
青色申告の場合は貸借対照表が作成されていることが多いため比較的確認しやすいのですが、白色申告の場合は改めて資産や負債の内容を整理しなければならないことがあります。
今回の案件でも、確定申告書や預金資料などを確認しながら貸借対照表を作成し、財産的要件を満たしていることを確認しました。
また、白色申告の場合は帳簿や資料の保存状況によって実務経験証明の難易度も大きく変わります。
実務経験の証明では請求書や通帳が重要な資料となるため、過去の資料が残っていないと申請が難しくなることがあります。
その点、お客様は平成13年の創業以来長年にわたり事業を継続されており、必要な資料も保管されていたため、実務経験証明と財産的要件の両方について必要な資料を揃えることができました。
白色申告であっても、必要な資料が揃っていれば建設業許可を取得できるケースは少なくありません。
今回の案件は、白色申告であることよりも、必要な資料をどれだけ準備できるかが重要であることを改めて確認できた事例となりました。
次に、自宅兼営業所として申請した営業所要件についてご紹介します。
自宅兼営業所の確認
建設業許可を取得するためには、営業所要件を満たしていることも重要です。
今回のお客様は個人事業主であり、ご自身が所有する3階建ての戸建住宅を拠点として事業を行っていました。
そのため、建設業許可申請では自宅兼営業所として申請を行うことになりました。
建設業許可では、自宅を営業所として使用すること自体は認められています。
しかし、単に自宅の住所を営業所として記載すればよいわけではありません。
実際に建設業の営業活動を行う場所として使用されていることや、営業所としての独立性が確認できることが求められます。
今回のお客様の場合は、3階建ての戸建住宅のうち1階の一室を営業所として使用していました。
そのため、どの部分を営業所として利用しているのかを明確にするため、平面図を作成し申請書類へ添付しました。
また、営業所内部の状況についても確認を行い、
・事務机
・書類保管場所
・電話
・パソコン
など、建設業の営業活動を行うために必要な設備が整っていることを確認しました。
さらに、建物はお客様ご本人の所有であったため、営業所の使用権限についても問題ありませんでした。
賃貸物件の場合は賃貸借契約書などによって使用権限を確認する必要がありますが、今回は自宅所有であったため比較的スムーズに営業所要件を確認することができました。
個人事業主の場合、自宅兼営業所で建設業許可を取得するケースは少なくありません。
一方で、生活スペースと営業所スペースの区分が分かりにくい場合や、営業所として必要な設備が整っていない場合には追加資料を求められることもあります。
そのため、自宅兼営業所で申請する場合は、営業所として使用している場所を明確に説明できるよう準備しておくことが重要です。
次に、当事務所が行った対応と申請準備についてご紹介します。
当事務所の対応
今回の案件では、建設業許可の要件そのものよりも、長年にわたる実務経験をどのように証明するか、そして白色申告の状態から財産的要件をどのように整理するかが重要なポイントとなりました。
まず、常勤役員等及び営業所技術者の要件について確認を行いました。
お客様は平成13年から管工事業を営んでおり、実務経験年数は十分にありました。
そこで、過去10年分の確定申告書を確認し、事業継続の状況を整理しました。
そのうえで、請求書と通帳の入金記録を照合しながら、管工事業として説明可能な工事実績を抽出しました。
実務経験証明では、単に請求書を提出するだけではなく、実際に工事代金の入金が確認できる資料も重要になります。
そのため、請求書と通帳を一件ずつ確認しながら資料整理を進めました。
また、財産的要件については、白色申告であったため貸借対照表が作成されていませんでした。
そこで、確定申告書や預金資料をもとに貸借対照表を作成し、一般建設業許可に必要となる財産的要件を満たしていることを確認しました。
営業所要件については、自宅兼営業所として使用している戸建住宅の状況を確認し、平面図や営業所写真を準備しました。
営業所として使用している部屋や設備の状況についても整理し、東京都へ説明できる状態にしました。
このように、実務経験証明、財産的要件、営業所要件を一つずつ整理しながら申請準備を進めた結果、令和8年6月中旬に東京都へ建設業許可申請を行うことができました。
次に、申請後の結果についてご紹介します。
結果
令和7年3月にお問い合わせをいただき、その後、実務経験証明資料の整理や財産的要件の確認を進めました。
今回の案件では、長年の実務経験があること自体は大きな問題ではありませんでしたが、その経験を客観的な資料によって証明する作業に時間を要しました。
また、白色申告であったため、建設業許可申請に必要となる貸借対照表の作成や財産的要件の整理についても慎重に進める必要がありました。
さらに、自宅兼営業所として申請するため、営業所の使用状況や平面図の作成などについても確認を行いました。
こうした準備を進めた結果、令和8年6月中旬に東京都へ建設業許可申請を行うことができました。
本記事執筆時点では審査中ではあるものの、実務経験、財産的要件、営業所要件のいずれについても必要な資料を整えたうえで申請を行っており、令和8年7月末頃の許可取得を見込んでいます。
今回の案件では、
・個人事業主
・白色申告
・実務経験による要件証明
・自宅兼営業所
という、個人事業主の建設業許可申請でよく見られる論点が複数ありました。
一方で、長年にわたり事業を継続されていたことから必要資料も比較的揃っており、一つずつ課題を整理しながら申請準備を進めることができました。
建設業許可は、事業規模が拡大し500万円を超える工事を受注するための重要な手続きです。
今回のお客様についても、許可取得後はこれまで以上に受注機会が広がることが期待されます。
次に、同じような個人事業主の方が建設業許可を取得する際の注意点についてご紹介します。
同じようなケースで注意すること
今回のように個人事業主として長年建設業を営んでいる方は、建設業許可の要件そのものは満たしているケースが少なくありません。
一方で、許可取得の際に問題となるのは「経験があること」ではなく、「経験を証明できること」です。
特に実務経験によって営業所技術者の要件を証明する場合は、過去の請求書や通帳などの資料が必要になります。
長年事業を続けている方ほど対象期間が長くなるため、申請を検討し始めた段階で資料の有無を確認することをおすすめします。
また、個人事業主の場合は白色申告で事業を行っているケースもあります。
白色申告であっても建設業許可を取得することは可能ですが、財産的要件を確認するために追加の資料整理が必要になることがあります。
そのため、「白色申告だから許可は取れない」と考える必要はありませんが、早めに状況を確認することが重要です。
営業所要件についても注意が必要です。
個人事業主の場合は自宅兼営業所で申請するケースが多くありますが、営業所として使用している場所が明確であることや、建設業の営業活動を行うための設備が整っていることを説明できなければなりません。
自宅だから問題ないというわけではなく、営業所として認められる状態になっているかを事前に確認する必要があります。
今回のお客様のように、長年にわたり事業を継続している場合は、実務経験や経営経験そのものが問題になることは多くありません。
しかし、資料整理には想像以上に時間がかかることがあります。
建設業許可の取得を検討している場合は、工事受注の予定が決まってから慌てて準備するのではなく、余裕をもって資料確認を始めることをおすすめします。
まとめ
個人事業主であっても、建設業許可の要件を満たしていれば東京都知事許可を取得することが可能です。
今回の事例では、平成13年から管工事業を営む個人事業主の方が、実務経験を活用して管工事業の建設業許可取得を目指しました。
実務経験年数は十分にありましたが、建設業許可申請では経験があることだけでは足りません。
過去の確定申告書、請求書、通帳などを活用し、実際に管工事業へ従事していたことを客観的な資料によって証明する必要がありました。
また、白色申告であったため、財産的要件を確認するための貸借対照表作成も必要となりました。
さらに、自宅兼営業所として申請するため、営業所として使用する部屋や設備の状況についても整理し、営業所要件を満たしていることを確認しました。
今回のケースは、
・個人事業主でも建設業許可を取得できること
・白色申告でも建設業許可を取得できること
・実務経験証明では資料の保存が重要であること
を示す事例となりました。
建設業許可の取得を検討している個人事業主の方の中には、
「白色申告だから難しいのではないか」
「資格がないので許可は取れないのではないか」
と考えている方も少なくありません。
しかし、実務経験や経営経験が十分にあり、必要な資料を揃えることができれば許可取得が可能なケースも多くあります。
当事務所では、個人事業主の建設業許可申請や実務経験証明による許可取得のご相談にも対応しております。
管工事業をはじめ建設業許可の取得をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。









