東京都知事許可から国土交通大臣許可への許可換え新規申請は、通常の更新や業種追加とは異なり、営業所体制や技術者配置を含めて改めて許可要件を確認する必要があります。
また、特定建設業許可を同時に取得する場合は、営業所技術者や財産的要件などについても慎重な検討が必要になります。
今回は、東京都知事許可(一般建設業)を取得していた会社様が、従たる営業所の新設に伴い国土交通大臣許可へ移行するとともに、電気通信工事業について特定建設業許可を取得した事例をご紹介します。
目次
ご相談時の状況
ご相談をいただいたのは令和7年7月でした。
お客様は東京都内で電気工事業及び電気通信工事業を営む会社で、当時は東京都知事許可による一般建設業許可を取得していました。
主力事業は電気通信工事業であり、大手企業からの案件も数多く手掛けていましたが、近年は工事規模の拡大に伴い、より大きな案件への参入を検討されていました。
その中で課題となったのが特定建設業許可です。
電気通信工事業については、今後さらに大型案件の受注を目指すため、一般建設業許可ではなく特定建設業許可の取得が必要な状況となっていました。
一方で、特定建設業許可を取得するためには営業所技術者の配置など、一般建設業許可よりも厳しい要件を満たさなければなりません。
当初、お客様の営業所技術者は実務経験10年以上の従業員のみであり、特定建設業許可の要件を満たす監理技術者資格者は在籍していませんでした。
そのため、新たに監理技術者資格を有する技術者を採用することとなりました。
しかし、採用予定者は地方在住であり、東京都への転居が難しい状況でした。
そこで本社へ配置するのではなく、採用予定者の居住地付近に従たる営業所を設置し、その営業所に営業所技術者として配置する方法を検討することになりました。
結果として、
・本社は電気工事業(一般建設業)
・従たる営業所は電気工事業(一般建設業)及び電気通信工事業(特定建設業)
という体制で許可取得を目指すこととなりました。
また、従たる営業所の新設に伴い、東京都知事許可ではなく国土交通大臣許可への許可換え新規申請が必要となるため、営業所体制の整理と許可区分の検討を並行して進めることとなりました。
なぜ大臣許可が必要になったのか
建設業許可には、都道府県知事許可と国土交通大臣許可の二種類があります。
一般的には、一つの都道府県内のみに営業所を設置する場合は都道府県知事許可、複数の都道府県に営業所を設置する場合は国土交通大臣許可が必要となります。
今回のお客様は、当初から東京都知事許可による一般建設業許可を取得しており、電気工事業及び電気通信工事業を営んでいました。
しかし、主力事業である電気通信工事業については、今後さらに大型案件の受注を目指していました。
そのため、電気通信工事業について特定建設業許可を取得することが計画されました。
一方で、特定建設業許可を取得するために新たに採用した監理技術者資格者は地方在住であり、東京都の本社へ転居することが難しい状況でした。
建設業許可では、営業所技術者は営業所ごとに常勤しなければなりません。
そのため、本社へ配置することができない以上、新たな営業所を設置したうえで配置する必要がありました。
そこで、監理技術者が勤務できる場所に従たる営業所を設置し、
・本社は電気工事業(一般建設業)
・従たる営業所は電気工事業(一般建設業)及び電気通信工事業(特定建設業)
という営業所体制を構築することとなりました。
従たる営業所を東京都以外に設置することとなったため、許可区分も東京都知事許可から国土交通大臣許可へ変更する必要があります。
このように、今回の案件では単に特定建設業許可を取得するだけではなく、
・従たる営業所の新設
・監理技術者の配置
・東京都知事許可から国土交通大臣許可への移行
を同時に進める必要がありました。
そのため、通常の業種追加や更新申請とは異なり、営業所体制全体を見直したうえで許可換え新規申請を行うことになりました。
次に、一般建設業と特定建設業の違いについて解説します。
一般建設業と特定建設業の違い
建設業許可には、一般建設業許可と特定建設業許可があります。
現在建設業許可を取得している会社の多くは一般建設業許可ですが、一定規模以上の工事を請け負う場合には特定建設業許可が必要になることがあります。
一般建設業と特定建設業の違いは、元請として下請業者へ発注する金額にあります。
例えば、発注者から直接工事を請け負う元請業者が、一つの工事について下請業者へ一定額以上の工事を発注する場合には特定建設業許可が必要となります。
そのため、会社の規模だけで一般建設業か特定建設業かが決まるわけではありません。
実際には、
・どのような工事を受注しているか
・元請として工事を管理しているか
・下請業者へどの程度発注しているか
といった点が重要になります。
今回のお客様は、電気通信工事業を主力事業としており、今後さらに大型案件の受注を予定していました。
将来的な受注規模や事業計画を検討した結果、一般建設業許可のままではなく、電気通信工事業について特定建設業許可を取得する方針となりました。
一方で、電気工事業については現在の事業内容や受注状況を踏まえ、引き続き一般建設業許可とすることが適切であると判断しました。
その結果、
・電気工事業 一般建設業
・電気通信工事業 特定建設業
という構成で申請を進めることになりました。
なお、特定建設業許可は一般建設業許可よりも要件が厳しくなります。
営業所技術者についても、一般建設業より高い要件が求められるため、事前に技術者体制を十分に確認する必要があります。
今回の案件でも、特定建設業許可取得にあたり、監理技術者資格を有する技術者の確保が重要なポイントとなりました。
次に、営業所技術者の配置計画と従たる営業所の設置についてご紹介します。
営業所技術者の配置計画
今回の案件では、特定建設業許可を取得するための営業所技術者の配置が重要なポイントとなりました。
一般建設業許可の場合と比較すると、特定建設業許可では営業所技術者に求められる要件が高くなるためです。
ご相談当初、本社には電気工事業について2級電気工事施工管理技士の資格を保有する技術者が在籍していました。
そのため、電気工事業の一般建設業許可については大きな問題はありませんでした。
一方で、電気通信工事業の特定建設業許可を取得するためには、一級電気通信工事施工管理技士などの国家資格を有し、監理技術者資格者証の交付を受けている技術者の配置が必要となります。
ご相談当初は、特定建設業許可の要件を満たす技術者が在籍していなかったため、新たに一級電気通信工事施工管理技士の資格及び監理技術者資格者証を有する技術者を採用することとなりました。
しかし、採用予定者は地方在住であり、東京都の本社へ転居することが難しい状況でした。
建設業許可では営業所技術者に常勤性が求められるため、遠隔地から本社の営業所技術者として配置することはできません。
そのため、本社へ配置するという選択肢ではなく、採用した技術者が勤務できる地域に新たな営業所を設置する方法を検討することとなりました。
結果として、従たる営業所を新設し、
・本社は電気工事業(一般建設業)
・従たる営業所は電気工事業(一般建設業)
・従たる営業所は電気通信工事業(特定建設業)
という営業所体制を構築することとなりました。
また、従たる営業所には監理技術者資格者証を有する技術者2名を配置し、電気通信工事業及び電気工事業の双方について要件を満たす体制を整えました。
今回の案件では、営業所技術者の資格要件そのものよりも、
・どの営業所に配置するか
・常勤性をどのように確保するか
・許可業種ごとに必要な技術者をどのように配置するか
という営業所体制全体の設計が重要なポイントとなりました。
技術者の採用から営業所の設置、許可区分の検討までを一体的に進めることで、特定建設業許可の取得に向けた体制を整えることができました。
次に、従たる営業所を新設した理由と、国土交通大臣許可への許可換え新規申請についてご紹介します。
従たる営業所を新設した理由
今回の案件では、新たに採用した監理技術者資格者証を有する技術者をどの営業所へ配置するかが大きな課題となりました。
建設業許可では、営業所技術者はその営業所に常勤していることが求められます。
そのため、資格者が在籍しているだけでは足りず、実際にその営業所へ勤務し、常勤性を確保できる体制を整えなければなりません。
今回採用した技術者は地方在住であり、東京都の本社へ転居することが難しい状況でした。
そのため、本社へ配置することは現実的ではなく、技術者が勤務可能な地域に新たな営業所を設置する方法を検討することとなりました。
結果として、従たる営業所を新設し、その営業所に監理技術者資格者証を有する技術者を配置する体制を構築しました。
従たる営業所を設置したことで、電気通信工事業の特定建設業許可に必要となる技術者配置要件を満たすことが可能となりました。
一方で、従たる営業所を設置することにより、建設業許可の区分にも影響が生じます。
建設業許可では、一つの都道府県内のみに営業所を設置する場合は都道府県知事許可となりますが、複数の都道府県に営業所を設置する場合は国土交通大臣許可が必要となります。
今回の案件では、本社と従たる営業所が異なる都道府県に所在することとなったため、従前の東京都知事許可を継続することはできませんでした。
そのため、
・東京都知事許可から国土交通大臣許可への許可換え新規申請
・電気通信工事業の特定建設業許可取得
を同時に進めることとなりました。
許可換え新規申請は、単なる更新申請とは異なり、営業所体制や技術者配置、財産的要件などについて改めて審査が行われます。
今回の案件では、本社及び従たる営業所の営業所要件についても確認を行い、賃貸借契約書などの資料を整理したうえで申請準備を進めました。
このように、特定建設業許可の取得をきっかけとして営業所体制を見直した結果、国土交通大臣許可への移行が必要となった事例でした。
次に、関東地方整備局への申請手続きと審査の流れについてご紹介します。
関東地方整備局への申請
営業所体制や技術者配置の整理が完了した後、国土交通大臣許可への許可換え新規申請の準備を進めました。
今回の案件では、
・東京都知事許可から国土交通大臣許可への許可換え新規
・電気通信工事業の特定建設業許可取得
・電気工事業の一般建設業許可継続
を同時に行う必要がありました。
そのため、通常の更新申請や業種追加申請と比較すると、確認事項や提出書類も多くなります。
まず、本社及び従たる営業所について営業所要件を確認し、それぞれの賃貸借契約書や営業所写真などを準備しました。
また、営業所技術者についても資格証や監理技術者資格者証、常勤性を確認するための社会保険関係資料などを整理しました。
財産的要件については、直近の決算書を確認したところ特定建設業許可の要件を十分に満たしており、大きな問題はありませんでした。
さらに、既存の東京都知事許可業者であったため、過去の許可関係書類や変更届出書の内容についても確認を行い、現在の会社情報との整合性を確認しました。
技術者の採用や営業所設置の準備に時間を要したため、実際の申請は令和8年3月末に関東地方整備局へ行いました。
関東地方整備局への申請では、東京都知事許可の更新とは異なり、提出資料や確認事項も多くなります。
そのため、事前に必要書類を整理し、営業所体制や技術者配置について説明できる状態で申請を行うことが重要です。
今回の案件では、申請前の段階で論点を整理できていたこともあり、大きな補正指示を受けることなく審査が進みました。
しかし、審査期間中には想定していなかった役員変更と令三使用人の変更が発生することとなり、追加対応が必要となりました。
次に、申請後に発生した役員変更と令三使用人変更への対応についてご紹介します。
申請中に発生した役員変更と令三使用人変更への対応
今回の案件では、関東地方整備局へ許可換え新規申請を行った後に、想定していなかった役員変更及び令三使用人の変更が発生しました。
通常、建設業許可申請では申請時点の内容をもとに審査が行われますが、審査期間中に会社の役員構成や営業所体制が変更となるケースもあります。
今回の会社は申請時点ではまだ東京都知事許可業者でした。
そのため、役員変更及び令三使用人の変更が発生した際には、まず東京都へ変更届出書を提出する必要がありました。
許可換え新規申請を行っているからといって、直ちに大臣許可業者になるわけではありません。
実際に国土交通大臣許可が許可となり、新しい許可番号が発番されるまでは東京都知事許可業者として扱われます。
そのため、審査期間中に発生した変更事項については、従前の許可行政庁である東京都へ変更届出書を提出しました。
その後、令和8年5月末に国土交通大臣許可が取得できたため、改めて大臣許可業者としての変更届出書を提出し、役員及び令三使用人の情報を最新の内容へ整理しました。
許可換え新規申請では、申請書を提出した後も会社の状況に変更が生じる可能性があります。
特に審査期間が数か月に及ぶこともあるため、
・役員変更
・商号変更
・営業所変更
・令三使用人変更
などが発生した場合には、どの行政庁へどのタイミングで届出を行うべきかを確認することが重要です。
今回の案件では、東京都知事許可業者としての届出と、大臣許可取得後の届出をそれぞれ適切なタイミングで行うことで、許可換え新規申請に影響を与えることなく手続きを完了することができました。
次に、許可取得までの結果と、その後のサポート内容についてご紹介します。
結果
令和7年7月にご相談をいただき、その後、営業所体制の検討や技術者の採用、必要書類の収集を進めました。
今回の案件では、単に業種追加や更新を行うのではなく、
・東京都知事許可から国土交通大臣許可への許可換え新規
・電気通信工事業の特定建設業許可取得
・従たる営業所の新設
を同時に進める必要がありました。
また、特定建設業許可に必要な技術者の確保や営業所体制の整備にも時間を要したため、申請前の準備期間は比較的長くなりました。
その後、令和8年3月末に関東地方整備局へ申請を行い、審査期間中には役員変更及び令三使用人変更への対応も発生しましたが、適切な時期に東京都及び関東地方整備局への手続きを行うことで問題なく対応することができました。
その結果、令和8年5月末に国土交通大臣許可を取得することができました。
取得した許可の内容は、
・電気工事業 一般建設業
・電気通信工事業 特定建設業
となり、当初の事業計画どおりの許可構成を実現することができました。
今回の案件では、
・特定建設業許可取得に向けた技術者確保
・従たる営業所の新設
・国土交通大臣許可への移行
・審査期間中の変更届出対応
など、複数の論点がありましたが、一つずつ整理しながら進めることで無事に許可取得へ至りました。
特に、営業所体制と技術者配置を早い段階で検討できたことが、スムーズな許可取得につながったと考えています。
現在は許可取得後のサポートとして、事業年度終了後4か月以内に提出する決算変更届をはじめ、役員変更や営業所変更など各種変更届出についても継続して支援しています。
次に、同じように国土交通大臣許可や特定建設業許可を検討している会社様が注意すべきポイントについてご紹介します。
同じようなケースで注意すること
今回のように、東京都知事許可から国土交通大臣許可への許可換え新規申請と、特定建設業許可の取得を同時に進めるケースでは、通常の更新申請や業種追加申請とは異なる論点が数多くあります。
まず重要なのが営業所体制の整理です。
国土交通大臣許可が必要となるかどうかは、実際にどこへ営業所を設置するかによって決まります。
そのため、技術者を採用してから営業所を探すのではなく、技術者の勤務場所や常勤性を考慮しながら営業所体制を設計することが重要です。
また、特定建設業許可を取得する場合は、営業所技術者の資格要件についても慎重に確認しなければなりません。
一般建設業許可では問題なくても、特定建設業許可では要件を満たさないケースもあります。
資格の有無だけでなく、
・監理技術者資格者証の有無
・常勤性
・配置予定営業所
なども含めて確認する必要があります。
さらに、大臣許可への許可換え新規申請では審査期間が比較的長くなるため、申請後に会社の状況が変わることも少なくありません。
今回の案件でも、審査期間中に取締役及び令三使用人の変更が発生しました。
許可換え新規申請中であっても、許可取得までは従前の許可行政庁の管轄となるため、どの行政庁へどのタイミングで変更届出書を提出するのかを判断する必要があります。
また、営業所要件についても事前確認が重要です。
本社や従たる営業所については、営業所として使用する権限があることを説明できる状態にしておく必要があります。
賃貸物件の場合は賃貸借契約書、自社所有の場合は建物の登記事項証明書などによって営業所の使用権限を確認します。
関東地方整備局への大臣許可申請では、これらの資料を申請書類として提出する運用ではありませんが、審査の過程で内容確認が行われるため、事前に内容を確認し、いつでも提示できるよう準備しておくことをおすすめします。
今回のように、国土交通大臣許可への移行や特定建設業許可の取得は、技術者、営業所、許可区分など複数の要素が関係する手続きです。
そのため、許可取得を検討している場合は、申請直前ではなく事業計画の段階から準備を始めることで、よりスムーズに手続きを進めることができます。
まとめ
東京都知事許可から国土交通大臣許可への許可換え新規申請は、単に提出先が変わるだけの手続きではありません。
営業所体制や営業所技術者の配置状況、許可区分の選択などを改めて整理し、現在の事業内容に適した許可体制を構築することが重要になります。
今回の事例では、電気通信工事業において今後より大規模な案件へ対応するため、特定建設業許可の取得を計画しました。
その過程で監理技術者資格者証を有する技術者を採用し、従たる営業所を新設した結果、東京都知事許可から国土交通大臣許可への移行が必要となりました。
また、申請準備だけでなく、審査期間中の取締役変更や令三使用人変更への対応も発生しましたが、適切なタイミングで届出を行うことで問題なく許可取得まで進めることができました。
建設業許可は取得すること自体が目的ではなく、会社の事業計画や受注戦略を実現するための手段です。
そのため、
・どの業種で許可を取得するべきか
・一般建設業と特定建設業のどちらが適切か
・営業所体制をどのように構築するべきか
・知事許可と大臣許可のどちらが必要か
といった点を総合的に検討することが重要になります。
当事務所では、東京都知事許可から国土交通大臣許可への許可換え新規申請、特定建設業許可の取得、従たる営業所の新設を伴う建設業許可申請にも対応しております。
事業拡大に伴う許可区分の見直しや特定建設業許可の取得をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。









