東京都江戸川区の建設会社様から、管工事業を一般建設業から特定建設業へ切り替えたいとのご相談をいただきました。
こちらの会社様は、すでに管工事業と電気工事業の一般建設業許可を取得し、経営事項審査も継続して受審されていました。
今後さらに公共工事の受注を増やしていくため、管工事業について特定建設業許可への切替をご希望されていました。
ただ、ご相談をいただいた当初は、特定建設業に必要な財産的基礎の要件と、営業所技術者等の要件の両方が整っておらず、すぐに申請できる状態ではありませんでした。
そこで当事務所では、その時点で無理に申請を進めるのではなく、次の決算で財産要件を再確認しながら、技術者の資格取得状況も継続して確認していくことになりました。
その後、事業年度が変わったタイミングで財産要件を確認したところ基準をクリア。
さらに、もともと2級管工事施工管理技士だった従業員の方が1級管工事施工管理技士に合格し、特定建設業に必要な技術者要件も整いました。
今回は、ご相談からすぐに申請できなかった会社様を継続してサポートし、要件が揃ったタイミングで行った管工事業の般・特新規申請についてご紹介します。
第1章|ご相談当初は財産要件と技術者要件が未達
最初にご相談をいただいたのは、今回の申請を行う前年でした。
会社様としては、今後さらに公共工事の受注を増やしていくため、管工事業を一般建設業から特定建設業へ切り替えたいというご意向でした。
ただ、特定建設業は一般建設業よりも要件が厳しく、申請前に財務内容や技術者の資格状況を確認する必要があります。
当時の状況を確認したところ、主に次の2点が問題となっていました。
- 特定建設業に必要な財産的基礎の要件を満たしていない
- 管工事業の特定建設業に必要な営業所技術者等の要件を満たしていない
そのため、この時点では般・特新規申請を行うことはできませんでした。
そこで、無理に申請を進めるのではなく、次回の決算後に財産要件をあらためて確認するとともに、技術者の資格取得状況も見ながら、要件が整うタイミングを待つことになりました。
特定建設業への切替では、「今すぐ申請できるか」だけでなく、「いつなら申請できる状態になるか」を見極めることも重要です。
今回の会社様も、前年の段階では要件未達でしたが、その後の財務内容の改善と資格取得によって、申請可能な状態へ進んでいきました。
第2章|資本金2,000万円でも特定建設業の財産要件を満たすとは限らない
こちらの会社様は、もともと資本金2,000万円の会社でした。
ただし、特定建設業の財産的基礎については、資本金が2,000万円以上あればそれだけで要件を満たすわけではありません。
東京都の手引では、特定建設業の財産的基礎について、主に次の基準を確認することとされています。
- 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
- 流動比率が75%以上であること
- 資本金が2,000万円以上であること
- 自己資本が4,000万円以上であること
このため、資本金だけではなく、直前決算の貸借対照表などをもとに、会社全体の財務内容を確認する必要があります。 令和8年度東京都手引き
今回の会社様も、資本金についてはすでに2,000万円ありましたが、ご相談をいただいた時点では、直前決算の内容から特定建設業の財産的基礎の要件を満たしていませんでした。
そこで、その時点での申請は見送り、次の決算が確定した段階であらためて財産要件を確認することにしました。
特定建設業への切替を検討する際は、「資本金はいくらあるか」だけで判断せず、申請時点で使用する決算内容を確認することが重要です。
第3章|事業年度が変わったタイミングで財産要件を再確認
その後、会社様が新しい事業年度を迎えたタイミングで、改めて直前決算の内容を確認しました。
特定建設業の財産的基礎は、申請時点で使用する決算内容をもとに確認するため、前年度では要件を満たしていなかった会社でも、次の決算で財務内容が改善すれば申請可能になることがあります。
今回の会社様についても、新しい決算内容を確認したところ、特定建設業に必要な財産的基礎の基準を満たしていることが確認できました。
ご相談当初から資本金は2,000万円ありましたが、それだけでは足りず、欠損の状況、流動比率、自己資本などを含めて確認する必要があります。
今回は、事業年度が変わったことで財務面の条件が整い、特定建設業への切替に向けて大きく前進することになりました。
このように、特定建設業への切替では、現在の決算内容で難しい場合でも、次の決算を見据えて申請時期を検討することが重要です。
第4章|資格取得を奨励する社内体制が特定許可取得につながった
財産要件が整った一方で、もう一つの課題だったのが営業所技術者等の要件です。
こちらの会社様では、代表者である社長を含め、従業員の資格取得を積極的に奨励しており、受験費用についても会社が補助しています。
今回、もともと2級管工事施工管理技士の資格を持っていた従業員の方が、1級管工事施工管理技士に合格しました。
管工事業は指定建設業に該当するため、特定建設業の営業所技術者等については、一般建設業より厳しい資格要件があります。
そのため、2級管工事施工管理技士の資格だけでは今回の特定許可への切替には足りませんでしたが、1級管工事施工管理技士に合格したことで、技術者要件を満たせる状態になりました。
今回の案件では、会社として日頃から資格取得を後押ししていたことが、結果として特定建設業許可への切替につながっています。
公共工事の受注拡大を考える会社にとって、許可要件を満たすためだけではなく、将来の受注体制や技術力の強化という意味でも、社内で資格者を育てていくことは重要です。
第5章|要件が揃い、管工事業について般・特新規申請
財産的基礎の要件と営業所技術者等の要件が揃ったため、管工事業について一般建設業から特定建設業へ切り替えるための般・特新規申請を行いました。
般・特新規とは、同じ業種について一般建設業から特定建設業へ、または特定建設業から一般建設業へ切り替える際に行う申請です。
今回の会社様は、管工事業と電気工事業の一般建設業許可をお持ちでしたが、今回切り替えるのは管工事業のみです。
そのため、申請後の許可区分は次のようになります。
- 管工事業 特定建設業
- 電気工事業 一般建設業
同一の業種について、一般建設業と特定建設業の両方の許可を同時に受けることはできません。
東京都の手引でも、一般建設業から特定建設業へ切り替える場合には般・特新規の申請区分となることが示されています。 令和8年度東京都手引き
今回の案件は、前年の相談時点では要件未達でしたが、決算内容の改善と1級管工事施工管理技士の合格によって申請条件が整い、予定していた特定建設業への切替を実行することができました。
第6章|特定許可取得後は決算変更届と経営事項審査も継続して担当
今回の会社様は、これまで経営事項審査も継続して受審されていました。
今回の般・特新規申請をきっかけに、特定建設業許可を取得した後の決算から、当事務所で決算変更届と経営事項審査も継続して担当することになりました。
公共工事の受注を続けていく会社では、建設業許可だけでなく、毎年の決算変更届や経営事項審査まで含めて継続的に管理していく必要があります。
特に今回のように、一般建設業から特定建設業へ許可区分を変更した場合は、許可を取得して終わりではなく、その後も財務内容や技術者の状況を確認しながら、経営事項審査や今後の入札参加資格申請まで見据えて管理していくことが重要です。
当事務所では、建設業許可の申請だけでなく、許可取得後の決算変更届、経営事項審査まで継続して対応しています。









