特定建設業許可は赤字決算でも維持できる?財産要件と更新時の注意点

特定建設業許可を持っている会社様から、「今期の決算が赤字になりそうですが、特定建設業許可は維持できますか」というご相談をいただくことがあります。

結論からいうと、赤字決算になっただけで、直ちに特定建設業許可が失効するわけではありません。

また、毎年提出する決算変更届についても、赤字決算であること自体が直ちに許可維持に影響するわけではありません。

ただし、特定建設業許可は一般建設業許可と比べて財産的基礎の要件が厳しく定められています。

そのため、許可更新だけでなく、業種追加、許可換え新規などの申請を行う際には、直近決算で特定建設業許可の財産要件を満たしているかが確認されます。

その時点の直近決算で財産要件を満たしていない場合、特定建設業許可をそのまま維持したり、特定建設業として新たな申請を行ったりすることができない場合があります。

その場合は、特定建設業許可から一般建設業許可へ切り替えるため、般・特新規申請を検討することになります。

この記事では、特定建設業許可を持つ会社が赤字決算になった場合に、決算変更届や許可更新、業種追加、許可換え新規へどのような影響があるのか、財産要件や般・特新規申請の注意点を解説します。

赤字決算でもすぐに特定建設業許可が失効するわけではない

特定建設業許可を持っている会社が赤字決算になった場合でも、赤字になったことだけで直ちに特定建設業許可が失効するわけではありません。

建設業許可は、毎期の損益だけで判断されるものではありません。

そのため、今期の決算が赤字になったとしても、その事実だけで許可が取り消されたり、特定建設業許可を維持できなくなったりするわけではありません。

特定建設業許可で重要になるのは、赤字か黒字かという単純な損益の結果だけではなく、財産的基礎の要件を満たしているかどうかです。

具体的には、自己資本、資本金、欠損の額、流動比率などを確認する必要があります。

例えば、単年度では赤字になっていても、これまでの利益の蓄積があり、自己資本が十分に残っている会社であれば、特定建設業許可の財産要件を満たしている場合があります。

一方で、赤字決算によって純資産が大きく減少し、自己資本や欠損の額、流動比率に影響が出る場合には注意が必要です。

つまり、「赤字決算だから特定建設業許可を維持できない」ということではなく、赤字決算の結果として、特定建設業許可の財産要件を満たしているかどうかが問題になります。

特定建設業許可を持っている会社は、赤字が見込まれる場合でも、まずは直近の試算表や決算見込みをもとに、財産要件への影響を確認することが大切です。

次に、毎年提出する決算変更届と特定建設業許可の維持との関係について解説します。

決算変更届では赤字そのものが直ちに問題になるわけではない

建設業許可を受けている会社は、毎事業年度終了後に決算変更届を提出する必要があります。

特定建設業許可を持っている会社も、一般建設業許可の会社と同じように、毎期の決算内容を決算変更届として提出します。

このとき、決算内容が赤字であったとしても、赤字決算であること自体が直ちに特定建設業許可の維持に影響するわけではありません。

決算変更届は、事業年度ごとの工事経歴や財務内容を届け出る手続きです。

そのため、赤字決算の決算変更届を提出したからといって、その時点でただちに特定建設業許可が取り消されたり、一般建設業許可へ切り替えなければならなくなったりするわけではありません。

ここは誤解されやすいポイントです。

特定建設業許可の会社様からは、「赤字の決算変更届を出したら、特定建設業許可を維持できなくなるのではないか」とご相談いただくことがあります。

しかし、赤字決算そのものと、特定建設業許可の維持可否は分けて考える必要があります。

問題となるのは、赤字決算になった結果として、特定建設業許可の財産要件を満たせなくなるかどうかです。

また、その財産要件が実際に確認されるのは、主に許可更新、業種追加、般・特新規、許可換え新規など、許可申請を行うタイミングです。

したがって、決算変更届を提出する段階では、赤字決算であることだけを理由に直ちに特定建設業許可が維持できなくなるわけではありません。

ただし、赤字が続いて自己資本が減少している場合や、流動比率が低下している場合には、将来の更新申請や業種追加申請の際に問題となる可能性があります。

そのため、特定建設業許可を持っている会社は、赤字決算になった時点で「今すぐ許可がなくなるか」だけを見るのではなく、次回の許可申請時に財産要件を満たせるかどうかを早めに確認しておくことが重要です。

次に、特定建設業許可で確認される財産要件について具体的に見ていきます。

特定建設業許可で確認される財産要件

特定建設業許可では、一般建設業許可よりも厳しい財産的基礎の要件が定められています。

一般建設業許可では、自己資本が500万円以上あることや、500万円以上の資金調達能力があることなどが財産要件として確認されます。

これに対して、特定建設業許可では、下請業者保護の観点から、より高い財務的な安定性が求められます。

特定建設業許可の財産要件として、一般的には次の4つをすべて満たす必要があります。

・欠損の額が資本金の20%を超えていないこと

・流動比率が75%以上であること

・資本金が2,000万円以上であること

・自己資本が4,000万円以上であること

この4つの要件は、赤字決算になった場合に特に確認しておきたいポイントです。

単年度の損益計算書が赤字であっても、すぐに特定建設業許可の財産要件を満たさなくなるとは限りません。

重要なのは、赤字決算の結果として、貸借対照表の純資産や流動資産、流動負債にどのような影響が出ているかです。

例えば、当期純損失が発生しても、これまでの利益剰余金が十分に残っており、自己資本が4,000万円以上を維持していれば、財産要件を満たしている可能性があります。

一方で、赤字によって利益剰余金が大きく減少し、自己資本が4,000万円を下回る場合や、欠損の額が資本金の20%を超える場合には注意が必要です。

また、流動比率についても確認が必要です。

流動比率は、短期的な支払能力を見るための指標です。

流動資産が流動負債に対してどの程度あるかを確認するもので、特定建設業許可では75%以上であることが求められます。

赤字決算であっても流動比率に問題がない会社もありますが、資金繰りが悪化し、流動資産が減少している場合には要件を満たさなくなる可能性があります。

このように、特定建設業許可では「赤字か黒字か」だけで判断するのではなく、欠損の額、流動比率、資本金、自己資本の4つを確認することが重要です。

次に、これらの財産要件がどのタイミングで確認されるのかについて解説します。

財産要件はどのタイミングで確認されるのか

特定建設業許可の財産要件は、毎年の決算変更届を提出するたびに、その場で直ちに審査されるというものではありません。

財産要件が特に重要になるのは、特定建設業許可の維持や区分変更を伴う申請を行うタイミングです。

具体的には、次のような場面で、直近決算をもとに特定建設業許可の財産要件を満たしているかが確認されます。

・許可更新

・般・特新規

・許可換え新規

例えば、特定建設業許可の更新申請を行う場合には、更新時点で提出されている直近決算をもとに、特定建設業許可の財産要件を満たしているかが確認されます。

また、一般建設業許可から特定建設業許可へ切り替える般・特新規申請を行う場合にも、特定建設業許可の財産要件を満たしているかが確認されます。

さらに、東京都知事許可から国土交通大臣許可へ許可換え新規申請を行う場合などにも、特定建設業許可を含む申請であれば、財産要件を満たしているかが確認されます。

一方で、業種追加申請については注意が必要です。

業種追加申請では、追加する業種について営業所技術者などの要件確認が中心となります。

すでに特定建設業許可を持っている会社が、別の業種について特定建設業許可を追加する場合に、毎回あらためて特定建設業許可の財産要件を確認されるとは限りません。

そのため、「赤字決算になると業種追加の際にも必ず財産要件で問題になる」とまではいえません。

ただし、更新申請、般・特新規申請、許可換え新規申請などでは、直近決算によって財産要件が確認されます。

そのため、赤字決算になった場合でも直ちに特定建設業許可が失効するわけではありませんが、次に財産要件を確認される申請のタイミングで要件を満たしていないと、特定建設業許可を維持したり、特定建設業として申請を進めたりすることが難しくなります。

特に注意が必要なのは、許可更新の時期が近い会社です。

更新申請の直前になってから財産要件を確認したところ、自己資本が4,000万円を下回っていたり、流動比率が75%未満となっていたりする場合、特定建設業許可として更新できない可能性があります。

このような場合には、特定建設業許可を維持できるよう決算対策を検討するのか、それとも一般建設業許可へ切り替えるのかを早めに判断する必要があります。

赤字決算そのものよりも重要なのは、次回の許可更新や般・特新規、許可換え新規のタイミングで、直近決算が財産要件を満たしているかどうかです。

特定建設業許可を持っている会社は、赤字が見込まれる段階で、次回の更新時期や今後の申請予定を確認し、財産要件への影響を早めに把握しておくことをおすすめします。

次に、財産要件を満たしていない場合にどのような対応が必要になるのかを解説します。

財産要件を満たさない場合はどうなるのか

特定建設業許可の財産要件を満たしていない場合、特定建設業許可として更新したり、一般建設業許可から特定建設業許可へ切り替えたりすることはできません。

例えば、更新申請の直近決算で自己資本が4,000万円を下回っている場合や、流動比率が75%未満となっている場合には、特定建設業許可の財産要件を満たしていない可能性があります。

この場合、特定建設業許可をそのまま維持することは難しくなります。

ただし、財産要件を満たしていないからといって、直ちに建設業許可そのものを失うというわけではありません。

特定建設業許可としての要件を満たせない場合でも、一般建設業許可の要件を満たしていれば、一般建設業許可へ切り替えて許可を維持する方法があります。

このときに検討するのが、特定建設業許可から一般建設業許可へ切り替えるための般・特新規申請です。

般・特新規申請とは、すでに建設業許可を受けている業種について、一般建設業から特定建設業へ、または特定建設業から一般建設業へ区分を変更するための申請です。

特定建設業許可の財産要件を満たせなくなった場合には、更新時期や今後の受注予定を確認したうえで、特定建設業許可を維持するのか、一般建設業許可へ切り替えるのかを判断する必要があります。

特に注意が必要なのは、元請として大きな下請契約を締結する予定がある会社です。

特定建設業許可が必要となる規模の工事を今後も請け負う予定がある場合、一般建設業許可へ切り替えることで受注できる工事に制限が出る可能性があります。

一方で、実際には特定建設業許可が必要となる規模の工事を請け負っていない会社であれば、一般建設業許可へ切り替えても実務上大きな支障がない場合もあります。

そのため、財産要件を満たしていない場合には、単に「特定を維持できるか」だけではなく、今後の受注内容や元請・下請の契約規模も含めて判断することが重要です。

赤字決算が見込まれる場合や、自己資本・流動比率に不安がある場合は、更新申請の直前ではなく、早い段階で財務内容を確認しておくことをおすすめします。

次に、特定建設業許可から一般建設業許可へ切り替える般・特新規申請について、もう少し詳しく解説します。

一般建設業許可へ切り替える般・特新規申請とは

特定建設業許可の財産要件を満たせない場合には、一般建設業許可へ切り替えるための般・特新規申請を検討することになります。

般・特新規申請とは、すでに建設業許可を受けている業種について、一般建設業許可から特定建設業許可へ変更する場合、または特定建設業許可から一般建設業許可へ変更する場合に行う申請です。

今回のように、特定建設業許可を持っている会社が財産要件を満たせなくなった場合には、特定建設業許可から一般建設業許可へ切り替えるための般・特新規申請を行うことになります。

一般建設業許可へ切り替える場合、特定建設業許可に求められる財産要件は不要となります。

そのため、自己資本4,000万円以上や流動比率75%以上などの要件を満たしていない場合でも、一般建設業許可の要件を満たしていれば、許可を維持できる可能性があります。

ただし、一般建設業許可へ切り替えると、元請として一定額以上の下請契約を締結することができなくなります。

特定建設業許可は、発注者から直接工事を請け負い、その工事について下請業者へ一定額以上の工事を発注する場合に必要となる許可です。

そのため、一般建設業許可へ切り替えた後は、元請として大きな下請契約を締結する予定があるかどうかを必ず確認する必要があります。

もし、今後も元請として大規模な下請契約を締結する予定がある場合には、一般建設業許可へ切り替えることで受注や契約に影響が出る可能性があります。

一方で、元請として大きな下請契約を締結する予定がなく、実際には一般建設業許可の範囲で対応できる工事が中心であれば、一般建設業許可へ切り替えても実務上大きな支障がない場合もあります。

般・特新規申請を検討する際には、単に財産要件を満たしているかどうかだけではなく、会社の受注形態、元請工事の有無、下請契約の金額、今後の事業計画を確認することが重要です。

また、特定建設業許可から一般建設業許可へ切り替える場合には、更新期限との関係にも注意が必要です。

更新期限が近づいてから財産要件を確認し、特定建設業許可として更新できないことが判明すると、申請準備に十分な時間を確保できない可能性があります。

そのため、赤字決算が見込まれる場合や、自己資本・流動比率に不安がある場合は、更新期限よりも早い段階で財産要件を確認し、特定建設業許可を維持するのか、一般建設業許可へ切り替えるのかを検討しておくことが大切です。

次に、赤字が見込まれる会社が早めに確認しておきたいポイントを整理します。

赤字が見込まれる会社が早めに確認すべきこと

特定建設業許可を持っている会社で赤字決算が見込まれる場合は、決算が確定してから慌てて確認するのではなく、できるだけ早い段階で財産要件への影響を確認しておくことが重要です。

まず確認したいのは、次回の許可更新時期です。

特定建設業許可は、更新申請の際に直近決算で財産要件を満たしているかが確認されます。

そのため、更新期限が近い会社ほど、赤字決算による影響を早めに確認する必要があります。

次に確認すべきなのが、自己資本の金額です。

特定建設業許可では、自己資本が4,000万円以上であることが求められます。

単年度で赤字になったとしても、これまでの利益剰余金が十分に残っていれば、自己資本4,000万円以上を維持できる場合があります。

一方で、赤字によって純資産が大きく減少し、自己資本が4,000万円を下回る可能性がある場合には注意が必要です。

また、欠損の額が資本金の20%を超えていないかも確認する必要があります。

赤字が続いて繰越利益剰余金がマイナスになっている場合や、純資産が大きく減少している場合には、欠損の額の要件に影響することがあります。

さらに、流動比率も重要な確認項目です。

特定建設業許可では、流動比率が75%以上であることが求められます。

流動資産と流動負債のバランスによって判断されるため、赤字決算であっても流動比率に問題がないケースもあります。

しかし、資金繰りの悪化によって現預金や売掛金などの流動資産が減少し、短期借入金や未払金などの流動負債が増えている場合には、流動比率が低下する可能性があります。

あわせて、今後の申請予定も確認しておく必要があります。

許可更新だけでなく、一般建設業許可から特定建設業許可へ切り替える般・特新規申請や、知事許可から大臣許可へ切り替える許可換え新規申請を予定している場合には、直近決算で財産要件を満たしているかが問題になります。

そのため、赤字が見込まれる会社は、次回の更新時期だけでなく、今後の許可申請予定も含めて確認しておくことが大切です。

実務上は、決算書が完成してから初めて確認するのではなく、試算表や決算見込みの段階で、自己資本、資本金、欠損の額、流動比率を確認しておくことをおすすめします。

早めに確認しておけば、決算対策を検討できる場合もありますし、特定建設業許可を維持するのか、一般建設業許可へ切り替えるのかを落ち着いて判断することができます。

赤字決算そのものを過度に恐れる必要はありません。

しかし、特定建設業許可を持っている会社にとっては、赤字が財産要件にどのような影響を与えるのかを確認しておくことが重要です。

特定建設業許可の更新時期が近い会社や、今後般・特新規申請、許可換え新規申請を予定している会社は、早めに財務内容を確認しておくことをおすすめします。

まとめ

特定建設業許可を持っている会社が赤字決算になったとしても、赤字になったことだけで直ちに特定建設業許可が失効するわけではありません。

また、毎年提出する決算変更届についても、赤字決算であること自体が直ちに許可維持に影響するわけではありません。

ただし、特定建設業許可では、一般建設業許可よりも厳しい財産要件が定められています。

具体的には、

・欠損の額が資本金の20%を超えていないこと

・流動比率が75%以上であること

・資本金が2,000万円以上であること

・自己資本が4,000万円以上であること

といった要件を満たしている必要があります。

赤字決算で注意すべきなのは、赤字そのものではなく、赤字の結果としてこれらの財産要件を満たせなくなるかどうかです。

特定建設業許可の財産要件は、主に許可更新、般・特新規、許可換え新規などの申請を行うタイミングで確認されます。

そのため、赤字決算になった場合でも、次回の更新時期や今後の申請予定を確認し、直近決算で財産要件を満たせるかどうかを早めに把握しておくことが重要です。

もし特定建設業許可の財産要件を満たせない場合には、特定建設業許可として更新することが難しくなる可能性があります。

その場合は、一般建設業許可へ切り替えるための般・特新規申請を検討することになります。

ただし、一般建設業許可へ切り替えると、元請として一定額以上の下請契約を締結できなくなるため、今後の受注内容や事業計画も含めて判断する必要があります。

特定建設業許可を持っている会社は、赤字決算が見込まれる段階で、試算表や決算見込みをもとに自己資本、資本金、欠損の額、流動比率を確認しておくことをおすすめします。

当事務所では、東京都の建設業許可更新、般・特新規申請、許可換え新規申請、決算変更届の作成について対応しております。

特定建設業許可を維持できるか不安がある会社様や、赤字決算が許可更新に影響するか確認したい会社様は、お気軽にご相談ください。

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