建設業許可では、親会社やグループ会社からの出向者を営業所技術者として配置したいというご相談をいただくことがあります。
結論からいうと、出向者であっても営業所技術者となることは可能です。
しかし、東京都では単に出向契約書を提出すれば認められるわけではありません。
出向契約書の内容に加え、社会保険の加入状況や標準報酬決定通知書、さらに出向費用の支払状況などを確認し、実際に常勤していることが総合的に審査されます。
また、以前は健康保険証によって勤務先を確認する運用が一般的でしたが、現在では健康保険証による確認が難しくなったことから、標準報酬決定通知書などを用いて確認するケースが一般的となっています。
この記事では、東京都で実際に建設業許可申請を行った経験をもとに、出向者を営業所技術者として配置する場合に確認されるポイントや必要資料について解説します。
出向者は営業所技術者になれるのか
結論からいうと、出向者であっても営業所技術者となることは可能です。
建設業法では、営業所技術者について「常勤」であることが求められていますが、必ずしも申請会社と直接雇用契約を締結していなければならないとはされていません。
そのため、親会社やグループ会社から出向している社員であっても、営業所技術者として必要な資格や実務経験を有し、申請会社の営業所に常勤していることが確認できれば、営業所技術者となることができます。
実際に、大企業やグループ会社では、親会社から子会社へ出向した技術者が営業所技術者として配置されるケースも少なくありません。
しかし、出向者である場合は、通常の社員よりも常勤性の確認が重要になります。
東京都では、「出向している」という事実だけでは足りず、実際に申請会社の営業所へ常勤していることを客観的な資料によって確認しています。
そのため、出向契約書だけを提出すれば足りるわけではありません。
出向契約書の内容に加え、社会保険の加入状況や標準報酬決定通知書、出向費用の支払状況など、複数の資料を総合的に確認したうえで常勤性が判断されます。
次に、東京都では具体的にどのような資料によって常勤性を確認しているのかをご紹介します。
東京都で確認される資料
出向者を営業所技術者として配置する場合、東京都では常勤性を確認するために複数の資料を確認します。
単に「出向しています」という説明だけでは足りず、出向契約の内容と実際の勤務実態が一致しているかを総合的に判断します。
まず確認されるのが出向契約書です。
出向契約書では、
・出向元会社
・出向先会社
・出向期間
・業務内容
・給与負担
・社会保険の加入先
などを確認します。
特に重要なのが、社会保険をどちらの会社で加入することになっているかという点です。
東京都では、この出向契約書の内容だけで判断するのではなく、実際の社会保険加入状況についても確認します。
現在は健康保険証による確認が難しくなっていることから、標準報酬決定通知書によって社会保険の加入状況を確認することが一般的です。
標準報酬決定通知書に記載された事業所名が出向契約書の内容と一致しているかを確認することで、常勤性を判断する資料の一つとなります。
さらに東京都では、出向契約が実際に運用されているかについても確認します。
そのため、出向費用や人件費負担金などについて、申請会社から出向元会社へ支払われていることが分かる資料の提出を求められることがあります。
実務では、直近3か月程度の出向費用の支払実績を確認するケースが一般的です。
このように東京都では、出向契約書だけではなく、
・出向契約書
・標準報酬決定通知書
・出向費用の支払資料
などを相互に確認しながら、営業所技術者としての常勤性を総合的に判断しています。
次に、出向契約書で特に確認されるポイントについて詳しくご説明します。
出向契約書で確認されるポイント
東京都では、出向者を営業所技術者として申請する場合、まず出向契約書の内容を確認します。
出向契約書は、単に出向していることを証明するための書類ではありません。
申請会社と出向元会社との契約内容を確認し、営業所技術者として常勤性を判断するための重要な資料となります。
特に確認されるポイントは次のとおりです。
・出向元会社及び出向先会社
・出向期間
・業務内容
・指揮命令権がどちらにあるか
・給与負担をどちらの会社が行うか
・社会保険をどちらの会社で加入するか
この中でも特に重要なのが、社会保険の加入先です。
東京都では、出向契約書に社会保険の加入先が明記されているかを確認し、その内容と標準報酬決定通知書などの資料との整合性を確認しています。
例えば、出向契約書には申請会社で社会保険へ加入すると記載されているにもかかわらず、標準報酬決定通知書では出向元会社の名称となっている場合には、その理由について説明が必要になることがあります。
逆に、出向契約書と社会保険関係資料の内容が一致していれば、出向契約が実際に運用されていることを説明しやすくなります。
出向契約書はひな形どおりに作成するだけではなく、実際の勤務実態や社会保険の加入状況を正確に反映した内容となっていることが重要です。
東京都では、出向契約書だけで判断するのではなく、標準報酬決定通知書や出向費用の支払資料などと照らし合わせながら総合的に審査を行っています。
そのため、申請前には各資料の内容に矛盾がないかを確認しておくことが重要です。
次に、現在東京都で一般的となっている標準報酬決定通知書による確認方法についてご説明します。
標準報酬決定通知書が重要な理由
以前は、営業所技術者の常勤性を確認する資料として健康保険証の写しが提出されるケースが多くありました。
健康保険証には事業所名が記載されていたため、どの会社の社会保険に加入しているかを確認することができたためです。
しかし、現在は健康保険証の新規発行が終了し、事業所名を確認できないケースも増えています。
そのため、東京都では健康保険証に代わり、標準報酬決定通知書によって社会保険の加入状況を確認する運用が一般的となっています。
標準報酬決定通知書には、被保険者がどの事業所で社会保険に加入しているかが記載されているため、出向契約書の内容との整合性を確認することができます。
例えば、出向契約書で「社会保険は出向元会社で加入する」と定められている場合には、標準報酬決定通知書にも出向元会社が記載されていることが求められます。
反対に、「社会保険は申請会社で加入する」と定められている場合には、標準報酬決定通知書にも申請会社が記載されていることが望まれます。
このように、東京都では単に標準報酬決定通知書を提出するだけではなく、出向契約書の内容と一致しているかを確認しています。
どちらか一方だけではなく、複数の資料を相互に確認することで、実際に出向契約どおりの勤務体制となっているかを判断しているのです。
出向者を営業所技術者として申請する場合は、出向契約書を作成するだけでなく、標準報酬決定通知書など関連資料との整合性についても事前に確認しておくことが重要です。
次に、東京都で確認される出向費用の支払実績についてご説明します。
出向費用の支払実績も確認される
東京都では、出向契約書や標準報酬決定通知書だけでなく、出向契約が実際に運用されているかについても確認します。
そのため、出向者を営業所技術者として申請する場合には、出向費用の支払実績について資料の提出を求められることがあります。
実務では、申請会社から出向元会社へ支払われた出向費用や人件費負担金について、直近3か月程度の支払状況を確認するケースが一般的です。
これは、出向契約書を作成しただけではなく、実際に契約内容どおりの運用が行われているかを確認するためです。
例えば、出向契約書では「出向費用は申請会社が負担する」と定められているにもかかわらず、実際には支払実績が確認できない場合には、契約内容と実態が一致しているかについて説明を求められる可能性があります。
反対に、出向契約書の内容どおりに出向費用が継続して支払われていることが確認できれば、出向契約が実際に運用されていることを客観的に説明しやすくなります。
東京都では、
・出向契約書
・標準報酬決定通知書
・出向費用の支払資料
をそれぞれ独立した資料として見るのではなく、内容に矛盾がないかを総合的に確認しています。
そのため、申請前には各資料の内容が一致しているかを確認し、不足資料がないかを整理しておくことが重要です。
出向者を営業所技術者として申請する案件では、必要書類の収集に時間がかかることも少なくありません。
特に親会社やグループ会社との間で資料をやり取りする必要がある場合は、余裕をもって準備を進めることをおすすめします。
次に、出向者を営業所技術者として申請する際の実務上の注意点についてご紹介します。
実務上の注意点
出向者を営業所技術者として申請する場合は、必要書類を揃えるだけでなく、それぞれの資料に矛盾がないことが重要です。
東京都では、一つの資料だけで常勤性を判断するのではなく、複数の資料を照らし合わせながら実際の勤務実態を確認しています。
例えば、
・出向契約書では社会保険は出向元会社加入となっている
・標準報酬決定通知書では申請会社加入となっている
というように資料の内容が一致していない場合には、その理由について説明を求められることがあります。
また、出向費用の支払方法についても、出向契約書の内容と実際の運用が一致していることが重要です。
契約書には費用負担について記載されていても、実際の支払実績が確認できなければ、追加資料の提出を求められる可能性があります。
そのため、申請準備を始める際には、
・出向契約書
・標準報酬決定通知書
・出向費用の支払資料
を個別に準備するのではなく、それぞれの内容が一致しているかを確認しながら整理することをおすすめします。
また、親会社と子会社の双方から資料を収集する必要があるため、通常の建設業許可申請よりも準備期間が長くなることがあります。
出向者を営業所技術者として配置する予定がある場合は、営業所技術者の変更時期や新規申請の直前になってから準備を始めるのではなく、早い段階で必要資料を確認しておくことが重要です。
東京都では、出向者であっても営業所技術者として認められる運用となっています。
一方で、常勤性については通常の社員よりも詳細な確認が行われます。
事前に資料を整理しておくことで、補正や追加資料の提出を最小限に抑え、スムーズな申請につながります。
まとめ
親会社やグループ会社からの出向者であっても、建設業許可における営業所技術者となることは可能です。
しかし、東京都では出向契約書だけを提出すれば認められるわけではありません。
営業所技術者としての常勤性を確認するため、
・出向契約書
・標準報酬決定通知書
・出向費用の支払資料
など複数の資料を総合的に確認する運用となっています。
特に出向契約書については、社会保険の加入先や給与負担の方法などが実際の運用と一致していることが重要です。
また、以前は健康保険証による確認が一般的でしたが、現在では標準報酬決定通知書を用いて社会保険の加入状況を確認するケースが多くなっています。
さらに、東京都では出向契約が実際に運用されていることを確認するため、出向費用の支払実績についても確認が行われます。
このように、出向者を営業所技術者として申請する場合は、単に必要書類を揃えるだけではなく、それぞれの資料に矛盾がないよう整理することが重要です。
親会社と子会社の双方から資料を収集する必要があるため、通常の建設業許可申請より準備期間が長くなることも少なくありません。
当事務所では、東京都知事許可における営業所技術者の変更や、出向者を営業所技術者として配置する建設業許可申請についても数多く対応しております。
出向契約書の内容確認や必要資料の整理、東京都への申請手続きまでサポートしておりますので、出向者を営業所技術者として配置予定の会社様は、お気軽にご相談ください。









