建設業許可を取得している会社では、役員変更や役職変更が発生した際に変更届出書の提出が必要になることがあります。
そのため、「取締役が新たに代表取締役へ就任した場合は変更届出書が必要なのか」「役職変更だけでも届出が必要なのか」と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。
実際に、行政書士が実務上判断に迷うケースの一つでもあります。
今回は、既存の代表取締役はそのまま継続し、取締役が新たに代表取締役へ就任した事例について、東京都建設業課へ確認した結果をご紹介します。
結論からいうと、建設業許可申請上の申請者(代表者)に変更がない場合、東京都では変更届出書は不要との回答でした。
この記事では、役職変更と建設業許可の変更届出書との関係や、東京都へ確認した実際の運用について解説します。
役職変更の事例
今回ご相談いただいたのは、建設業許可を取得している会社において、取締役が新たに代表取締役へ就任したケースでした。
一般的に、建設業許可を取得している会社では役員変更が発生した場合に変更届出書の提出が必要となります。
そのため、お客様からも「代表取締役が増えた場合は建設業許可の変更届出書が必要ではないか」というご相談をいただきました。
今回の事例では、
・既存の代表取締役Aは引き続き代表取締役として継続
・取締役Bが新たに代表取締役へ就任
・建設業許可申請上の申請者(代表者)は変更なし
という状況でした。
会社法上は代表取締役が追加されるため登記申請が必要となりますが、建設業許可上も変更届出書が必要になるのか判断に迷うケースです。
実際に当事務所でも変更届出書が必要と考え、東京都へ変更届出書を提出しました。
しかし、その後東京都建設業課から連絡があり、今回のケースについては変更届出書は不要との説明を受けました。
行政書士実務においても判断に迷いやすい事例であり、東京都の運用を確認できた貴重なケースとなりました。
次に、東京都へ確認した内容と回答についてご紹介します。
東京都へ確認した結果
今回のケースについては、当事務所でも変更届出書が必要と判断し、役員変更に関する変更届出書を東京都へ提出しました。
その後、東京都建設業課の担当者から連絡があり、今回の事例について運用上の取扱いを確認することができました。
東京都の回答は次のとおりです。
今回のケースでは、
- 既存の代表取締役は引き続き代表取締役として継続している
- 取締役が新たに代表取締役へ就任した
- 建設業許可申請上の申請者(代表者)は変更されていない
という状況であるため、建設業許可上の変更届出書は不要とのことでした。
また、今回提出済みの変更届出書については、
「今回は受理しますが、今後同様のケースでは提出不要です」
との説明を受けました。
つまり東京都では、代表取締役が増えたかどうかではなく、建設業許可申請上の申請者(代表者)が変更されたかどうかを基準として判断していることになります。
実際のところ、当事務所でも変更届出書が必要と考えていましたし、行政書士会の相談員へ確認した際も同様の認識でした。
そのため、実務上も判断が分かれやすい事例であると考えられます。
しかし、今回の事例では東京都建設業課へ直接確認し、さらに実際に提出した変更届出書に対する回答も得られたため、東京都の現在の運用を確認することができました。
次に、なぜ変更届出書が不要と判断されたのかについて考えてみます。
なぜ変更届出書が不要なのか
今回のケースでは、会社法上は代表取締役の変更が発生しています。
そのため、商業登記においては代表取締役就任の登記が必要となります。
一方で、建設業許可制度における変更届出書は、商業登記の変更内容と必ずしも一致するわけではありません。
東京都へ確認した結果からすると、今回のケースでは「代表取締役が増えたこと」そのものではなく、「建設業許可申請上の申請者(代表者)が変更されたかどうか」を基準として判断しているものと考えられます。
例えば、
・代表取締役Aが退任し、代表取締役Bのみとなった
・建設業許可申請上の代表者がAからBへ変更となった
というケースであれば、建設業許可上の代表者変更として変更届出書が必要になると考えられます。
これに対し今回の事例では、
・代表取締役Aは継続
・代表取締役Bが追加
・建設業許可申請上の代表者はAのまま
という状況でした。
つまり、会社の代表権を有する者は増えているものの、建設業許可上の申請者(代表者)は変更されていないため、変更届出書は不要という整理になります。
この考え方は、商業登記上の変更と建設業許可上の変更を区別して考えると理解しやすいかもしれません。
実際に今回の案件では、変更届出書を提出したうえで東京都から「今後同様のケースは届出不要」との説明を受けているため、東京都としての現在の運用方針が確認できた事例といえます。
もっとも、建設業許可の運用は都道府県によって異なる場合があります。
そのため、東京都以外の許可行政庁については同様の取扱いになるとは限らず、個別に確認することをおすすめします。
次に、今回の事例から分かった実務上のポイントについて整理します。
今回の事例から分かった実務上のポイント
今回の事例は、東京都の建設業許可実務において非常に参考になるケースでした。
取締役が新たに代表取締役へ就任した場合、多くの方は「代表取締役が変更されたのだから建設業許可の変更届出書も必要ではないか」と考えると思います。
実際に当事務所でも同様に考え、変更届出書を提出しました。
しかし、東京都の現在の運用では、代表取締役が増えたこと自体ではなく、建設業許可申請上の申請者(代表者)が変更されたかどうかを基準として判断していることが確認できました。
今回の事例では、
・既存代表取締役は継続している
・新たに代表取締役が追加された
・建設業許可上の申請者は変更されていない
という状況であったため、変更届出書は不要という結論でした。
また、今回提出済みの変更届出書については受理されたものの、
「今後同様のケースでは提出不要」
との説明も受けています。
そのため、東京都知事許可業者において同じ状況が発生した場合は、変更届出書の提出が不要となる可能性があります。
もっとも、今回の取扱いは令和8年6月17日時点で東京都建設業課へ確認した内容に基づくものです。
建設業許可の運用は改正や運用変更によって取扱いが変わることもあります。
また、他の都道府県知事許可や国土交通大臣許可について同様の運用となるとは限りません。
実務上判断に迷う場合には、許可行政庁へ事前確認を行うことが安全です。
今回の事例は、建設業許可における「役員変更」と「役職変更」の違いを考えるうえでも参考になる事例であり、東京都の実務運用を確認できた貴重なケースとなりました。
まとめ
取締役が新たに代表取締役へ就任した場合、建設業許可の変更届出書が必要かどうか判断に迷うことがあります。
実際に今回の事例でも、当事務所及び行政書士会の相談員は変更届出書が必要ではないかと考えていました。
しかし、東京都建設業課へ確認した結果、
・既存の代表取締役が継続している
・取締役が新たに代表取締役へ就任した
・建設業許可申請上の申請者(代表者)は変更されていない
というケースでは、変更届出書は不要との回答でした。
また、今回提出済みの変更届出書については受理されたものの、
「今回は受理しますが、今後同様のケースでは提出不要です」
との説明も受けています。
今回の事例から分かったのは、東京都では代表取締役が増えたかどうかではなく、建設業許可申請上の申請者(代表者)が変更されたかどうかを基準として判断しているということです。
建設業許可実務では、手引や法令だけでは判断が難しいケースも少なくありません。
そのような場合には、実際の運用を確認することで初めて明確になることもあります。
今回の事例は、東京都の建設業許可実務における役職変更の取扱いを確認できた貴重なケースとなりました。
東京都知事許可業者で同様の役職変更を予定している場合は、参考にしていただければと思います。









