特定建設業許可の更新では、一般建設業許可とは異なり、財産的基礎の要件を改めて確認されます。
更新時期になって決算内容を確認したところ、
「自己資本が4,000万円を下回っている」
「流動比率が75%に届いていない」
「赤字決算でも特定建設業を更新できるのか」
と不安になる会社様も少なくありません。
結論から申し上げます。
特定建設業許可を更新するためには、更新申請時点で定められた財産的基礎の4つの要件をすべて満たす必要があります。
確認されるのは、次の4項目です。
・欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
・流動比率が75%以上であること
・資本金が2,000万円以上であること
・自己資本が4,000万円以上であること
このうち一つでも満たしていない場合、そのまま特定建設業許可を更新することはできません。
一般建設業許可では、許可取得後5年間継続して営業した実績によって財産的基礎を確認できる場合がありますが、特定建設業許可では同じ取扱いにはなりません。
そのため、特定建設業の更新では、許可期限だけでなく、直近の決算内容を早い段階で確認しておく必要があります。
財産要件を満たしていないことが更新直前に判明した場合は、増資などによって要件を整えられるか、一般建設業許可への切替えを検討するかを判断します。
ただし、決算内容や更新期限までの期間によって、取ることができる対応は異なります。
この記事では、東京都における特定建設業許可の更新時に確認される財産的基礎、4つの要件の判定方法、要件を満たしていない場合の対応について解説します。
建設業許可の更新期限、必要書類、更新申請全体の流れについては、「【東京都】建設業許可の更新申請|期限・必要書類・30日前を過ぎた場合」をご確認ください。
第1章 特定建設業の更新では財産的基礎が改めて確認される
特定建設業許可は、許可を取得した時点だけでなく、更新時にも財産的基礎の要件を満たしている必要があります。
一般建設業許可では、更新時の財産的基礎について、許可取得後5年間継続して営業した実績によって確認できる場合があります。
しかし、特定建設業許可では、過去5年間許可を維持してきたという実績だけで更新できるわけではありません。
更新申請時に、現在の財務状況が特定建設業の基準を満たしているか改めて確認されます。
特定建設業で財産的基礎が厳しく定められているのは、元請として大規模な工事を受注し、多額の下請契約を締結することが想定されているためです。
下請業者を保護し、工事を安定して完成させるため、一般建設業よりも高い財務基準が求められています。
更新時に確認されるのは、次の4つの要件です。
・欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
・流動比率が75%以上であること
・資本金が2,000万円以上であること
・自己資本が4,000万円以上であること
特定建設業許可を更新するためには、この4つをすべて満たさなければなりません。
例えば、資本金が2,000万円以上、自己資本が4,000万円以上であっても、流動比率が75%を下回っていれば、そのまま特定建設業を更新することはできません。
反対に、流動比率や欠損の額に問題がなくても、自己資本が4,000万円を下回っていれば要件を満たしません。
特定建設業の財産的基礎は、会社全体として基準を満たす必要があります。
許可を受けている業種ごとに別々に判定するものではなく、法人全体の財務内容をもとに確認されます。
また、複数の営業所で特定建設業許可を受けている場合でも、営業所ごとに財産要件を判定するわけではありません。
更新準備では、まず直近の決算書と決算変更届の財務諸表を確認し、4つの要件を満たしているかを判定します。
特定建設業許可の更新直前になって財産要件を満たしていないことが判明すると、増資や許可区分の見直しなどを短期間で検討しなければならなくなります。
そのため、特定建設業者は、許可満了日だけでなく、毎期の決算が確定した時点で財産的基礎を確認しておく必要があります。
一般建設業と特定建設業で異なる財産的基礎の考え方や、500万円の資金調達能力については、「建設業許可の財産的要件とは?500万円の資金調達能力と純資産要件を行政書士が解説」で詳しく解説しています。
第2章 特定建設業に必要な4つの財産要件
特定建設業許可を更新するためには、次の4つの財産要件をすべて満たす必要があります。
・欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
・流動比率が75%以上であること
・資本金が2,000万円以上であること
・自己資本が4,000万円以上であること
いずれか一つだけを満たせばよいのではなく、4項目すべてを満たしていることが必要です。
1.欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
欠損比率は、会社の累積した損失が資本金に対してどの程度あるかを確認する基準です。
法人の場合は、繰越利益剰余金がマイナスとなっている場合に、資本剰余金、利益準備金、その他利益剰余金などの内部留保を差し引いて計算します。
計算式は、次のとおりです。
(繰越利益剰余金のマイナス額 - 内部留保額)÷資本金 ×100
この割合が20%以下であれば、欠損比率の要件を満たします。
なお、繰越利益剰余金がプラスである場合や、内部留保の額が繰越利益剰余金のマイナス額を上回っている場合は、欠損比率を計算するまでもなく要件を満たします。
単年度が赤字であっても、直ちに欠損比率の要件を満たさなくなるわけではありません。
過去からの利益剰余金や資本剰余金が残っていれば、欠損として扱われない場合があります。
2.流動比率が75%以上であること
流動比率は、短期間で支払う必要がある負債に対して、現金化しやすい資産をどの程度保有しているかを確認する基準です。
計算式は、次のとおりです。
流動資産合計÷流動負債合計×100
この割合が75%以上であれば、流動比率の要件を満たします。
例えば、流動資産が7,500万円、流動負債が1億円の場合、流動比率は75%です。
一方、流動資産が6,000万円、流動負債が1億円の場合は60%となるため、要件を満たしません。
流動資産には、現金預金、受取手形、完成工事未収入金などが含まれます。
流動負債には、支払手形、工事未払金、短期借入金などが含まれます。
売上規模が大きい会社であっても、短期借入金や工事未払金が増加すると、流動比率が75%を下回ることがあります。
3.資本金が2,000万円以上であること
法人の場合は、履歴事項全部証明書に記載された資本金が2,000万円以上であることが必要です。
資本金が2,000万円未満の場合は、自己資本が4,000万円以上あったとしても、特定建設業の財産要件を満たしません。
資本金と自己資本は異なるため、分けて確認します。
資本金が不足している場合は、更新申請前に増資を行い、変更登記を完了させる方法が考えられます。
ただし、増資登記だけで他の財産要件も満たせるとは限りません。
流動比率、欠損比率、自己資本についても別途確認が必要です。
4.自己資本が4,000万円以上であること
法人の場合、自己資本は、直前の確定した貸借対照表における純資産合計の額で判断します。
この純資産合計が4,000万円以上であることが必要です。
資本金が2,000万円以上であっても、累積赤字などによって純資産合計が4,000万円を下回っている場合は、自己資本の要件を満たしません。
反対に、純資産合計が4,000万円以上あっても、登記上の資本金が2,000万円未満であれば、資本金の要件を満たしません。
特定建設業の財産要件では、決算書の一部の数字だけを確認するのではなく、資本金、純資産、流動資産、流動負債、利益剰余金などを総合して判定します。
特に注意したいのは、前回の更新時には4つの要件を満たしていたものの、その後の赤字決算や借入金の増加によって、今回の更新時には要件を満たさなくなっているケースです。
特定建設業者は、更新時期になってから確認するのではなく、毎期の決算が確定した時点で4つの数値を確認しておく必要があります。
第3章 更新時はどの決算で判定されるのか
特定建設業の財産的基礎は、原則として申請時直前の確定した貸借対照表をもとに判定します。
ここでいう確定した貸借対照表とは、法人の場合、定時株主総会の承認を受けた直近事業年度の貸借対照表です。
例えば、3月決算の会社が令和8年7月に更新申請を行う場合、令和8年3月期の決算が定時株主総会で承認されていれば、その決算内容をもとに財産要件を確認します。
まだ令和8年3月期の決算が確定していない場合は、原則として、その前の確定した決算が判定の基準になります。
確認するのは、直近の貸借対照表に記載された次の数値です。
・資本金
・純資産合計
・流動資産合計
・流動負債合計
・繰越利益剰余金や内部留保に関する金額
これらの数値を使い、欠損比率、流動比率、資本金、自己資本の4要件を判定します。
更新申請前に決算変更届を提出している場合は、決算変更届に添付した建設業財務諸表と、更新申請で確認する財務内容が一致していることも必要です。
税務申告用の決算書と建設業財務諸表では勘定科目の表示が異なることがありますが、元となる決算内容は同じでなければなりません。
特定建設業の財産要件は、直前の確定した決算内容をもとに判定します。
決算変更届の提出期限や財務諸表の作成については、「建設業許可の決算変更届(決算報告書)とは?提出期限・必要書類・出さないリスクを解説」で詳しく解説しています。
第4章 財産要件を満たしていない場合は一般建設業へ切り替える
特定建設業許可の更新では、申請時直前の確定した決算内容をもとに財産的基礎を確認します。
そのため、更新申請に使用する直前決算で、自己資本、流動比率、欠損比率のいずれかが基準を満たしていない場合、そのまま特定建設業許可を更新することはできません。
更新申請の直前に預金残高を増やしたり、短期借入金を返済したりしても、すでに確定した貸借対照表の数値が変わるわけではありません。
また、一般建設業許可のように、残高証明書によって財産的基礎を補うこともできません。
特定建設業の財産要件を満たしていない場合は、特定建設業の更新を諦め、一般建設業許可へ切り替える手続きを検討します。
この場合、単なる更新申請ではなく、一般建設業について般・特新規申請を行います。
般・特新規とは、現在受けている特定建設業許可から、同じ業種について一般建設業許可へ許可区分を変更する手続きです。
例えば、特定建設業許可を受けている建築工事業について財産要件を満たせない場合は、建築工事業の一般建設業許可を般・特新規で申請します。
一般建設業許可を取得すると、従前の特定建設業許可とは許可区分が変わります。
そのため、発注者から直接請け負った工事について、下請業者へ発注できる金額の範囲も変わります。
一般建設業へ切り替える前には、現在施工中の工事や今後の受注予定を確認し、特定建設業許可が必要となる下請契約を予定していないかを確認しなければなりません。
また、般・特新規申請は、特定建設業許可の更新申請とは異なる手続きです。
必要書類や申請手数料も更新申請とは異なるため、特定建設業の許可満了日までに一般建設業許可へ切り替えられるよう、早めに準備を進めます。
特定建設業者は、更新申請の直前になって初めて財産要件を確認するのではなく、直前決算が確定した時点で4つの基準を判定しておく必要があります。
直前決算で財産要件を満たしていない場合は、特定建設業の更新申請を前提に準備するのではなく、一般建設業への般・特新規申請へ方針を切り替えます。
財産要件の確認が遅れ、すでに許可満了日の30日前を過ぎている場合は、残りの期間で般・特新規申請の準備が可能かを早急に判断する必要があります。
東京都で30日前を過ぎた場合の取扱いについては、「【東京都】建設業許可の更新申請が30日前を過ぎた場合|まだ間に合う?」をご確認ください。
第5章 特定建設業の更新前に財産要件を確認しておく
特定建設業許可の更新では、直前の確定した決算内容によって財産的基礎が判定されます。
そのため、更新期限が近づいてから確認するのではなく、直前決算が確定した時点で、次の4項目を確認しておく必要があります。
・欠損の額が資本金の20%を超えていないか
・流動比率が75%以上あるか
・資本金が2,000万円以上あるか
・自己資本が4,000万円以上あるか
前回の更新時に要件を満たしていても、その後の赤字決算や借入金の増加によって、今回の更新時には基準を下回っていることがあります。
直前決算で財産要件を満たしていない場合は、特定建設業許可をそのまま更新することはできません。
その場合は、一般建設業への般・特新規申請を検討し、現在の工事内容や今後の受注予定に支障がないかを確認します。
特定建設業許可を維持する会社は、許可満了日だけでなく、毎期の決算内容も継続して管理する必要があります。
決算確定後に財産要件を確認しておけば、特定建設業を更新できるか、一般建設業へ切り替える必要があるかを、許可期限に余裕がある段階で判断できます。
当事務所では、東京都の特定建設業許可更新に伴う財産要件の確認や、要件を満たしていない場合の般・特新規申請にも対応しています。
特定建設業の更新期限が近づいている場合は、直前決算の財務諸表を確認したうえで、早めに申請方針を整理します。









