東京都で消防施設工事業の建設業許可を取得したい会社様から、次のようなご相談をいただくことがあります。
消防設備工事の請負金額が500万円を超えるようになってきた。
元請会社から、消防施設工事業の建設業許可を求められた。
消防設備士の資格はあるが、建設業許可も必要なのか分からない。
消防施設工事業は、火災警報設備、消火設備、避難設備など、消防用設備に関する工事を行う業種です。
具体的には、自動火災報知設備、非常警報設備、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、避難器具などの設置工事が関係します。
ただし、消防設備士の資格を持っていることと、消防施設工事業の建設業許可が不要であることは同じではありません。
1件の請負金額が500万円以上となる消防施設工事を請け負う場合には、原則として、消防施設工事業の建設業許可が必要になります。
また、消防施設工事業は、電気工事業、管工事業、電気通信工事業などとの区分も問題になりやすい業種です。
この記事では、東京都で消防施設工事業の建設業許可を取得するために必要な要件、消防設備士との違い、500万円基準、営業所技術者等、他業種との違い、許可取得後の手続きまで、行政書士が実務上のポイントを整理して解説します。
第1章 消防施設工事業とは?東京都で建設業許可が必要となる工事
消防施設工事業とは、火災警報設備、消火設備、避難設備など、消防用設備に関する工事を行う建設業の業種です。
建設業法上は、火災警報設備、消火設備、避難設備、消火活動に必要な設備を設置し、又は工作物に取り付ける工事が消防施設工事業にあたります。
代表的な工事としては、次のようなものがあります。
・屋内消火栓設備工事
・スプリンクラー設備工事
・水噴霧消火設備工事
・泡消火設備工事
・不燃性ガス消火設備工事
・粉末消火設備工事
・屋外消火栓設備工事
・動力消防ポンプ設備工事
・火災報知設備工事
・漏電火災警報器設置工事
・非常警報設備工事
・金属製避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋、排煙設備の設置工事
消防施設工事業は、建物の安全性や消防法上の設備に関係するため、ビル、マンション、店舗、工場、倉庫、病院、福祉施設、学校など、さまざまな建物で必要になります。
東京都内では、テナント入居工事、店舗改装工事、ビル改修工事、工場や倉庫の設備工事などに伴い、消防用設備の設置工事が発生することがあります。
このとき、1件の請負金額が500万円以上となる消防施設工事を請け負う場合には、原則として、消防施設工事業の建設業許可が必要になります。
ここで注意したいのは、消防設備に関係する業務がすべて消防施設工事業にあたるわけではないという点です。
たとえば、消防設備の点検、保守、報告書作成などは、建設業許可の対象となる「工事」とは別に整理します。
一方で、自動火災報知設備、スプリンクラー設備、消火設備、避難設備などを新たに設置する工事や、既存設備を改修・交換する工事については、消防施設工事業の建設業許可が問題になることがあります。
また、消防施設工事業は、電気工事業、管工事業、電気通信工事業などとの区分も問題になりやすい業種です。
消防用設備には、配線、配管、制御、警報、通信などの要素が含まれることがあるため、工事名だけで判断するのではなく、実際にどの設備を設置する工事なのかを確認することが重要です。
東京都で消防施設工事業の建設業許可を検討する場合には、まず自社が請け負っている工事が、消防用設備の設置工事なのか、点検・保守業務なのか、他業種の工事なのかを整理する必要があります。
第2章 消防設備士と消防施設工事業の建設業許可の違い
消防施設工事業でよくある誤解が、消防設備士の資格があれば、建設業許可は不要だというものです。
しかし、消防設備士の資格と、消防施設工事業の建設業許可は、別の制度です。
消防設備士は、消防用設備等の工事や整備に関係する資格です。
一方で、消防施設工事業の建設業許可は、消防施設工事を請け負うための建設業法上の許可です。
つまり、消防設備士の資格を持っていることと、消防施設工事業の建設業許可が不要であることは同じではありません。
たとえば、自動火災報知設備やスプリンクラー設備などの消防施設工事を請け負う場合、1件の請負金額が500万円以上になると、原則として消防施設工事業の建設業許可が必要になります。
この場合、消防設備士の資格を持っている人が社内にいても、それだけで建設業許可が不要になるわけではありません。
また、消防設備士の資格は、消防施設工事業の営業所技術者等の要件を確認するうえで重要になります。
ただし、資格を持っているだけでは足りず、その人が申請会社の営業所に常勤していることも必要です。
そのため、消防設備士の資格者が外注先や協力会社にいるだけでは、原則として自社の営業所技術者等にはなれません。
また、消防設備に関する業務でも、点検や保守、法定点検の報告書作成などは、建設業許可の対象となる工事とは別に整理します。
建設業許可が問題になるのは、消防用設備の設置工事、改修工事、交換工事などを請け負う場合です。
東京都で消防施設工事業の建設業許可を検討する場合には、まず次の点を整理することが重要です。
- 消防設備士の資格者がいるか
- その資格者が会社に常勤しているか
- 請け負う業務が点検・保守なのか、工事なのか
- 1件の請負金額が500万円以上になる可能性があるか
- 消防施設工事業として整理できる工事内容か
消防設備士の資格は重要ですが、それだけで建設業許可の要否が決まるわけではありません。
消防設備士の資格、工事内容、請負金額、営業所技術者等の常勤性を分けて確認することが大切です。
第3章 東京都で建設業許可が必要となる500万円基準
消防施設工事業で建設業許可が必要になるかどうかは、原則として、1件の請負金額で判断します。
消防施設工事業は専門工事です。
そのため、1件の請負代金が500万円以上となる消防施設工事を請け負う場合には、原則として、消防施設工事業の建設業許可が必要になります。
ここでいう500万円は、消費税込みの金額です。
税抜金額ではないため、税抜では500万円未満でも、税込で500万円以上になる場合には注意が必要です。
たとえば、消防設備工事の本体工事費が480万円であっても、消費税を含めて500万円以上になる場合には、建設業許可が必要になる可能性があります。
また、請負金額を判断するときは、消防用設備の設置工事だけでなく、その工事に必要な材料費、機器代、取付費、調整費などを含めて考える必要があります。
自動火災報知設備、非常警報設備、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備などでは、機器代や材料費を含めると500万円を超えることがあります。
また、1つの工事を複数の契約に分けている場合も注意が必要です。
正当な理由なく契約を分割している場合には、各契約の金額を合計して判断されることがあります。
同じ現場、同じ発注者、同じ目的の消防施設工事であれば、契約書や請求書を分けていても、全体の工事として判断される可能性があります。
建設業許可が必要かどうかは、元請か下請かで決まるものではありません。
下請として消防施設工事を請け負う場合でも、1件の請負金額が500万円以上となる場合には、原則として、消防施設工事業の建設業許可が必要です。
一方で、消防設備の点検、保守、報告書作成などは、建設業許可の対象となる工事とは別に整理します。
そのため、500万円基準を考える場合にも、自社の業務が消防施設工事にあたるのか、点検・保守業務なのかを分けて確認することが重要です。
東京都で消防施設工事業を営む場合には、工事内容と請負金額を確認し、建設業許可が必要になるタイミングを早めに把握しておくことが大切です。
第4章 消防施設工事業と他業種との違い
消防施設工事業は、消防用設備に関する工事を行う業種です。
ただし、消防用設備の工事には、配線、配管、通信、制御などの要素が含まれることがあります。
そのため、電気工事業、管工事業、電気通信工事業などとの区分が問題になることがあります。
工事名に「消防設備工事」と書かれていても、実際の工事内容によっては、他の業種との関係を確認する必要があります。
(1)電気工事業との違い
電気工事業は、発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備などの電気工作物に関する工事を行う業種です。
消防施設工事業でも、自動火災報知設備や非常警報設備など、電気配線を伴う工事があります。
ただし、工事の目的が消防用設備の設置である場合には、消防施設工事業として整理することがあります。
一方で、建物全体の電気配線工事、照明設備工事、受変電設備工事などは、電気工事業との関係で整理します。
(2)管工事業との違い
管工事業は、冷暖房設備、空調設備、給排水設備、衛生設備、ガス管配管などの配管工事を行う業種です。
消防施設工事業でも、屋内消火栓設備やスプリンクラー設備など、配管を伴う工事があります。
ただし、消防用設備としての消火設備を設置する工事であれば、消防施設工事業として整理することがあります。
一方で、給排水設備、空調配管、衛生設備などは、管工事業との関係で整理します。
配管を行うから必ず管工事業になるわけではなく、何のための配管なのかを確認することが重要です。
(3)電気通信工事業との違い
電気通信工事業は、有線電気通信設備、無線電気通信設備、放送機械設備、情報制御設備などに関する工事を行う業種です。
消防施設工事業でも、警報、通報、監視、制御に関する設備が関係することがあります。
ただし、自動火災報知設備や非常警報設備など、消防用設備として設置する工事であれば、消防施設工事業として整理することがあります。
一方で、LAN工事、電話設備工事、監視カメラ設備工事、通信設備工事などは、電気通信工事業との関係で確認します。
(4)機械器具設置工事業との違い
機械器具設置工事業は、機械器具の組立て等により工作物を建設し、又は工作物に機械器具を取り付ける工事を行う業種です。
消防施設工事業でも、消防用設備や装置を建物に取り付ける工事があります。
ただし、消防用設備として法律上整理される設備の設置工事であれば、消防施設工事業として考えることがあります。
一方で、消防用設備ではない機械装置やプラント設備などの設置工事は、機械器具設置工事業との関係で整理します。
(5)点検・保守との違い
消防設備に関する業務でも、点検、保守、報告書作成などは、建設業許可の対象となる工事とは別に考えます。
建設業許可が問題になるのは、消防用設備を設置する工事、改修する工事、交換する工事などを請け負う場合です。
そのため、消防設備会社であっても、点検・保守が中心なのか、工事を請け負っているのかを分けて確認する必要があります。
(6)業種区分を確認するポイント
消防施設工事業に該当するかどうかを確認する場合には、次の点を整理します。
・設置する設備が消防用設備か
・点検や保守ではなく、工事を請け負っているか
・配線工事、配管工事、通信工事だけを単独で請け負っていないか
・電気工事業、管工事業、電気通信工事業との関係はどうか
・請求書や契約書の工事名が具体的に記載されているか
東京都で消防施設工事業の建設業許可を申請する場合には、「消防設備工事」という名称だけで判断するのではなく、実際にどの設備を、どのように設置しているのかを整理することが大切です。
第5章 東京都で消防施設工事業の建設業許可を取得するための要件
東京都で消防施設工事業の建設業許可を取得するためには、建設業法で定められた要件を満たす必要があります。
主な要件は、次のとおりです。
・常勤役員等の要件
・営業所技術者等の要件
・財産的基礎の要件
・営業所の要件
・社会保険の加入
・欠格要件に該当しないこと
消防設備士の資格者がいるだけでは、建設業許可の要件をすべて満たすわけではありません。
常勤役員等、営業所技術者等、財産的基礎、営業所の実態などを、それぞれ確認する必要があります。
(1)常勤役員等の要件
法人で申請する場合には、取締役などの常勤役員の中に、建設業の経営業務について一定の経験を持つ人が必要です。
個人事業主の場合には、事業主本人などが対象になります。
一般的には、建設業に関して5年以上、経営業務の管理責任者としての経験がある場合に検討します。
ここでいう経験は、消防施設工事業に限られません。
電気工事業、管工事業、電気通信工事業、内装仕上工事業など、他の建設業での経営経験でも、要件を満たす可能性があります。
ただし、単に現場作業をしていた経験や、会社に勤務していた経験だけでは足りません。
取締役、個人事業主、支店長、営業所長など、建設業の経営業務に関わっていたことを確認できる資料が必要です。
東京都で申請する場合には、登記事項証明書、確定申告書、決算書、請求書、契約書などにより、経営経験の内容を確認します。
(2)営業所技術者等の要件
消防施設工事業では、営業所ごとに、消防施設工事業に対応する営業所技術者等を置く必要があります。
営業所技術者等は、以前は専任技術者と呼ばれていた要件です。
消防施設工事業の場合、消防設備士などの資格を持つ人が営業所技術者等の候補になります。
ただし、資格を持っているだけでは足りません。
その人が申請会社の営業所に常勤していることが必要です。
外注先、協力会社、非常勤の資格者は、原則として自社の営業所技術者等にはなれません。
消防施設工事業の営業所技術者等については、第6章で詳しく解説します。
(3)財産的基礎の要件
一般建設業許可を取得する場合には、財産的基礎の要件を満たす必要があります。
主に、自己資本が500万円以上あるか、500万円以上の資金調達能力があることを確認します。
直近の決算書で純資産が500万円以上ある場合には、財産的基礎を満たす可能性があります。
純資産が500万円未満の場合には、500万円以上の残高証明書などにより確認することがあります。
消防施設工事業では、消防用設備の機器代、材料費、外注費などが先に発生することもあります。
そのため、許可取得時だけでなく、許可取得後の資金繰りも意識しておくことが大切です。
(4)営業所の要件
建設業許可を取得するためには、建設業の営業所としての実態がある事務所が必要です。
営業所とは、請負契約の締結に関する実体的な行為を行う場所をいいます。
単なる登記上の本店、郵便物を受け取るだけの場所、倉庫、資材置場だけでは、原則として営業所とはいえません。
東京都で申請する場合には、営業所の外観、入口、郵便受け、看板、内部、机、電話、事務機器などの写真を提出します。
自宅兼事務所の場合には、居住部分と事務所部分が区別されているかも確認されます。
賃貸物件の場合には、建設業の営業所として使用できる契約内容になっているかも確認が必要です。
(5)社会保険の加入
建設業許可では、適切な社会保険に加入していることも確認されます。
法人の場合には、原則として健康保険、厚生年金保険への加入が必要です。
従業員を雇用している場合には、雇用保険の加入も確認します。
消防設備工事会社では、現場作業員、技術者、事務職員などを雇用していることがあります。
会社の実態に応じて、必要な社会保険に加入しているかを整理しておくことが大切です。
建設業許可と社会保険の加入要件|未加入だと新規・更新はできる?東京都対応で解説
(6)欠格要件に該当しないこと
建設業許可を受けるためには、申請者や役員等が欠格要件に該当しないことも必要です。
過去に一定の処分を受けている場合、一定の刑罰を受けている場合、暴力団員等に該当する場合などは、許可を受けられないことがあります。
法人の場合には、会社だけでなく、役員等についても確認されます。
消防施設工事業の建設業許可を取得するには、消防設備士の資格者の有無だけでなく、会社全体として建設業許可の要件を満たしているかを確認する必要があります。
第6章 消防施設工事業の営業所技術者等の要件
消防施設工事業の建設業許可を取得するには、営業所ごとに、消防施設工事業に対応する営業所技術者等を置く必要があります。
営業所技術者等は、以前は専任技術者と呼ばれていた要件です。
消防施設工事業では、営業所技術者等の要件を確認するうえで、消防設備士の資格が重要になります。
代表的な資格は、次のとおりです。
・甲種消防設備士
・乙種消防設備士
消防設備士には、甲種、乙種、類ごとの区分があります。
そのため、消防設備士の資格を持っていれば、どの消防施設工事にも当然に対応できる、というわけではありません。
自動火災報知設備、非常警報設備、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、避難器具など、取り扱う消防用設備の内容と、資格の種類・区分が対応しているかを確認する必要があります。
東京都で申請する場合には、資格者証の写しなどにより、資格の種類や区分を確認します。
また、資格を持っているだけでは足りません。
営業所技術者等は、申請会社の営業所に常勤している必要があります。
外注先、協力会社、別会社の役員、非常勤の資格者などは、原則として自社の営業所技術者等にはなれません。
法人の役員が営業所技術者等を兼ねる場合には、役員報酬の有無や常勤実態を確認することがあります。
従業員が営業所技術者等になる場合には、資格確認書、標準報酬決定通知書、住民税特別徴収税額通知書、雇用保険関係資料などにより、常勤性を確認することがあります。
他社で常勤している人、他社の営業所技術者等になっている人、遠方に居住していて通勤実態を説明しにくい人は、営業所技術者等として認められない可能性があります。
消防施設工事業で特に注意したいのは、無資格者の実務経験では、原則として営業所技術者等の要件を満たせないという点です。
他の業種では、10年以上の実務経験により営業所技術者等の要件を満たす方法があります。
しかし、消防施設工事業については、消防法との関係があるため、無資格者が消防施設工事の実務経験を積んでいたとしても、原則として営業所技術者等の要件としては認められません。
そのため、消防施設工事業の建設業許可を検討する場合には、まず消防設備士の資格者が社内にいるか、その資格者が常勤しているかを確認することが重要です。
消防設備会社に勤務していた経験がある、消防設備の点検や保守を行っていた、消防設備工事の現場に関わっていた、というだけでは足りません。
営業所技術者等として申請できる資格者がいるかどうかを、最初に確認する必要があります。
東京都で消防施設工事業の建設業許可を申請する場合には、消防設備士の資格の種類、資格者の常勤性、取り扱う工事内容を整理しておくことが大切です。
第7章 東京都で消防施設工事業の建設業許可申請で多い補正事例
消防施設工事業の建設業許可申請では、消防設備士の資格、資格者の常勤性、常勤役員等の経験資料、営業所の実態などを確認されます。
特に、消防施設工事業は「消防設備士の資格」と「建設業許可の要件」を混同しやすい業種です。
また、常勤役員等の経験資料として提出する請求書や契約書についても、消防施設工事業そのものに限らず、建設工事の請負実績として説明できるかを確認する必要があります。
(1)消防設備士免状の顔写真の有効期限が切れているケース
消防施設工事業では、営業所技術者等の要件を確認するために、消防設備士免状の写しを提出します。
甲種消防設備士または乙種消防設備士であれば、消防施設工事業の営業所技術者等の資格要件として問題になることは多くありません。
ただし、消防設備士免状には顔写真の有効期限があります。
免状そのものを持っていても、顔写真の有効期限が切れている場合には、申請前に更新手続きが必要になることがあります。
消防施設工事業の建設業許可を検討する場合には、資格の有無だけでなく、免状の記載内容や顔写真の有効期限も確認しておくことが大切です。
(2)資格者の常勤性が確認されるケース
消防設備士の資格を持つ人がいても、その人が申請会社の営業所に常勤していなければ、営業所技術者等にはなれません。
外注先、協力会社、別会社の役員、非常勤の資格者などは、原則として自社の営業所技術者等にはなれません。
東京都では、資格確認書、標準報酬決定通知書、住民税特別徴収税額通知書、雇用保険関係資料などにより、常勤性を確認することがあります。
法人の役員が営業所技術者等を兼ねる場合には、役員報酬の有無や常勤実態も確認されることがあります。
(3)無資格者の実務経験で営業所技術者等になれると誤解しているケース
消防施設工事業では、無資格者の実務経験により営業所技術者等の要件を満たすことは、原則として認められません。
他の業種では、10年以上の実務経験で営業所技術者等になれる場合があります。
しかし、消防施設工事業では同じようには考えられません。
消防設備会社に長年勤務していた、消防設備工事の現場に関わっていた、消防設備の点検や保守を担当していた、というだけでは足りません。
消防施設工事業の建設業許可を申請する場合には、まず営業所技術者等として申請できる消防設備士等の資格者がいるかを確認する必要があります。
(4)常勤役員等の経験資料が建設工事として分かりにくいケース
常勤役員等の経験を証明する場合には、建設業に関する経営業務の経験があることを資料で説明します。
この経験は、消防施設工事業に限られるわけではありません。
電気工事業、管工事業、電気通信工事業、内装仕上工事業など、他の建設業に関する経営業務の経験でも、常勤役員等の要件を満たす可能性があります。
そのため、常勤役員等の経験資料として提出する請求書や契約書が、必ずしも「消防施設工事」と記載されている必要はありません。
ただし、請求書や契約書の内容が、建設工事の請負実績として確認できることは重要です。
たとえば、次のような記載は注意が必要です。
・点検業務
・保守業務
・メンテナンス
・報告書作成
・業務委託
・管理業務
・作業一式
このような記載が中心の場合には、建設工事の経営業務経験として説明できるかを確認する必要があります。
注文書、内訳書、工事写真、工事台帳などにより、建設工事に関する請負実績であることを補足できるようにしておくと安心です。
(5)常勤役員等の経験期間と資料が一致しないケース
常勤役員等の経験を証明する場合には、必要な経験年数を満たしていることを資料で確認します。
法人の役員としての経験であれば、登記事項証明書で役員期間を確認します。
個人事業主としての経験であれば、確定申告書などで事業実態を確認します。
ただし、役員期間や事業期間があっても、その期間中に建設業を営んでいたことを説明できなければ、確認が難しくなることがあります。
そのため、請求書、契約書、注文書、決算書、確定申告書などにより、経験期間と建設業の実態がつながるように整理しておくことが重要です。
(6)営業所の実態が確認しにくいケース
消防施設工事業の建設業許可を取得するには、建設業の営業所としての実態が必要です。
単なる登記上の本店、郵便物を受け取るだけの場所、倉庫、資材置場だけでは、原則として営業所とはいえません。
東京都では、営業所の外観、入口、郵便受け、看板、内部、机、電話、事務機器などの写真を提出します。
自宅兼事務所の場合には、居住部分と事務所部分が区別されているかも確認されます。
賃貸物件の場合には、建設業の営業所として使用できる契約内容になっているかも確認が必要です。
(7)申請前に確認しておきたいポイント
消防施設工事業の建設業許可を申請する前には、次の点を確認しておくと安心です。
・消防設備士等の資格者がいるか
・消防設備士免状の顔写真の有効期限が切れていないか
・資格者が申請会社に常勤しているか
・無資格者の実務経験で営業所技術者等を考えていないか
・常勤役員等の経験を証明する資料があるか
・常勤役員等の経験資料が建設工事の請負実績として説明できるか
・営業所の実態を写真や賃貸借契約書などで説明できるか
東京都で消防施設工事業の建設業許可を申請する場合には、消防設備士の資格、資格者の常勤性、常勤役員等の経験資料を中心に整理しておくことが重要です。
第8章 消防施設工事業の建設業許可取得後に必要な手続き
消防施設工事業の建設業許可は、取得して終わりではありません。
許可を維持するためには、決算変更届、変更届、更新申請などを期限内に行う必要があります。
(1)決算変更届
建設業許可業者は、毎事業年度終了後4か月以内に、決算変更届を提出する必要があります。
決算変更届では、工事経歴書、直前3年の各事業年度における工事施工金額、財務諸表、納税証明書などを提出します。
消防施設工事業の場合には、工事経歴書に記載する工事内容も重要です。
消防用設備の設置工事、改修工事、交換工事など、消防施設工事業として整理できる工事を記載します。
一方で、消防設備の点検、保守、報告書作成などは、建設工事とは別に整理する必要があります。
決算変更届を提出していないと、建設業許可の更新申請や業種追加申請ができないことがあります。
そのため、毎年の決算後に忘れずに提出することが重要です。
建設業許可の決算変更届(決算報告書)とは?提出期限・必要書類・出さないリスクを解説
(2)建設業許可の更新
建設業許可の有効期間は5年間です。
東京都知事許可の場合、更新申請は、原則として有効期間満了日の30日前までに行う必要があります。
更新申請では、常勤役員等、営業所技術者等、営業所、社会保険の加入状況などを確認します。
消防施設工事業では、営業所技術者等となっている消防設備士が退職していないか、常勤性に問題がないかも重要です。
消防設備士が退職したまま後任者を置いていない場合には、許可の維持に影響することがあります。
建設業許可の更新申請|必要書類・費用・期限と失敗しないポイント
(3)変更届
建設業許可を取得した後、会社の内容に変更があった場合には、変更届が必要です。
主な変更事項としては、次のようなものがあります。
・役員の変更
・商号の変更
・本店所在地の変更
・営業所所在地の変更
・常勤役員等の変更
・営業所技術者等の変更
・資本金の変更
・健康保険、厚生年金保険、雇用保険の加入状況の変更
特に、常勤役員等や営業所技術者等の変更は、建設業許可の要件に直結します。
消防施設工事業の場合、営業所技術者等には消防設備士等の資格者が必要になるため、退職や異動がある場合には早めに確認が必要です。
(4)業種追加や般・特新規
消防施設工事業の許可を取得した後、事業内容が広がる場合には、他業種の追加を検討することがあります。
消防設備工事会社では、次の業種が関係することがあります。
・電気工事業
・管工事業
・電気通信工事業
・内装仕上工事業
・機械器具設置工事業
たとえば、消防用設備の設置工事だけでなく、電気配線工事、配管工事、通信設備工事、内装改修工事などを請け負う場合には、他業種の建設業許可が必要になることがあります。
また、元請として大きな工事を請け負う場合には、一般建設業許可だけで足りるのか、特定建設業許可が必要になるのかを確認する必要があります。
(5)経営事項審査
公共工事の入札に参加したい場合には、建設業許可を取得しているだけでは足りません。
原則として、経営事項審査を受け、入札参加資格申請を行う必要があります。
消防施設工事業では、学校、庁舎、公共施設、公営住宅、病院、福祉施設などの消防用設備工事が公共工事と関係することがあります。
将来的に公共工事を目指す場合には、決算変更届、工事経歴書、完成工事高、技術者の資格、社会保険などを早めに整理しておくことが大切です。
消防施設工事業の建設業許可を取得した後も、毎年の決算変更届、変更届、更新申請を適切に行い、許可を維持していくことが重要です。
第9章 消防施設工事業と経営事項審査(経審)
消防施設工事業で公共工事の入札に参加したい場合には、建設業許可を取得するだけでは足りません。
原則として、経営事項審査を受け、その後、入札参加資格申請を行う必要があります。
経営事項審査は、公共工事を直接請け負う建設業者について、経営規模、経営状況、技術力、社会性等を数値化する制度です。
最終的には、総合評定値であるP点が算出されます。
消防施設工事業では、学校、庁舎、公共施設、公営住宅、病院、福祉施設などの消防用設備工事が、公共工事と関係することがあります。
そのため、将来的に公共工事を目指す場合には、許可取得後の早い段階から経審を意識しておくことが大切です。
経営事項審査(経審)とは?P点の仕組みと評価項目をわかりやすく解説
(1)経審で評価される主な項目
経審では、主に次の項目が評価されます。
・完成工事高
・自己資本額や利益額などの経営規模
・経営状況分析
・技術職員数
・社会保険の加入状況
・建設業退職金共済制度
・退職一時金制度や企業年金制度
・法定外労災
・建設キャリアアップシステム
・CPD
・ISO
・防災協定
消防施設工事業で経審を受ける場合には、消防施設工事業の完成工事高、技術者の資格、社会性等の項目を整理しておく必要があります。
(2)消防施設工事業と完成工事高
経審では、業種ごとの完成工事高が重要になります。
消防施設工事業で経審を受ける場合には、消防施設工事業として整理できる工事を、決算変更届の工事経歴書や完成工事高に適切に反映しておく必要があります。
消防用設備の設置工事、改修工事、交換工事などは、消防施設工事業として整理することがあります。
一方で、消防設備の点検、保守、報告書作成などは、建設工事とは別に整理する必要があります。
経審を見据える場合には、毎年の決算変更届の段階から、工事内容と業種区分を意識しておくことが重要です。
(3)消防施設工事業と技術力評価
経審では、技術職員数も評価項目になります。
消防施設工事業では、消防設備士などの資格者が重要になります。
ただし、建設業許可の営業所技術者等として使える資格者と、経審で技術職員として評価される資格者は、確認する場面が異なります。
そのため、公共工事を目指す場合には、許可要件を満たすだけでなく、経審上どの技術者をどの業種で評価できるかを確認しておく必要があります。
また、技術者が退職した場合には、許可の維持だけでなく、経審の点数にも影響することがあります。
(4)消防施設工事業と社会性等
経審では、社会性等の項目も評価されます。
社会保険の加入状況、建設業退職金共済制度、法定外労災、CPD、建設キャリアアップシステム、ISO、防災協定などが関係します。
消防施設工事業では、現場作業を行う技術者や作業員を雇用している会社もあります。
そのため、社会保険や労務管理を整えておくことは、許可の維持だけでなく、経審上も重要です。
公共工事を継続的に受注したい場合には、資格者の確保だけでなく、会社全体の管理体制を整えていく必要があります。
(5)公共工事を目指す場合の準備
消防施設工事業で公共工事を目指す場合には、次のような準備が必要です。
・建設業許可を取得する
・毎年の決算変更届を提出する
・消防施設工事業の完成工事高を整理する
・技術者の資格を確認する
・経営状況分析を受ける
・経営事項審査を受ける
・入札参加資格申請を行う
・発注機関ごとの入札制度を確認する
公共工事は、許可を取った直後にすぐ参加できるものではありません。
決算変更届、経審、入札参加資格申請までを見据えて準備する必要があります。
消防施設工事業で公共工事を目指す場合には、許可取得後の手続き、工事経歴書の整理、技術者管理を早い段階から進めておくことが大切です。
まとめ
消防施設工事業は、自動火災報知設備、非常警報設備、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、避難器具など、消防用設備に関する工事を行う業種です。
東京都で1件の請負金額が500万円以上となる消防施設工事を請け負う場合には、原則として、消防施設工事業の建設業許可が必要になります。
消防施設工事業で特に注意したいのは、消防設備士の資格と建設業許可は別の制度だという点です。
消防設備士の資格を持っていることと、建設業許可が不要であることは同じではありません。
また、消防施設工事業の建設業許可を取得するには、営業所技術者等として申請できる消防設備士等の資格者が、申請会社の営業所に常勤している必要があります。
無資格者の実務経験により、消防施設工事業の営業所技術者等になることは、原則として認められません。
そのため、消防施設工事業の建設業許可を検討する場合には、まず次の点を確認することが重要です。
・消防設備士等の資格者がいるか
・消防設備士免状の顔写真の有効期限が切れていないか
・資格者が申請会社に常勤しているか
・常勤役員等の経験を証明できるか
・財産的基礎を満たしているか
・建設業の営業所としての実態があるか
・社会保険の加入状況に問題がないか
・1件500万円以上の消防施設工事を請け負う予定があるか
消防施設工事業は、電気工事業、管工事業、電気通信工事業などとの区分も問題になりやすい業種です。
工事名に「消防設備工事」と記載されていても、実際の内容が点検・保守なのか、消防用設備の設置工事なのか、他業種の工事なのかを整理する必要があります。
建設業許可を取得した後も、毎年の決算変更届、役員変更や営業所技術者等の変更届、5年ごとの更新申請などが必要です。
また、将来的に公共工事を目指す場合には、経営事項審査や入札参加資格申請も視野に入れて、工事経歴書や完成工事高を整理しておくことが大切です。
増村行政書士事務所では、東京都の建設業許可申請、更新申請、決算変更届、変更届、業種追加申請などを取り扱っています。
東京都で消防施設工事業の建設業許可を取得したい会社様は、消防設備士の資格、常勤性、工事内容、500万円基準を整理したうえで、早めに準備を進めることをおすすめします。









